提出された論文を、編集者たちはどのようにチェックして査読に回しているのでしょうか。そして査読結果をうけて編集者としてどのように受理・不受理の判断を下しているのでしょうか?今回は編集者目線で論文のチェックポイントをご紹介してみたいと思います。
1.論文の質をどう判断している?
編集部には連日多くの論文原稿が届きます。それらを一つ一つ隅々まで確認して査読に回しているのかというと、そうでもありません。
査読に回す前にいくつかのチェックポイントを設けて一次審査というのを行っているのです。
ポイントは以下の3つが挙げられます。
- ジャーナルの対象となる内容か
- 十分な質の英語となっているか
- 投稿規約を満たしているか
1.ジャーナルのスコープにあっているか
ジャーナルや読者層のスコープに合った内容かどうかを確認します。投稿規定やジャーナルのウェブサイトに掲載されていますので確認しましょう。
また、過去にジャーナルに掲載された論文に目を通すことで、大まかな傾向をつかむこともできます。
2.英語の質が十分か
英文のタイプミスや文法のミスがあると、査読まで到達する可能性が低くなります。
論旨が整理されてないなど、わかりにくい文章についても同様です。そのためにも英文校正に提出してチェックをしてもらうことが重要です。
3.投稿規約を満たしているか
基本中の基本なのですが、タイトルの文字数、全体のページ数、参考論文の数や書き方、図表の枚数など、そしてその書式が1つ1つ守られているかも重要です。こうした基本的な約束事が守れないと論文全体の内容にも疑義が生じやすいため、論文執筆前に必ず投稿規約をチェックしなければいけません。
上記3つのポイントは著者が最低限守るべきルールですが、一次審査にどれだけ時間をかけるかは、ジャーナルによって異なります。
これ以外にも、投稿された論文のタイトル、アブストラクト(近年ではVisual abstractを用いるケースも流行ってきていますが)にも気を配る必要があります。これらは上記の最低限の約束を守れた上でですが、編集者も人間ですので、魅力的に映る論文は査読に回りやすくなるかもしれません。
2.査読者による論文の査読結果報告
無事に一次審査を通過し、査読に回ったとします。
その査読結果はもちろん大いに参考にされるわけですが、最終的に論文に掲載されるかどうかについての判断は、編集部が下すことになります。
通常複数の査読者からの結果をもとに判断が下されます。
査読報告書のコメントに大きな差がある場合、編集者は査読者に多数の意見を反映したものになっているかの確認を依頼することもあるようです。
万一競合する相手が査読者になってしまった場合にはかなりネガティブな査読が返ってくる可能性があります。
編集者が投稿者との関係を理解していなければ内容をそのまま採択可否の判断に使われてしまいますので、投稿する時点で査読者にならないように連絡をしておくようにする必要があります。
3.査読者による編集者宛のコメント
査読者から編集者に対して直接コメントを出すことができますが、これは投稿者の目に入らない形で伝えられます。
査読者が気づいた内容であっても直接投稿者に対して伝えることが憚られるような内容であった場合にはこのような形式で伝えられることがあるでしょう。
4.編集者と査読者、査読者間のコメントが異なる場合にどのように対応するべきか
ここまで編集者目線でお伝えしてきました。
ここで、編集者と査読者、あるいは査読者間でのコメントの間に齟齬が見られた場合に、投稿者としてどのように対応することが求められるでしょうか?
編集者としては、最終的に良い論文になればよいのであり、通常は意見の衝突自体を重く見ることはないと思われます。
いずれの批判もあり得て、論理的に正しい場合がありうるからです。この場合は困ってしまうのは投稿者です。
結論から申し上げれば、投稿者としてはどちらのコメントに対しても返答をすること、そして最終的にどちらかを選ばざるを得ない場合にはそのことをRebuttal letterの冒頭に記載するようにするとよいでしょう。
編集者はそのことを理解して対応してくれることでしょう。