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医学論文のススメ

COLUMN

適切なデータ収集と解析をする

688402_s捏造・改ざん・盗用は研究における三大御法度です。そしてこのようなことが起こらないようにするためには研究者自身が心を強く持つこと(一種の職業倫理ですね)が大事ですが、そういった不正が起こらない仕組みを整えることも重要です。研究に必要なデータの収集、保管、加工、解析のあり方について説明したいと思います。

 

1.収集するデータの種類と方法

研究で必要なデータを集める際には、データソースとデータ抽出方法によって注意すべき事がかわります。以前から臨床試験といえば患者個票(case report form:CRF)を記載し、事務局に提出する、というのが王道でしたが、近年は電子カルテなどのデータベースから必要なデータを抽出するという研究も徐々に増えてきました。

いずれの場合においても電子カルテなどの診療情報を元にしているのであればそれが「原資料」ということになります。

 

2.収集するデータの品質

データベースからどのようにデータを引っ張ってきたか、プログラムを保管してプロセスを管理しておく必要があるでしょう。

診療記録から転記して作成するCRFは、原資料ときちんと整合性がとれているかをモニタリングする必要がある場合があります。

同じように診療記録からの転記をパソコンやタブレット上でおこなうこともあります。Electric data capture (EDC)といわれますが、代表的なのがREDCapなどですが、これは修正した場合に自動的にログが残ることで改ざんを防止する仕組みになっています。

研究を実施するためのデータがどのように現実に起こっていることを反映しているか、プロセスを含めて透明性を高め、追跡可能性(トレーサビリティ)を担保しておくことが重要です。

 

3.データクリーニングと解析について

収集してきたデータをそのままの形で解析することはできません。欠損の確認、外れ値、入力ミス、転記ミスなどがあるかもしれません。また解析に必要な変数を既存のパラメータの組み合わせによって生成する必要もあります。

そのようなプロセスをデータクリーニングといいます。

研究期間中にデータを預かるデータセンターが重大な欠損値、外れ値、入力・転記ミスが疑われるデータについて、研究を実施している施設に照会をするといったことがモニタリングといいます。実際に施設を訪問することもあります。

データ固定後は研究者自身によりデータ加工を行うことになります。このときにどのようにデータを加工したか、欠損値をどのように扱ったかなどはすべて研究論文に記載することが必要なことです。

あとから結果に疑義が生じた場合にそれを追跡できることが必要ですので、クリーニングのプロセスや解析のプロセスの可視化しておくことが望まれます。そこで研究者自身が解析ソフトなどをプログラミングベースで取り扱えるようにしておくことが重要です。

 

4.データの保管について

医学研究のデータは個人情報だらけです。従ってその取り扱いはたとえ氏名や住所などの個人を識別する情報が削除されていても十分に注意を払って取り扱うべきです。

連結表がある場合はその連結表を使って個人を特定することができるため、研究用データとは別に保管する必要があります。

そして、研究結果の信頼性担保のため、研究が終わって成果が発表されてからもさらに数年間は保管することが義務づけられています。

侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う研究であって介入を行うものを実施する場合には、少なくとも、当該研究の終了について報告された日から5年を経過した日又は当該研究の結果の最終の公表について報告された日から3年を経過した日のいずれか遅い日までの期間、適切に保管(医学系指針第 20 (5))

このように研究対象者の情報保護と研究結果の信頼性担保の意味からデータ保管については細心の注意を払う必要があります。

 

5.データの”操作”をしない

捏造・改ざんは厳禁です。しかし人間は弱い生き物です。成果を出さねばならないプレッシャーなどが人の心を歪めてしまうことは残念ながらありえます。

重要なことは、そういったことが起こらない体制を整えることです。組織としてガバナンスを確立することに合わせ、研究者個人のレベルでも透明性を高めておくことが重要です。

組織として不正を防止する手立てとして以下のような方法が考えられます。

  • 監査証跡を残せるEDCをデータ収集に用いる
  • 研究計画書・解析計画書の事前提出
  • セキュアなデータ保管のためのサイバースペースの確保(入退室管理などの物理的管理も含める)
  • モニタリング手順、データクリーニングのプロセス可視化
  • 解析プログラムのダブルチェック(別の共著者に実施してもらうなど)
  • 解析実施記録(またはログ)保管の義務化
  • 論文執筆時に剽窃防止のため英文校正前後で剽窃チェックツールを使用する

研究の種類によってはここまでの厳しさは要求されないでしょうが、これらの法規はどんどん厳しい方向に向かっています。できることからはじめてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

捏造・改ざん・盗用の三大御法度を防止するためにも研究用データの管理の一連のプロセスの可視化は非常に重要です。何より研究対象者のプライバシー保護のためにも個人情報保護の重要性はますます重要性を増しています。

研究登録はお済みですか?

9f9d2225992945fe1560f982a6713c1b_s介入を伴う研究は、対象者に身体的・心理的苦痛を与えうるのにもかかわらず、研究者にとって都合のよい結果しか公表されない可能性があり、それは倫理的に許されないだろうという機運が高まりました。その結果、介入を伴う研究実施に先だって臨床試験を登録する必要があります。今回はその臨床試験登録について説明します。

 

1.登録とは?

