医学論文の英語校正ならジーニアスプラス

2021 2月

適切なデータ収集と解析をする

688402_s捏造・改ざん・盗用は研究における三大御法度です。そしてこのようなことが起こらないようにするためには研究者自身が心を強く持つこと(一種の職業倫理ですね)が大事ですが、そういった不正が起こらない仕組みを整えることも重要です。研究に必要なデータの収集、保管、加工、解析のあり方について説明したいと思います。

 

1.収集するデータの種類と方法

研究で必要なデータを集める際には、データソースとデータ抽出方法によって注意すべき事がかわります。以前から臨床試験といえば患者個票(case report form:CRF)を記載し、事務局に提出する、というのが王道でしたが、近年は電子カルテなどのデータベースから必要なデータを抽出するという研究も徐々に増えてきました。

いずれの場合においても電子カルテなどの診療情報を元にしているのであればそれが「原資料」ということになります。

 

2.収集するデータの品質

データベースからどのようにデータを引っ張ってきたか、プログラムを保管してプロセスを管理しておく必要があるでしょう。

診療記録から転記して作成するCRFは、原資料ときちんと整合性がとれているかをモニタリングする必要がある場合があります。

同じように診療記録からの転記をパソコンやタブレット上でおこなうこともあります。Electric data capture (EDC)といわれますが、代表的なのがREDCapなどですが、これは修正した場合に自動的にログが残ることで改ざんを防止する仕組みになっています。

研究を実施するためのデータがどのように現実に起こっていることを反映しているか、プロセスを含めて透明性を高め、追跡可能性(トレーサビリティ)を担保しておくことが重要です。

 

3.データクリーニングと解析について

収集してきたデータをそのままの形で解析することはできません。欠損の確認、外れ値、入力ミス、転記ミスなどがあるかもしれません。また解析に必要な変数を既存のパラメータの組み合わせによって生成する必要もあります。

そのようなプロセスをデータクリーニングといいます。

研究期間中にデータを預かるデータセンターが重大な欠損値、外れ値、入力・転記ミスが疑われるデータについて、研究を実施している施設に照会をするといったことがモニタリングといいます。実際に施設を訪問することもあります。

データ固定後は研究者自身によりデータ加工を行うことになります。このときにどのようにデータを加工したか、欠損値をどのように扱ったかなどはすべて研究論文に記載することが必要なことです。

あとから結果に疑義が生じた場合にそれを追跡できることが必要ですので、クリーニングのプロセスや解析のプロセスの可視化しておくことが望まれます。そこで研究者自身が解析ソフトなどをプログラミングベースで取り扱えるようにしておくことが重要です。

 

4.データの保管について

医学研究のデータは個人情報だらけです。従ってその取り扱いはたとえ氏名や住所などの個人を識別する情報が削除されていても十分に注意を払って取り扱うべきです。

連結表がある場合はその連結表を使って個人を特定することができるため、研究用データとは別に保管する必要があります。

そして、研究結果の信頼性担保のため、研究が終わって成果が発表されてからもさらに数年間は保管することが義務づけられています。

侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う研究であって介入を行うものを実施する場合には、少なくとも、当該研究の終了について報告された日から5年を経過した日又は当該研究の結果の最終の公表について報告された日から3年を経過した日のいずれか遅い日までの期間、適切に保管(医学系指針第 20 (5))

このように研究対象者の情報保護と研究結果の信頼性担保の意味からデータ保管については細心の注意を払う必要があります。

 

5.データの”操作”をしない

捏造・改ざんは厳禁です。しかし人間は弱い生き物です。成果を出さねばならないプレッシャーなどが人の心を歪めてしまうことは残念ながらありえます。

重要なことは、そういったことが起こらない体制を整えることです。組織としてガバナンスを確立することに合わせ、研究者個人のレベルでも透明性を高めておくことが重要です。

組織として不正を防止する手立てとして以下のような方法が考えられます。

  • 監査証跡を残せるEDCをデータ収集に用いる
  • 研究計画書・解析計画書の事前提出
  • セキュアなデータ保管のためのサイバースペースの確保(入退室管理などの物理的管理も含める)
  • モニタリング手順、データクリーニングのプロセス可視化
  • 解析プログラムのダブルチェック(別の共著者に実施してもらうなど)
  • 解析実施記録(またはログ)保管の義務化
  • 論文執筆時に剽窃防止のため英文校正前後で剽窃チェックツールを使用する

研究の種類によってはここまでの厳しさは要求されないでしょうが、これらの法規はどんどん厳しい方向に向かっています。できることからはじめてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

捏造・改ざん・盗用の三大御法度を防止するためにも研究用データの管理の一連のプロセスの可視化は非常に重要です。何より研究対象者のプライバシー保護のためにも個人情報保護の重要性はますます重要性を増しています。

研究登録はお済みですか?

