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2020 6月

そもそもなぜ論文を書くのか

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毎年膨大な数の研究が実施され、それに関連した論文が次々に出ています。しかし「論文を書く」という行為の目的はいったい何なのでしょうか?本項では、そもそもなぜ論文を書くのか、考えてみたいと思います。

 

論文を書く目的

研究者として、自分の研究成果を論文に残すということは、承認要求に対する目に見える答えという点で、研究者自身の本質的な欲求に近いものだと思います。
しかしなぜわざわざお金をかけて英文校正に出して、掲載料を払ったりしてまでして論文を書くのでしょうか?
エビデンスに基づく医療を提供するためにというのが最も大切な目的でしょう。
しかし、読まれてナンボ、という世界でもあるので、できるだけその分野の多くの人の目に触れるようなトップジャーナルに掲載されることを目標にするわけです。
そしていつしかそのことが目的に変わってしまうことがあります。ただ漠然と、

エビデンスに基づく医療のために

といわれてもどんなエビデンスを提供しうるのか、そこからまずは整理してみましょう。

 

  1. 新しい治療法の効果を検証する
  2. 疾患の発症や進行の要因となるものを明らかにする
  3. 新しい診断方法の精度を評価する
  4. 治療法のリスクとベネフィット(費用対効果など)を評価する

 

こういったところを原著論文では明らかにしていくのですが、非常に珍しい疾患、経過をたどった疾患、あるいは(たまたまかもしれないが)うまくいった症例などに関して、個別性の高い症例報告も重要なエビデンスを提供してくれます。
原著論文では大勢の患者さんのデータを使って一般化していく作業ではありますが、個々の患者さんを診ているときに得られた知見を一般化していくフェーズでもあります。
このようにして有益な情報を医療の現場に還元することができれば研究者冥利に尽きる、という話ですが、実際にはいろいろな邪なモチベーションが働くものです。

 

目的から手段に…

現場に還元できる知見を発表することは、なかなかできるものではない、という現実があります。

  1. High impact journalに掲載することが目的となる
  2. 結果の出そうなテーマに飛びついて研究を開始する
  3. 結果の重要性よりも論文数、業績を重視する

 

これらは明らかに悪いことではありません。現実には多くの研究施設で日常的になっていることも事実です。
しかし、上記の状態に陥っていることを自覚している場合と、無自覚でいるのとでは大きく異なると思われます。

 

原則としてすべて出版されるべき

このことの弊害として言われていることの一つとして、結果が未公表なランダム化比較試験が非常に多い、ということがあります。
一つの介入研究を実施するには計画段階から考えると「億」単位のお金が動きます。例えば新規薬剤の効果を示すための研究を行ったとき、その結果が芳しくない場合、推奨薬剤として世の中に認めてもらえないことになります。
そこでその結果を敢えて報告しない、というプラクティスが起こりえます。
そして臨床研究の90%を占める非介入研究においてはなおさらそういった傾向がありうるだろう、という状況は想像に難くはありません。これは出版バイアスと呼ばれます。
近年ではClinical trialを登録しておくシステムが普及し、そういったシステムに事前に登録したものでなければ介入研究の論文を受け付けないジャーナルが増えてきました。
しかしそれは主に介入研究や前向き観察研究にとどまり、研究全体をカバーするところまではいきません。また国によっても考え方が違うということもあり、全世界的に広まっているというわけでもありません。
近年わが国においても、ガイドラインを作成する際には、システマティックレビューを実施する、という学術団体が増えています。そのシステマティックレビューの方法論として、出版バイアスを疑えるような手法もありますが完全なものではありません。

つまりは研究者自身の良心にゆだねられる部分であるといえます。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?論文を書く目的について、深く考える機会がなかった方にとってはじっくりと考える良い機会になったのではないでしょうか。ともすれば我々研究者は本来の目的である、良質なエビデンスを医療に提供するということを忘れがちです。無自覚でそれを行うことはいつか目に見える形で我々人類がその被害を被るかもしれない、という広い視点で物事を考える必要があるのではないでしょうか。