「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(医学系指針)には次の様に記載されています。

介入を行う研究について、国立大学附属病院長会議、一般財団法人日本医薬情報センター又は公益社団法人日本医師会が設置している公開データベースに、当該研究の概要をその実施に先立って登録し、研究計画書の変更及び研究の進捗に応じ て適宜更新しなければならず、また、研究を終了したときは、遅滞なく、当該研究の結果を登録しなければならない。(医学系指針 第9の1)

つまり、研究を実施する前に何らかの方法で研究を登録することが必要ということになります。どうしてこういうことが必要なのでしょうか?それは以下の様に記載されています。

介入を行う研究については、研究のために介入行為をするにもかかわらず、研究者等にとって都合のよい研究結果だけが公開されることを防ぐため、あらかじめ研究の概要を登録するとともに、研究過程における透明性を確保する観点から、進捗状況について登録する必要がある。(医学系指針ガイダンス 第9の1)

確かに、身体的精神的な苦痛を味わってまで行った研究が日の目を見なかったら、参加者としてはやるせないですね。それが倫理的に問題である、ということなのです。これは国際的にももちろんそのような流れがあります(【医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors: ICMJE), 2004)。

臨床試験登録が必要な理由は以下の3つを解決することです。

  1. 出版バイアス:いいとこ取りの研究結果だけが公表されないように
  2. 倫理的問題:折角痛い思いをしたのに…とならないように
  3. 参加者の募集の助けに:情報を公開することによりより多くの人に参加してもらえるようになります

事前に登録がされていない研究論文は雑誌に受理されないという流れになってきています。論文を投稿する際に、clinical trial registrationについて聞かれることが多いと思いますが、きちんとした基準を満たしたポータルサイトに登録しておくことが重要です。

 

2.登録が必要な研究

介入を要する研究は事前に登録することが必要ですが、逆に介入を伴わない観察研究では必ずしも登録を必要としません。

しかし注意したいのは、ここで言う「介入」は、疫学的な用語としての介入研究とは異なり、診断のための検査においても侵襲が加わりますので、診療ではなく研究を目的として侵襲を加えるような検査を行うことも含まれます

また、近年、臨床試験における研究不正が大きく問題になり、「臨床研究法」という新しい法律に基づいて実施するべき研究というのが別のカテゴリとして設定されました。この法律に則って行う研究を「特定臨床研究」と呼びますが、もちろん臨床試験登録が必要です。

この法律ができることによってかなり複雑な法整備の印象を与えることとなってしまいました。英文校正を依頼するときにこの「臨床研究法」とか「特定臨床研究」といった用語を理解して貰うのに少し手間取った経験があります。

 

製薬企業から資金の提供を受けて行われる臨床研究

研究の実施に必要な資金を、製薬企業から提供を受けて実施する場合がこれにあたります。

病院と製薬企業が契約を結び、提供を受ける研究費の金額や使用目的を明確にしたうえで、透明性を確保して行われます。

 

国内で“未承認”あるいは“適応外”の、医薬品等を用いて行われる臨床研究

新しい薬・機器・再生医療等製品は、国の承認を受けることで適応疾患に対して使えるようになります。

日本国内では承認されていない薬を“未承認薬”といい、ある疾患に対しては承認されているものの別の疾患への効能は承認されていない薬を“適応外薬”といいます。

未承認あるいは適応外の医薬品等を用いて、新しい治療法を確立するための臨床研究が行われる場合、この法律が適用されます。

そして登録は事前にないと無効で、登録は研究開始前、すなわち最初の対象者に接するまでに行うことが要求されますので注意が必要です。

 

3.登録先

医学系指針が適用される研究の登録先は、以下の様なものが知られています。

日本:

アメリカ:

特定臨床研究の場合には、jRCT (Japan Registry of Clinical Trials) というところに登録することが必要となります。

 

登録の具体的な方法としては、いずれのサイトもまずはアカウントを開く必要があります。そしてそれぞれのサイトのガイダンスに従って登録していきます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。臨床試験登録は何らかの介入が被験者に対して実施されるときに適用されます。このとき最初の症例が登録される前に試験を登録しておかなければなりませんので注意が必要です。

倫理事項を遵守しよう!

1843455_s人を対象とした臨床研究を実施する上では、被験者を保護することが第一優先事項となっています。被験者を保護するために様々な倫理的な観点での取り決めがあり、国際的な標準と国内の規制に則って研究を行う必要があります。

今回は研究者が守るべき倫理について説明したいと思います。

 

1.人間を対象とする医学研究の倫理的原則 ーヘルシンキ宣言ー

第二次世界大戦中のナチス・ドイツの非人道的な人体実験に対する反省から、世界医師会(World Medical Association, WMA)によって1964年にフィンランドのヘルシンキで採択された倫理原則であり、以後修正を繰り返し今日に至るまで人を対象とした医学研究の倫理的な礎となっています。

この宣言には重要な事項がいくつも盛り込まれていますが、特に重要なポイントが、

  • 個人に対する尊重
  • 自己決定権
  • 研究への参加に関する情報に基づいた決定(インフォームド・コンセント)を行う権利

です。個人の尊重にはプライバシーの保護も含まれ、個人情報の保護が近年では最大の争点の1つとなっています。

医学研究はすべての被験者に対する配慮を推進かつ保証し、その健康と権利を擁護するための倫理基準に従わなければならず、人を対象とするすべての医学研究はヘルシンキ宣言を遵守する必要があります。

 

2.日本における倫理指針

我が国では、人を対象とする研究を実施する際の指針や法が近年やや複雑化していますが、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(平成26年12月22日 (平成29年2月28日一部改正))」(以下、医学系指針)に基づいて臨床研究を実施するのが基本となっています。内容としては以下の点に集約されます。

  • 研究者が負うべき責務
  • 研究対象者の保護(有害事象への対応、インフォームドコンセント、個人情報保護)
  • 研究の信頼性確保

数年前に起こった研究不正に端を発し、研究倫理の大幅な見直しが行われました。具体的には2017年に医学系指針の内容改訂が行われたことと、臨床研究法が制定されたことです。

まず、医学系指針においては以下のことが追加されました。

  • 1.(特に個人情報に関する)用語の定義の追加・ 見直し
  • 2.インフォームド・コ ンセント等の手続き の見直し
  • 3.第三者提供時の記録 の作成等の追加
  • 4.海外への試料・情報 の提供手続きの追加
  • 5.匿名加工情報等の取 扱手続きの追加
  • 6.研究に関する試料・情報等の保管

