研究成果を論文にまとめる際に、気が付かないうちに「研究不正」を犯している可能性があります。
今回は論文出版時における不正についてまとめたいと思います。
1.論文不正の種類
意図したものであれ意図しなかったものであれ、以下のようなことが論文不正として疑われないように注意を払うことが論文執筆時において重要です。
- 二重投稿・二重出版
- 剽窃
- データの捏造
- オーサーシップの諸問題
- 利益相反
これらを順に説明していきましょう。
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1.二重投稿・二重出版
同じ研究から複数の論文が作成されることはよくあることで、それ自体は何ら問題はありません。
しかし全く同じデータを同じような方法で解析し、表や図のレイアウトを変更したり、著者の並べ替えをしたり、明らかに同じ内容の論文が投稿されていれば、二重投稿・二重出版ということになります。
しかし、一部が酷似しているがその他の解析においては異なっており、全体としては主旨が異なるようであればそれは二重投稿とはみなされないでしょう。
例えば方法はどうしても共通してしまいますし、異なるサブセットでの解析を追加したり、フォロー期間が異なるデータに基づいた解析を行っているなどの場合が考えられます。
万一査読者や第三者から二重投稿の疑いをかけられた場合に、元の論文との差異を明確に説明できるようにしておくことが重要です。
2.剽窃
剽窃とは、すでに出版されている他人の著作から、部分的に文章,語句,筋,思想などを盗み,自作の中に自分のものとして用いることを指します。これは重大な論文不正の1つです。
これも程度の問題があります。明白な剽窃ととらえられるケースは、本文やデータの大部分をその出展を明かさずに、あたかも自らが制作したかのように使用しているような場合です。
短いフレーズのみの剽窃としては、当該言語を母語としない著者によって論文の考察やイントロダクションの中にある表現をそのまま使用してしまうような状況です。これも出展を明らかにせずに表現を使用してしまうような場合には剽窃ととられる可能性がありますので注意が必要になります。
剽窃を確認するようなソフトウェアを必ず通してから投稿を行うようにするとより安全かもしれません。
(学位論文などでは少なくともそのようなことが行われることが義務付けられているケースが多いです。)
3.データの捏造
内部告発や剽窃・盗用を契機にデータの捏造が疑われた研究が世間をにぎわせたことがありましたが、データの捏造は事実を歪めて真実から遠ざける行為ですので、厳慎むべきことです。
このようなことが生じないために、研究データを保管することが義務付けられました。研究データの原資料、解析プログラム、解析用データセットなどは論文発表を終えた後も必ず一定期間保管しておくことが求められています。
これは所属する機関などによってもかわりますので、どの程度データを保管しておく必要があるのか、必ず確認するようにしましょう。
4.オーサーシップ諸問題
論文の著者として満たすべき条件として、ICMJEでは次の項目が挙げられています。
- 研究の構想、デザイン、研究データの取得、解析、解釈のいずれかに実質的に貢献した。
- 論文を起草したか、または重要な知的内容について批評的な推敲を行った。
- 出版原稿の最終的な承認を行った。
- 研究に関するすべての部分に、正確性または公正性に関する疑義が適切に調査され、解決されることを保証し、研究のすべての側面に対して説明責任を負うことに同意した。
これらを満たさずに論文の権威付けなどの目的で著者リストに加えてしまうことも研究不正・論文不正の1つです。
ゴーストオーサーシップ、ギフトオーサーシップなどと呼ばれますが、このようなことが起こらないために、研究を開始する段階で著者の決め方などをきちんと話し合って決めておくことが重要です。
2.証拠書類の保管
こうした論文不正については、自覚がないままに犯してしまっている可能性がありますので、こういった不正を行っていないことを証明するための証拠を揃えておくことが大事です。
これは嫌疑をかけられたときの自己防衛のためだけでなく、研究不正そのものを防ぐ効果が期待できますので、ぜひ心がけておくとよいでしょう。
- オーサーシップを決めたミーティングの議事録を残しておく
- 剽窃チェックツールを使用したらその記録を保管しておく
- 研究用のデータを保管し、実験ノートや解析ログなどを保管する
このような工夫が大切です。また、剽窃にならないように表現方法が同じにならないようにしてほしい旨を具体的な箇所を指定して英文校正に提出する、といったことも重要です。表現方法がどうしても似てきてしまう場合がありますので、特に英語が母語でない場合には英文校正の力を借りるのも1つの手段かもしれません。
3.研究不正を起こさないために
このような研究不正を生じないためにも上記のような書類を保管することは大変有効です。
加えてどのような研究不正があるのかを知っておくことも大事です。そんな時にCOPEガイドラインが対応の参考になります。
トラブル予防のためにCOPEガイドラインを活用しましょう。
まとめ
意図せずに研究不正が疑われないためにも研究を行う際には不正を起こさないように積極的な対策を講じることが重要です。
胸を張って研究成果を発表するためにも上記のことを参考に透明性の高い研究を心がけましょう。