“成功する”論文作成のワザ

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自分自身の研究成果を世の中に向けて発信する手段として、学術論文というのは非常に価値があります。学会発表では多くの場合は紙面の形で残るのはごく一部ですし、何よりも論文は査読のプロセスを経てきちんと「審査」を受けてから世の中に出ます。さらに、Pubmedなどに半永久的に残ることも論文にする利点です。しかし、1つの論文を作り上げるまでに非常に多くの苦労を経なければならず、なかなか重い腰が上がらないという人もいるでしょう。今回は、いかにして質の高い論文を数多く世の中に発信できるようになるかについて書かせていただきます。

論文を量産するコツ

質の高い論文を数多く世の中に発信する、とはいっても書かなければ始まりません。
研究を計画し、実施し、学会発表を経て最後は論文にするという流れを作り上げることが大切です。

論文を量産するコツとして

  • 「書くこと」に慣れる
  • 他の人に読んでもらう(=読んでくれる人を見つける)
  • 「論文作成のタイミング」を外さない

以上の3つを順に解説していきます。

 

「書くこと」に慣れる

一言で書くことに慣れろ、と言われても大体においてその一歩が踏み出せずにいることが多いと思います。どうしたら書き始められるでしょうか?

文章を完成させるときには、完璧主義ではじめないことがポイントです。 つまり、はじめから細部にこだわりすぎないことです。そして、大雑把でもいいのでできるだけ早く最後まで書き切ることが鍵です。

そして、1日に10分でいいので書きかけの論文に手を入れるようにします。作業は何でもよいのです。タイトルを考える、著者のリストを作る、参考文献リストを見直す、Tableのレイアウトを見直すなど、やれることはいくらでもあります。

10分のつもりではじめても、2~3回に1回くらいはもう少し踏み込んでやってみるか、と思えるものです。頭脳を使う度合いが最も大きいのはintroductionとdiscussionです。ここは少しまとまった時間を割けるようにするとよいでしょう。

materials and methods, resultsは計画段階あるいは解析をしているときに少しずつ書きためておくとよいでしょう。

このように、論文作成は、幾重にも塗り重ねるような方式で少しずつ完成度を高めていくように作っていくのがコツです。

 

他の人に読んでもらう

大学や研究所などではよき指導者に巡り会えれば、その人と何度も往復書簡を交わしてブラッシュアップをしていくことができます。

そういった恵まれた環境にいなくても近年ではSNSで研究のメンターを探したりすることができます。研究計画の立案から論文作成に至るステップを順番にコーチングしてもらうことができ、メンターとなった側も指導の経験を積めて研究業績を積むことができます。

そうしたメンターとの間で論文原稿を何度も往復しながら完成させていきます。

論文全体の論旨の整合性などを確認していきながら文章自体を洗練させていく、というこのプロセスからは、非常に多くの学びを得ることができます。

また、当然ながら最終的には英文校正に提出して言語を確認しますが、内容を曖昧にしたまま提出することのないように、しっかりと内容を吟味した上で提出しましょう。

 

論文をどのタイミングで書くのか

研究を計画し、実施し、学会で発表するところまでは行けても論文にするとなるとまた多大な労力を要します。

なかなか論文を書けない、という人の中には、学会で発表するところで満足してしまっている方も少なくはないのではないでしょうか?

ベストな論文作成時期というのは、学会の抄録を作るときです。

論文を作るのと学会発表するのは実は多くの部分で作業が重なります。つまりここで同時に片付けてしまうのが一番効率的なのです。

さらに、論文作成と学会準備を重ねることには以下のような利点があります。

  • 内容を深く理解した状態で学会を迎えることになり、自信を持って発表できる
  • 学会での想定問答や、実際の質疑応答がDiscussionを書く際の参考になる
  • 学会発表時のアイディアを他人に実行に移されても先んじられるリスクは低い
  • 学会でミスを指摘されても論文にする前であれば修正が容易である

そして最も重要な点として、学会発表を終えてから論文を書いていると、つい書き始めるのが億劫になって書かなくなってしまうことがある、というのも生産性を上げられない理由の1つになります。

 

まとめ

質の高い論文を量産するコツについて述べてきました。

まず全体を俯瞰するような概略的な論文原稿を作成し、徐々に完成度を高めていくように、そしてとにかく毎日少しずつ作業を進めること、またよき助言者に出合うことが鍵となります。

さらに、研究には終わりがありませんが、学会発表の準備とともに論文作成を並行して進めるようにすると生産性を上げることができます。

あなたの研究を世界に向けて発信するために、効率よく、論文を量産していってください。