この改定では個人情報の取り扱いが大きく問題になりました。これまで単独で個人を特定できるような情報のみを個人情報として捉えていたのですが、病歴も含めて個人情報である(具体的には要配慮個人情報)、という考えの基でこれらの情報をしっかり保護しよう、という内容に変わりました。匿名化されていたとしても個人情報であることには変わりがないので、しっかりと保護しましょう、ということで、原則的に本人からの同意を得るようにということになったのです。ただし本人からの同意取得が困難で、公益性の高い医学研究であって被験者に拒否の機会が与えられるときに限っては例外的に本人からの同意はとらなくてもよい、ということになりました。第三者や海外への情報提供について新たに手続きの仕方が盛り込まれたのも、個人情報の保護に関する考えが根底にあります。

そして研究に関する試料・情報の保管に関しても、研究不正が起こらないように研究終了後も情報を保管しておく義務が生じました。具体的には、介入研究に関わる情報等は、研究終了後5年または最終公表後3年のいずれか遅い日まで保管しなければならなくなりました。

そして「臨床研究法」が「企業から資金提供」「未承認・適応外薬」の臨床研究(=特定臨床研究)を規制する目的で制定され、2018年4月より施行されました。前述の医学系指針との大きな違いは、「法律」であること(=違反した場合に罰則がありうる)です。通常の医学系研究とは運用する決まりが異なるため、最初にまず特定臨床研究にあてはまるかどうか、という点を鑑別せねばならない、という点が煩雑です。

 

3.研究計画書の作成について

前述の医学系指針において、「人を対象とした医学系研究を実施(研究計画書を変更して実施する場合を含む。) しようとするときは、あらかじめ研究計画書を作成し、倫理 審査委員会の審査、研究機関の長の許可を受けることが必要」と明記されています。

記載が必要とされる項目を要約すると以下のようなものになります。

  • どんな研究を、誰が、どのデータを使って、どのように行うのか(方法)
  • 研究を実施する正当性(理論的な根拠や意義)
  • 研究対象者が被る利益・不利益
  • 研究対象者に対する侵襲の程度(侵襲あり・軽微な侵襲あり・侵襲なし)
  • 研究対象者の権利保護(インフォームドコンセントな個人情報保護)

より具体的な項目を知りたい方はこちらのリンクを参照してください。(人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス

そして施設の倫理審査委員会において審査・承認の手続きを踏むことになります。

 

4.インフォームドコンセント

インフォームドコンセントはヘルシンキ宣言にも医学系指針においても明記される研究対象者保護のための重要なコンセプトです。一部の例外を除いて原則研究対象者へのインフォームドコンセントは義務となっています。例外としては、

  • 侵襲がない
  • 介入がない
  • 生体から試料を採取しない

という場合に限られ、また要配慮個人情報を含む場合はこれらの条件があっても原則としては必須です。しかし同意取得が極めて困難な状況(ご本人が死亡している、など)にある場合には、研究内容の公開と本人または代諾者による研究参加への拒否の機会が保証されている場合に限り、オプトアウト(明示的な拒否の意思表示があったときのみ研究対象から外れること)でよいとされます。

 

まとめ

研究を実施する際には必ず研究計画書を作成するのですが、このときに研究対象者の保護を考える必要があります。これは情緒的なものではなく、きちんとした手続きに則って進めていく必要があり、適切に成されない場合には処罰の対象となりますので十分注意が必要です。

また、論文中にも研究倫理についてはしっかりと述べられることが求められます。論文を書き上げて英文校正に出す前に、記載漏れがないかもう一度よく確かめるようにしましょう。

仮説の検証が可能な統計を設定しよう!

1224206_s研究を実施するときに、得られたデータを客観的に評価するときに統計学的に検定を行うことが多いですが、適切な統計手法を選んで実行することが必要です。最低限の生物統計に関する知識が必要といえます。しかし詳しく統計学を学ぶ前に、押さえておきたい最低限のことについて今回は説明してみたいと思います。

 

統計法も研究前に決める

研究計画書を作成するときにサンプルサイズを最初の段階で決めておくことはすでに述べているのですが、統計手法についても研究を行う前に決めておくことが必要です。世の中には様々な統計手法が存在しています。手当たり次第に実施すると少しずつ結果が異なることがあります。

もし最初の段階で指定していない場合には、都合のよい方法を選択してしまう可能性があり、いわゆる「後出しじゃんけん」状態になってしまうことがあります。これでは研究の公平性が担保されません。よってどのような集団にどんな統計手法をどの段階で用いて検定するのかを指定しておくことが重要です。

主に介入を要する研究においてはこのような厳密な方法をとることが一般的です。後ろ向きの観察研究においてはその限りではありませんが、どちらにしても計画段階でどのような統計手法を用いるかについては十分に議論を尽くしておくことが重要です。

最初の段階で統計まで含めて議論しておけば論文の「方法」の部分はもう書くことができます。それだけかけたからと言って英文校正にだすのは請求ですが…。

 

仮説の検証が可能な統計法を用いる

そもそも統計を使う目的というのは、何らかの差を検出するために行うのですが、結果は実質的な差、比べる群内のばらつき、サンプル数に依存します。つまり数を増やせば非常に小さな差であっても統計学的には有意になってしまう可能性があるということが言えます。

自分が示そうと思っている仮説が正しく検証できているかどうかは、実質的な差がきちんと存在していて初めて成立するものであるはずです。

サンプルサイズが少なかった

という言い訳を時々耳にすることがありますが、それはどんな研究結果においても大なり小なり成立しうることですので、結果が有意でなかったときにはサンプルサイズが小さかったことだけで説明しようとしてしまうのは乱暴なのです。

