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2020 12月

対象者を設定しよう!

967007_s人を対象とした研究(臨床研究)を実施する上で、どんな人を対象にして、どのくらいの人数規模で実施するか、ということは非常に切実です。また対象者の選び方によっては大きく偏りがでてしまうことがあります。研究の対象となる集団を適切に選び出し、適切な人数だけを偏りなく集めるためにはどうすればいいのでしょうか?今回はその解説を行います。

対象者が母集団の代表となるように設定する

ある研究を実施するとき、対象となる集団を想定しますが、そういった対象集団のことを「母集団」と言います。より正確に言えば、母集団とは、「条件を満たすすべての患者」ということになります。研究対象者はその母集団から「ランダムに」抽出した代表者である必要があります。現実の世界から限られた数の標本を集めることを「サンプリング」といい、そのような集団のことを「サンプル」と呼びます。よく誤解されるポイントですが、選び出された集団のことを母集団とは呼ばないことに注意しましょう。

ではどのように選んでくるのでしょうか?そこら辺にいる人を捕まえてくればよい、という条件のものから、ある特定の疾病、あるいは投薬を受けている患者であって、研究に適したタイミングである、という厳しい条件が必要な場合もあり、サンプリングの難易度はバラエティーに富んでいます。しかしここで注意したいのは、背景特性に偏りがあると、選択バイアスを生じうるため、比較の質を落としかねない、ということです。

母集団を適切に設定するために選択基準と除外基準をしっかり決める必要があります。これを元にして現実の世界では研究対象者を集めてきます。

偏りがないように集めるにはどうしたらよいでしょうか?一人の医療従事者の担当する患者さんだけよりも複数のほうがよいですし、病院全体の傾向をつかむのに1つの病棟だけよりも複数の病棟のほうがよいでしょう。また、より大規模な研究となってきた場合には単施設よりは多施設のほうが偏りは少ないとされます。このように施設を増やすことで、単純にサンプル数を増やすという事以上のメリットがあるのです。

必要十分な対象者を設定する

では、対象者の数はどのように決めるのでしょうか?それには2つの約束があります。

  1. 必要対象者を研究開始前に決める必要がある
  2. 必要対象者数は主要評価項目に対して求める必要がある

対象者数を研究開始前に決める必要性について

「サンプルサイズ設計」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?これは研究を始める前に必ず行う統計手法の1つで、必要な標本の数を見積もるために行います。

多ければ多いほどよいのか、というとそうではありません。数が多すぎることで統計学的な有意差が付きやすくなるのが一つ目の理由です。事前の仮説があって、その仮説を示すに必要十分な症例数というのは計算上求めることができます。詳しくは正書に譲りますが、そのサンプルサイズ設計に基づいて必要症例数を算出することを事前に行うことが求められるのです。また、もう一つの理由としては、コストがかかりすぎる、ということです。対象者1人増える毎に書かねばならぬ書類はそれだけ増えますし、検査や治療薬にもお金がかかります。なのでできる限り最小限で抑えたい、というのが偽らざる本音でもあるのです。

必要対象者数は主要評価項目に対して求めなければならない点について

臨床試験のエンドポイントというのは一次エンドポイントと二次エンドポイントとありますが、必ず一次エンドポイントに基づいて設計を行う必要があります。これは、例えばランダム化比較試験などを行うときにはそのエンドポイントに基づいてサンプル設計をし、ランダム化を行うからです。二次エンドポイントに基づいて計算としてしまうと、後出しじゃんけんになってしまうというのが問題です。また、特に介入研究においてはプライマリーエンドポイントのみが本来の正しい結果として解釈されます。つまりそれ以外のアウトカムを中心に論じるときにはすでにそれは介入研究の域を出てしまっているかも知れないのです。

まとめ

以上まとめますと、必要症例数は事前に十分な検討を行う必要があるということ、そして一次エンドポイントに基づいて症例数設計を行うということが最重要ポイントとなります。これは決まりきったお作法なので、きちんと従来からの方法を押さえておけばよいということになります。また、文章としては非常に明快であり、すでに出版されている数多くの論文にある記載から大きく外れることは少ないと思われますので、過去の論文を読み込んで記載の参考にされるとよいと思います。もちろん剽窃は問題です。英文校正に出す際にはそういった剽窃がないかについてご自身での確認や専用のソフトウェア、あるいは校正者に直接お願いされることをお勧めします。