また適切な統計モデルを選択するということと正しい前提に基づいたモデルのあてはめ、というのも重要です。

線形の関係(Yに対するXの関係が直線的であること。Xが1増えるとYがいくつ増える、というのが正比例するもの)になっていなければ成立しないモデルであるにもかかわらず、YとXの関係がU字型の相関を持っている、などの状況ではうまく当てはまりません。

また、「比例ハザードモデル」という医学研究でよくつかわれる統計モデルは、二つの曝露状態におけるハザード関数が平行であることが前提として必要です。そういった前提が崩れてしまったときの対処方法も含めて計画しておく必要があります。

このように、統計モデルの最低限の前提を確認することは非常に重要です。

 

エフェクトサイズと信頼区間について

エフェクトサイズ、というのは実質的な効果量のことを指します。何かの治療が、何もしなかった場合に比べてどのくらい効果があるのか、あるいは何かの危険因子がある場合、ない場合と比べてどのくらい危険性があがるのか、ということを示します。多くの場合は発生率の比をとるか差をとることになります。

そして真実の値というのはサンプル集団に応じて微妙に変化します。この真実の値のばらつき具合を表現したものが信頼区間ということになります。統計モデルでは一つの効果量である点推定値と信頼区間(通常は95%信頼区間)が出力されます。

比で効果の比較を行った場合には、発生率比が大きくなるときは信頼区間の下限が1を超えていると有意である、と言えます。逆に発生率比が下回るときには信頼区間の上限が1を下回るときに有意であると判断されます。いずれにしても信頼区間の中に1を含まないことで統計学的な有意性を示すことができます。

差で効果の比較を行った場合には0を信頼区間の中に含まないことで統計学的な有意性を示すことができます。

さらに効果の差の逆数、特に発生率の引き算の逆数を取ることでNumber needed to treat(=何人に治療薬を使うとイベントの発生を防ぐことができるか)を求めることができます。これも効果の大きさを表現するのに便利な指標になります。

重要なのは、単にP値のみに着目するのではなく、効果の大きさ自体に着目するということです。

 

まとめ

このように、研究を実施することを決めた後には研究計画の中に統計学的な検討を加えることが必須です。統計を考慮に入れることで前もって症例数を見積もることができ、また効果の推定を正しく行うことができます。最初の段階で計画しておくことが重要ということになります。

効果の推定は比や差で表現しますが、信頼区間がそれぞれ1,0を跨がないことで統計学的な有意性を示すことができます。

重要なのは、統計学的に有意であるかどうかだけではなく、効果の大きさを表現すること、そのために点推定値と信頼区間を評価することが重要です。研究計画段階でそのような統計学的な検討をしっかり行っておくことが重要です。

対象者を設定しよう!

967007_s人を対象とした研究(臨床研究)を実施する上で、どんな人を対象にして、どのくらいの人数規模で実施するか、ということは非常に切実です。また対象者の選び方によっては大きく偏りがでてしまうことがあります。研究の対象となる集団を適切に選び出し、適切な人数だけを偏りなく集めるためにはどうすればいいのでしょうか?今回はその解説を行います。

対象者が母集団の代表となるように設定する

ある研究を実施するとき、対象となる集団を想定しますが、そういった対象集団のことを「母集団」と言います。より正確に言えば、母集団とは、「条件を満たすすべての患者」ということになります。研究対象者はその母集団から「ランダムに」抽出した代表者である必要があります。現実の世界から限られた数の標本を集めることを「サンプリング」といい、そのような集団のことを「サンプル」と呼びます。よく誤解されるポイントですが、選び出された集団のことを母集団とは呼ばないことに注意しましょう。

ではどのように選んでくるのでしょうか?そこら辺にいる人を捕まえてくればよい、という条件のものから、ある特定の疾病、あるいは投薬を受けている患者であって、研究に適したタイミングである、という厳しい条件が必要な場合もあり、サンプリングの難易度はバラエティーに富んでいます。しかしここで注意したいのは、背景特性に偏りがあると、選択バイアスを生じうるため、比較の質を落としかねない、ということです。

母集団を適切に設定するために選択基準と除外基準をしっかり決める必要があります。これを元にして現実の世界では研究対象者を集めてきます。

偏りがないように集めるにはどうしたらよいでしょうか?一人の医療従事者の担当する患者さんだけよりも複数のほうがよいですし、病院全体の傾向をつかむのに1つの病棟だけよりも複数の病棟のほうがよいでしょう。また、より大規模な研究となってきた場合には単施設よりは多施設のほうが偏りは少ないとされます。このように施設を増やすことで、単純にサンプル数を増やすという事以上のメリットがあるのです。

必要十分な対象者を設定する

では、対象者の数はどのように決めるのでしょうか?それには2つの約束があります。

  1. 必要対象者を研究開始前に決める必要がある
  2. 必要対象者数は主要評価項目に対して求める必要がある

対象者数を研究開始前に決める必要性について

「サンプルサイズ設計」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?これは研究を始める前に必ず行う統計手法の1つで、必要な標本の数を見積もるために行います。

多ければ多いほどよいのか、というとそうではありません。数が多すぎることで統計学的な有意差が付きやすくなるのが一つ目の理由です。事前の仮説があって、その仮説を示すに必要十分な症例数というのは計算上求めることができます。詳しくは正書に譲りますが、そのサンプルサイズ設計に基づいて必要症例数を算出することを事前に行うことが求められるのです。また、もう一つの理由としては、コストがかかりすぎる、ということです。対象者1人増える毎に書かねばならぬ書類はそれだけ増えますし、検査や治療薬にもお金がかかります。なのでできる限り最小限で抑えたい、というのが偽らざる本音でもあるのです。

必要対象者数は主要評価項目に対して求めなければならない点について

臨床試験のエンドポイントというのは一次エンドポイントと二次エンドポイントとありますが、必ず一次エンドポイントに基づいて設計を行う必要があります。これは、例えばランダム化比較試験などを行うときにはそのエンドポイントに基づいてサンプル設計をし、ランダム化を行うからです。二次エンドポイントに基づいて計算としてしまうと、後出しじゃんけんになってしまうというのが問題です。また、特に介入研究においてはプライマリーエンドポイントのみが本来の正しい結果として解釈されます。つまりそれ以外のアウトカムを中心に論じるときにはすでにそれは介入研究の域を出てしまっているかも知れないのです。

まとめ

以上まとめますと、必要症例数は事前に十分な検討を行う必要があるということ、そして一次エンドポイントに基づいて症例数設計を行うということが最重要ポイントとなります。これは決まりきったお作法なので、きちんと従来からの方法を押さえておけばよいということになります。また、文章としては非常に明快であり、すでに出版されている数多くの論文にある記載から大きく外れることは少ないと思われますので、過去の論文を読み込んで記載の参考にされるとよいと思います。もちろん剽窃は問題です。英文校正に出す際にはそういった剽窃がないかについてご自身での確認や専用のソフトウェア、あるいは校正者に直接お願いされることをお勧めします。

 

目的に合った研究を組み立てる

1246029_l素晴らしい研究成果を挙げるためには研究目的を設定することが重要です。核となる研究目的をしっかりかためること、そして核となる研究目的に合う研究をどのように組み立てていけばよいのか、について解説したいと思います。

 

優れた研究目的を設定するために必要な要素

優れた研究目的を設定するためには、いかに優れた仮説を案出できるかにかかっています。そしてその仮説を構成する要素に分解する作業も必要です。このようにして目的を設定するための要素を揃えていきます。

 

仮説の設定

仮説がどのように生み出されるかといえば、日頃から疑問に思っていることやこれまでの知見から予想を立てることになります。

「答えがわかっているのなら調べる必要はないのではないか?」

そんな声が聞こえてくるかもしれませんが、誰かが証明したことがないことを事実として仮定して動いていることというのは実はたくさんあります。しかし本来はどんなに些細なことであっても直接的に答えが示されていない限りは証明する余地が残っています。

 

「わからないから調べるのではないですか?」

これもありがちな疑問です。確かにわからないから調べるわけですが、「結果を予想する」というのは実は重要なプロセスです。研究を行うのは、予想した結果が正しいかどうかだけでなく、その背景やメカニズムに対する考察の正しさも確かめることになります。

 

「予想したのと違っていたらどうするんですか?」

予想と違う結果であったということは立てた仮説が間違っていたことを意味するのかというと、そうとも限りません。どうして結果が予想と違っていたのかを考察することで違う可能性を検討するきっかけにもなります。事実そのような考察から新しい発見が生まれたことは珍しいことではありません。

 

評価項目の設定

一度仮説を思いついたら、何を最終的に評価するのか、具体化していく作業が必要になります。疑問を解決するためのフィールドとして、医学研究は基礎研究と臨床研究に分かれますが、そのどちらのフィールドを用いて仮説を証明するのかをまずは決めることになります。

基礎研究であれ臨床研究であれ、まずは「何かの条件Aに対して結果Bが導かれる」という命題の形に落とし込みます。A⇒Bに対する因果関係を示すことを意識した場合に、B⇒Aとなる関係を否定し、順行性にA⇒Bであることを示すことが必要です。そのためにはAとBを明確に定義することが重要です。

臨床研究ではさらに、以下の要素に分けることが一般的です。

  • 研究対象集団(Participants)
  • 介入(Intervention)あるいは曝露因子(Exposure)
  • 比較対照(Comparison/Control)
  • 結果(Outcome)

どのような対象集団を想定して、どのような集団からサンプルしてくるのか。実はこの部分が研究のフィールドを決める第一歩になります。先進国の高齢者を対象とした研究を想定しているのに、若い人しか住んでいない地域の住民コホートを使うのは正しい結論が得られるとは思えませんし、入院患者のデータ解析をするのに大学病院のデータしか集められなければ偏った集団になってしまうでしょう。

介入や曝露因子についても定義を明確に決める必要があります。

そして重要なのはアウトカムの設定です。例えば「死亡」は、厳然たる事実になるので誤分類が起こりにくく、ハードアウトカムと呼ばれます。それ以外にも代理アウトカム(サロゲート)という考え方があり、これにはあるバイオマーカーの上昇や画像所見、疾患の発症などというものが含まれます。ハードアウトカムは結果がぶれないのが利点ですが、数多く起こらないこともあるために研究として実施する場合にサンプル数がとても多くなることがあります。これに対してサロゲートアウトカムは、数を揃えることが比較的容易な一方、定義付けが曖昧だとバイアスを生み出す可能性があります。

 

まとめ

よい学術論文を書くためにはしっかりとした目的を持つことの重要性が認識できたでしょうか。さらに優れた研究目的のためには仮説を立てることが重要です。立てた仮説がいつも正しいとは限りませんが、仮説を立てるに至るまでにきちんと筋道を立てることは最終的に論文を書くときにも生きてきます。

筋道が整った研究は英文校正を行う際にも校正者に意図が伝わりやすいという事実があります。よい論文を作るための第一歩として研究目的の明確化・仮説の呈示を中心として組み立てていくことが重要です。

研究目的を決定する

824517_s研究を実施するためには人・モノ・金が必要なのですが、きちんとした目的がなければどれも集まってきません。研究目的に沿って必要な人的リソース、研究環境、そして研究資金の分配を考えることになるからです。よく練られた研究計画の裏にはしっかりとした研究目的があります。そこで今回は、研究目的をどのように決めるのかについて説明してみたいと思います。

 

目的のない研究について

研究は、闇雲に手を動かしてデータを集めたり実験をしたりすれば結果がでる、などというものではありませんので、「目的のない研究」というのはそもそも存在しないはずです。

「有意差」がでたらOK?