 

目的に合った研究を組み立てる

1246029_l素晴らしい研究成果を挙げるためには研究目的を設定することが重要です。核となる研究目的をしっかりかためること、そして核となる研究目的に合う研究をどのように組み立てていけばよいのか、について解説したいと思います。

 

優れた研究目的を設定するために必要な要素

優れた研究目的を設定するためには、いかに優れた仮説を案出できるかにかかっています。そしてその仮説を構成する要素に分解する作業も必要です。このようにして目的を設定するための要素を揃えていきます。

 

仮説の設定

仮説がどのように生み出されるかといえば、日頃から疑問に思っていることやこれまでの知見から予想を立てることになります。

「答えがわかっているのなら調べる必要はないのではないか?」

そんな声が聞こえてくるかもしれませんが、誰かが証明したことがないことを事実として仮定して動いていることというのは実はたくさんあります。しかし本来はどんなに些細なことであっても直接的に答えが示されていない限りは証明する余地が残っています。

 

「わからないから調べるのではないですか?」

これもありがちな疑問です。確かにわからないから調べるわけですが、「結果を予想する」というのは実は重要なプロセスです。研究を行うのは、予想した結果が正しいかどうかだけでなく、その背景やメカニズムに対する考察の正しさも確かめることになります。

 

「予想したのと違っていたらどうするんですか?」

予想と違う結果であったということは立てた仮説が間違っていたことを意味するのかというと、そうとも限りません。どうして結果が予想と違っていたのかを考察することで違う可能性を検討するきっかけにもなります。事実そのような考察から新しい発見が生まれたことは珍しいことではありません。

 

評価項目の設定

一度仮説を思いついたら、何を最終的に評価するのか、具体化していく作業が必要になります。疑問を解決するためのフィールドとして、医学研究は基礎研究と臨床研究に分かれますが、そのどちらのフィールドを用いて仮説を証明するのかをまずは決めることになります。

基礎研究であれ臨床研究であれ、まずは「何かの条件Aに対して結果Bが導かれる」という命題の形に落とし込みます。A⇒Bに対する因果関係を示すことを意識した場合に、B⇒Aとなる関係を否定し、順行性にA⇒Bであることを示すことが必要です。そのためにはAとBを明確に定義することが重要です。

臨床研究ではさらに、以下の要素に分けることが一般的です。

  • 研究対象集団(Participants)
  • 介入(Intervention)あるいは曝露因子(Exposure)
  • 比較対照(Comparison/Control)
  • 結果(Outcome)

どのような対象集団を想定して、どのような集団からサンプルしてくるのか。実はこの部分が研究のフィールドを決める第一歩になります。先進国の高齢者を対象とした研究を想定しているのに、若い人しか住んでいない地域の住民コホートを使うのは正しい結論が得られるとは思えませんし、入院患者のデータ解析をするのに大学病院のデータしか集められなければ偏った集団になってしまうでしょう。

介入や曝露因子についても定義を明確に決める必要があります。

そして重要なのはアウトカムの設定です。例えば「死亡」は、厳然たる事実になるので誤分類が起こりにくく、ハードアウトカムと呼ばれます。それ以外にも代理アウトカム(サロゲート)という考え方があり、これにはあるバイオマーカーの上昇や画像所見、疾患の発症などというものが含まれます。ハードアウトカムは結果がぶれないのが利点ですが、数多く起こらないこともあるために研究として実施する場合にサンプル数がとても多くなることがあります。これに対してサロゲートアウトカムは、数を揃えることが比較的容易な一方、定義付けが曖昧だとバイアスを生み出す可能性があります。

 

まとめ

よい学術論文を書くためにはしっかりとした目的を持つことの重要性が認識できたでしょうか。さらに優れた研究目的のためには仮説を立てることが重要です。立てた仮説がいつも正しいとは限りませんが、仮説を立てるに至るまでにきちんと筋道を立てることは最終的に論文を書くときにも生きてきます。

筋道が整った研究は英文校正を行う際にも校正者に意図が伝わりやすいという事実があります。よい論文を作るための第一歩として研究目的の明確化・仮説の呈示を中心として組み立てていくことが重要です。