しかし現実には、「データがあるからとにかくこれで解析してみて!」などと言われてよくわからないままデータとにらめっこしたりして、「有意差」がでたところで結果をまとめるといったプラクティスが横行しているのも事実です。

筆者はアメリカの大学に留学経験がありますが、研究を実施するためには最初に研究の背景、仮説、研究目的、研究方法、予想される結果などを記入するシートを記入してからでなければデータが出てこない仕組みでした。

ひるがえって日本の研究環境に目を向けてみると、もちろんきちんと手順を踏んで実施している研究室も多いですが、そうでない「出たとこ勝負」という研究が、残念ながら散見されます。そしてあまつさえ、論文中に目的が明確に記載されていないようなケースにさえ出くわします。

 

論文中に目的を書くべきところ

たいていの研究論文では、研究の目的は論文中のイントロダクション(緒言)部分の最終部分に明記されます。このことを意識するだけでも論文がピリっとしまりのあるものになりますので、こうしたことを意識してみるとよいかと思います。

そもそも緒言部分には、以下の様な論理構造が必要であることが多くの研究者・教育者によって提案されています。

  • 既知の事実
  • 未知の事実(これまでの研究で明らかにされてこなかったこと=フロンティア)
  • 目的(どうやってフロンティアを開拓するのか)

こうした構造にすべきである、と認識することも論文執筆の一助になることでしょう。これから論文を書き始める方にはぜひ意識して頂ければと思います。

 

研究目的を明確に決める

さて、目的が重要であることはわかって頂けたと思います。ではどうしたら研究目的をしっかりと書くことができるでしょうか?

最も重要なポイントは、疑問が何なのかをはっきりさせることです。そしてその疑問はできるだけ構造化するようにすることが肝心です。

 

疑問の構造化とは?

どんな人達を対象とするのか(Participants)、どんな介入(Intervention)あるいは曝露因子(Exposure)があるとそうでない人達(Comparison/Control)と比較してどんなアウトカム(Outcome)の発生に違いがでるのか、の頭文字を取ってPECOの要素が必要である、ということがよく言われます。

これが基本骨格であり、イントロダクションで目的を明示的に記載するように述べましたが、このPECOの形でまとめるようにするとよい、というのがとても重要なポイントの1つなのです。

PECOの形を認識すると、それぞれの定義を論文中で配置していく必要がありますので、自然とmaterials and methodsの部分が埋まることになります。また、イントロダクションでわかっていることを最初にまとめるように書いたわけですが、具体的にどんなことを書けばよいかというと、

  • Pという集団においてOの重要性
  • EやIの重要性

について述べていけばよい、という整理をするとぐっと論文が書きやすくなります。このようにきちんとした構造が根底にあると英文校正にだしたときにも校正者に意図が伝わりやすくなるため、意図した文章になることが期待できるでしょう。

 

PECOの裏にある仮説

「きっとこうなるはずだ」、という結論的なものが仮説です。研究の目的、特に研究計画書や競争的研究費獲得に際しては重要な要素です。新しい事実を見つけ、それを社会に役立てることが研究の目的です。

研究をビルに例えるならば、倫理的な問題や、研究環境や人的資源が土台になります。そしてビルの高さを決めるのは仮説です。それだけ重要な仮説の部分がすっかりと抜け落ちた計画書、研究費獲得の申請書、論文は魅力が感じられることは残念ながらほとんどありません。

その仮説を得るのは知識や経験に裏打ちされますが、日頃から問題意識をいかに持つかが重要です。他の人には何てこと無い出来事から学ぶ人・学ばないで日々過ぎていく人との違いはまさにそこです。

 

まとめ

よい研究を実施するためには、しっかりとした目的を持たせることが重要であること、理解していただけたでしょうか?「しっかりとした目的」を持つための鍵は、解決すべき疑問を認識することと、日頃から問題意識を持つことでした。そして疑問をPECOで構造化する意識を持つとその後の流れはスムーズになることでしょう。

欲しい論文の入手方法をお教えします

先行研究をしっかりと調べることは研究手法を学んだり、既知・未知の情報を整理したりする上で必要不可欠です。2252872_sそして、Pubmedで調べるにしても孫引きで調べるにしても本文を入手することが基本となります。どのように文献を入手することができるのか、整理してみましょう。

 

1.オンライン経由での入手

まず、もっとも簡単な入手方法はインターネットを介した方法です。オープンアクセスの雑誌ではもちろん本文、図表に至るまですべて無料で見ることができます。また、公的資金や製薬スポンサーにより援助を受けている研究でも通常は非オープンアクセスの雑誌でオープンアクセスオプションを利用して掲載される場合がありますので、そういったものも無料で入手可能です。

また、職場である医療機関や大学院・研究所などに所属して研究する人達は、アクセスする場所は敷地内のみとなることもありますが、契約する雑誌の論文を入手できる場合があります。所属する組織がどんな雑誌と契約しているのかを確認しておくとよいでしょう。

 

2.図書館で入手

所属する機関の図書館が保有する蔵書にあれば複写などを自由にとることができます。(コピー代は別途かかります)なので、まずは自身の所属する機関の図書館サービスを確認することをお勧めします。

その場合はオンライン版も契約していることがありますので、PDFで入手したい場合にはそちらも併せて確認が必要です。

 

3.図書館に論文がない場合の入手方法

仮に所属の図書館に論文がない場合でも、ほかの組織に融通してもらったりすることはできます。

1)相互貸し出しシステム

CiNii(NII学術情報ナビゲータ[サイニィ])という、論文、図書・雑誌や博士論文などの学術情報で検索できるデータベース・サービスがあります。このサイトでは他の機関で保有する雑誌の情報を確認できます。

あるいは国立国会図書館に利用登録をすると、1週間程度で申請許可がおりますので、そこから複写の申し込みや貸し出しサービスを受けることができます。

なお、こうしたシステムに関する情報は機関の図書館がアナウンスしている場合がありますのでご確認しておくことをお勧めします。場合によっては図書館を通じて他機関に複写を送ってもらったりすることができる場合がありますので、それも併せて確認するとよいでしょう。

 2)オンライン購入

こちらが王道なのかもしれませんが、記事を一つ読むために1部につき数千円を支払うことになります。今後その雑誌からいくつもの論文を購入するなどの予定がある場合には、定期購読をするのも一つの方法でしょう。

いくつかメジャーなところで言えば、医学中央雑誌刊行会、国立研究開発法人科学技術振興機構などでは申し込めば有料で複写サービスを受けることができます。他にも有料で文献の複写を入手してくれる業者がいくつかありますので、インターネットなどでご確認ください。

3)別刷り請求(著者に持っている論文を送ってもらう)

恐らくこれは一昔前には頻繁に行われていたと思いますが、最近では別刷り印刷をやり取りする機会はめっきり減ってきていると思われます。

 

まとめ

論文の入手には冒頭で述べたように、研究手法を学んだり、既知・未知の情報を整理したりする上で必要不可欠です。自分の論文で使える表現をストックしたりするのにも役立ちます。もちろん、実際の論文に書くときには「盗用」とならないように細心の注意を払いつつ、英文校正を実施して洗練された文章に仕上げていくことが重要であることは言うまでもありません。

過去の関連論文を読み終えている必要性について

2252872_s研究を行い、論文を執筆、投稿して出版という一連の流れの中で、一番初めに行うことである「研究課題の発案」に際して、過去の関連する論文をしっかりと読み込んでおくことは非常に重要です。今回は、研究実施前に論文を網羅的に調べて読むことについて説明したいと思います。

 

1.論文チェックは研究前にしよう

 研究の目的は、一言で言えば、フロンティアの開拓です。つまり、これまでにわかっていることとまだわかっていないことの境界線を少しずつ広げていく活動なのです。

この、「わかっていることとわかっていないことの境界線」を見定めるのに絶対的に必要な行為があります。

それは、文献の網羅的検索です。

このように文献検索は研究を開始する前に必ず実施することが肝心です。すでに別の研究者や研究グループが発見した事実をなぞるような研究をしてしまうと、せっかく苦労して行った研究結果のインパクトを毀損してしまいます。

二番煎じというのはいつの時代も、どんな領域でも、憂き目を見るものなのです。

ただし、これにも一つだけ例外があります。それは、過去の論文の方法が完全ではなく、よりよい方法で行うことができる、より大きな規模で行える、という見込みが立つときです。

こうした”付け入る隙”を見つけることも文献検索の大きな意義だったりします。

 

2.膨大な論文から何を選択するのか?

 さて、網羅的文献検索が必要であることは既に述べました。

言うのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいものです。文献の検索に当たっては、世界中の論文を検索するのにはPubmedを、日本語の文献を検索するのには医中誌などを活用することが多いと思います。

Pubmedでは、3000万以上の文献・書籍を検索できるため、何を選択するか、そしてどのように検索をするのか、ということが非常に重要な課題になります。

何を選択するか、という部分については前述のように、これから自分が実行しようとしている研究内容についてのフロンティアを知ることがまずは大事です。しかし、実際に研究を実施する上では、これまでにわかっていることの積み上げである、という意識を持つことが大事です。研究の構成要素を文献から引用するのです。

例えば、血圧と予後のことを研究しようとすると、血圧の測定方法、測定のタイミング、これまでによく使われている血圧の基準値、カテゴリー、そして予後であればどのような予後を定義するべきなのか、ということについて詳しく知る必要があります。「予後」と一言で言っても、それは「すべての原因による死亡」なのか、「心血管疾患の発症」なのか、「心血管疾患による死亡」なのか、そもそも「心血管疾患」とはどのように定義すべきなのか、などといったことを決める必要があります。

現実的なリソースからどんな情報を入手できるのか、ということも研究実施可能性(feasibility)を考える上で非常に重要ですので、現実的な研究計画立案段階において可能な曝露因子やアウトカムの定義をリストアップしておくこと、それの根拠となるような論文を調べておくこと、というのが重要です。

 

3.文献検索

 どのように文献を検索するかについてですが、上記のように調べる目的を明確化したら、それにまつわるキーワードを整理しましょう。このとき、①対象となる母集団、②曝露因子、③アウトカムをキーワードとして羅列していくようにしましょう。

血圧と予後をみる、といっても成人と小児なのか、妊産婦なのかで全く異なります。また、住民コホートなのか、疾患コホートなのかも異なる集団を見ることになります。

また、曝露因子も先ほどの例でいえば、収縮期血圧なのか拡張期血圧なのか、平均血圧なのか、脈圧なのか、24時間血圧の変動パターンをみるのかによって異なります。

そして、網羅的に検索するためにはPubmedの中ではMeSH term(注)のみでなく、できるだけ考えられる用語を羅列して入れると拾い上げられる可能性が高まります。(その分不要な論文も一緒に引っかかってきてしまうのでバランスを取るのが難しいのですが…)

注) MeSH(メッシュ)はMedical Subject Headingsの略で、アメリカの国立医学図書館が、索引誌(Index Medicus)の見出し語として60年前に作成し、その後MEDLINEデータベースのシソーラスとして利用されるようになったものです。毎年改訂されています。シソーラスとは、さまざまな医学用語をできるだけ統一して使えるようにまとめられた用語集のことを指します。

 

4.孫引き

 丁寧にPubmedだけを調べていくのを正攻法とするなら、少し裏技的な方法をご紹介します。

関連する重要な論文をじっくり読んで、そこに引用されている文献を孫引きすることもよく行われる論文収集の方法です。

特に読むべきなのはその道の第一人者の書いた総説(review article)や、high impactなジャーナルに掲載された論文のイントロダクションに載っている論文です。

 

5.まとめの作成

 こうして集めた文献をテーマ毎に整理し、それをまとめておくとよいでしょう。このまとめは研究内容のプレゼンテーションややがて作成する論文のイントロダクションにも使うことができます。

また、現在の問題をしっかり把握し、研究のフロンティアを認識しやすくなります。

できればそのときに気になる英語表現を拾い集めてくることをオススメします。そのままコピーしてすべて使う訳にはいきませんが、自然な言い回しがどんなものなのかを学ぶことができますし、英文校正に回す際にも余分な労力をかける必要がなくなります。

現時点でのわかっていることとわかっていないことの境界線を認識し、あなた自身の素晴らしい研究成果につながるようにしていきましょう。

「よい科学」をしましょう

言うまでもないことですが、医学領域における科学的によい科学とは、2152436_s臨床的に意味のある研究のことです。

それは研究計画の立案をするところから始まりますが、多くの場合は臨床をやっていく中でふと頭の中に浮かんでくるような疑問を解消するようなテーマであったり、自身の経験から導かれたある種の法則のようなものを証明するためのテーマであったりします。

近年「ビッグデータ解析」がもてはやされていますが、これはデータ駆動型研究といい、主に特定の仮説を設定せずに、大量のデータをある一定の方向性で分析することによって新しい仮説のタネを見つけることが目的です。

これに対して仮説駆動型研究というのは、仮説を検証することが目的です。一定の真理にたどり着くための道筋が異なるだけで、単純に善し悪しを比較することはできません。むしろこの仮説駆動型研究のほうが多くの臨床家にとっては興味深く、共感しやすく、そしてわかりやすい研究であったりします。

そこで、今回はこの仮説駆動型研究を中心に、どのように研究テーマを決めていくかを説明してみましょう。

 

第一段階:臨床的に意味のある研究を見つけ出す

1)研究のタネの見つけ方は、経験にあり

臨床を実際にやっている方であれば、自身の経験を元に探し出すのが最も近道であると言えます。

「この病気の患者さんたちって、いつもこうだよね」

という発見が研究につながるかもしれない、ということです。

経験から導かれた仮説というのは単なる思い込みということも多々あります。しかし、それを自分の経験だけにとどめてしまっては本当に正しいかどうかを知ることができません。そういった観点からも研究につなげることは意味があるのです。

また、仮説がはっきりしていないこともあります。特定の疾患の患者さんを集めてくると共通点がありそうだけど、それが何なのか言葉にできないような状況です。このような状況においても様々な情報を集めてくると共通点が見つかる可能性があります。こういったアプローチの仕方であっても立派な研究の動機となり得ます。

 

2)臨床上の必要度の高い、切迫した疑問

あなたが切実に疑問に思うことは、きっと世界中の他の誰かも同じように疑問に感じている可能性が高いでしょう。そしてそういった疑問は広く現場に還元される可能性が高いと思われます。

わかっていないなら自分で調べればいい!のです。

 

第二段階:研究テーマが解決されていないことを確かめる

折角思いついた仮説ですが、すでに誰かの手によって解決済みであることがあります。それならその解決した人の研究成果を参考にすればよいでしょう。しかし、果たしてその研究が完璧にその疑問の解決や仮設の検証に正しく結論を導けているのか、ということはしっかりと確認する必要があります。

1)文献検索は網羅的に

タイトルや結果の一部だけを見ただけではわからないかもしれません。また、その研究よりももっと素晴らしい研究デザインや解析手法を思いつくかもしれません。そこで、関連する文献集めをします。

一つの論文を書き上げて、参考文献リストを作ると、少なくとも20編、多ければ50編近くの論文を引用していると思います。しかしその文献リストに載らなかったその他の研究もまた、あなたの研究テーマを確認するために読んでおく必要のあったものが含まれていると思われます。

かなり大量の文献を読み込まねば研究を実施することはおぼつきませんので、研究をしようと思い立ったその日から文献集めを始めるとよいでしょう。もっと言えばその疑問を解消しようと思ったところから文献集めは始まっているのかもしれませんね。

文献検索はPubmedを用いることが多いと思われますが、できるだけ広めに用語(MeSH term以外も含めて)を検索することがよいですが、適切に絞り込みができていればそれほど労力をかけずに文献検索を実施できるようになります。

 

2)集めた文献は文献管理ソフトへ

今は文献管理ソフトがかなり充実しており、MendeleyやEndnoteなどが有名ですが、そういったツールを使って文献管理をするとそのまま論文に載せるための参考文献リストを自動的に生成してくれます。

また、ジャーナルのスタイルを選ぶこともできるため、投稿するための労力を最小限に抑えることができます。

 

第三段階:正しく美しい結果を示す

研究成果はテーマでほとんど決まるとはいえ、それを読者にとってわかりやすくまとめるということ、そして読者を不快にさせるようなケアレスミスを根絶することも「よい研究」を形作る重要なパートです。

適切な図表と正しい研究結果をまとめることは言うまでもなく重要です。

しかし、最終的にはいかに細部までこだわりをもって仕上げることができるかにかかっています。

 

「神は細部に宿る」

 

というフレーズはスティーブジョブズが使ったことで有名ですが、まさに最後は細部に神経を行き渡らせることが重要と考えます。

英語論文であればネイティブチェック、英文校正は最低限行う必要があります。

 

まとめ

さて、今回は「よい研究」をするための一つの方向性として、臨床現場からの仮説を元に研究テーマを考る、仮説駆動型研究ついて説明しました。

人によって「よい研究」の定義は異なるでしょうが、より多くの読者の注意を惹きつけ、多くの現場に役立つようなエビデンスを提供できる研究をする、という観点からの話でした。

そして折角よいテーマをみつけたなら論文を投稿する際に細部まで気を配りましょう。