9f9d2225992945fe1560f982a6713c1b_s介入を伴う研究は、対象者に身体的・心理的苦痛を与えうるのにもかかわらず、研究者にとって都合のよい結果しか公表されない可能性があり、それは倫理的に許されないだろうという機運が高まりました。その結果、介入を伴う研究実施に先だって臨床試験を登録する必要があります。今回はその臨床試験登録について説明します。

 

1.登録とは?

「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(医学系指針)には次の様に記載されています。

介入を行う研究について、国立大学附属病院長会議、一般財団法人日本医薬情報センター又は公益社団法人日本医師会が設置している公開データベースに、当該研究の概要をその実施に先立って登録し、研究計画書の変更及び研究の進捗に応じ て適宜更新しなければならず、また、研究を終了したときは、遅滞なく、当該研究の結果を登録しなければならない。(医学系指針 第9の1)

つまり、研究を実施する前に何らかの方法で研究を登録することが必要ということになります。どうしてこういうことが必要なのでしょうか?それは以下の様に記載されています。

介入を行う研究については、研究のために介入行為をするにもかかわらず、研究者等にとって都合のよい研究結果だけが公開されることを防ぐため、あらかじめ研究の概要を登録するとともに、研究過程における透明性を確保する観点から、進捗状況について登録する必要がある。(医学系指針ガイダンス 第9の1)

確かに、身体的精神的な苦痛を味わってまで行った研究が日の目を見なかったら、参加者としてはやるせないですね。それが倫理的に問題である、ということなのです。これは国際的にももちろんそのような流れがあります(【医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors: ICMJE), 2004)。

臨床試験登録が必要な理由は以下の3つを解決することです。

  1. 出版バイアス:いいとこ取りの研究結果だけが公表されないように
  2. 倫理的問題:折角痛い思いをしたのに…とならないように
  3. 参加者の募集の助けに:情報を公開することによりより多くの人に参加してもらえるようになります

事前に登録がされていない研究論文は雑誌に受理されないという流れになってきています。論文を投稿する際に、clinical trial registrationについて聞かれることが多いと思いますが、きちんとした基準を満たしたポータルサイトに登録しておくことが重要です。

 

2.登録が必要な研究

介入を要する研究は事前に登録することが必要ですが、逆に介入を伴わない観察研究では必ずしも登録を必要としません。

しかし注意したいのは、ここで言う「介入」は、疫学的な用語としての介入研究とは異なり、診断のための検査においても侵襲が加わりますので、診療ではなく研究を目的として侵襲を加えるような検査を行うことも含まれます

また、近年、臨床試験における研究不正が大きく問題になり、「臨床研究法」という新しい法律に基づいて実施するべき研究というのが別のカテゴリとして設定されました。この法律に則って行う研究を「特定臨床研究」と呼びますが、もちろん臨床試験登録が必要です。

この法律ができることによってかなり複雑な法整備の印象を与えることとなってしまいました。英文校正を依頼するときにこの「臨床研究法」とか「特定臨床研究」といった用語を理解して貰うのに少し手間取った経験があります。

 

製薬企業から資金の提供を受けて行われる臨床研究

研究の実施に必要な資金を、製薬企業から提供を受けて実施する場合がこれにあたります。

病院と製薬企業が契約を結び、提供を受ける研究費の金額や使用目的を明確にしたうえで、透明性を確保して行われます。

 

国内で“未承認”あるいは“適応外”の、医薬品等を用いて行われる臨床研究

新しい薬・機器・再生医療等製品は、国の承認を受けることで適応疾患に対して使えるようになります。

日本国内では承認されていない薬を“未承認薬”といい、ある疾患に対しては承認されているものの別の疾患への効能は承認されていない薬を“適応外薬”といいます。

未承認あるいは適応外の医薬品等を用いて、新しい治療法を確立するための臨床研究が行われる場合、この法律が適用されます。

そして登録は事前にないと無効で、登録は研究開始前、すなわち最初の対象者に接するまでに行うことが要求されますので注意が必要です。

 

3.登録先

医学系指針が適用される研究の登録先は、以下の様なものが知られています。

日本:

アメリカ:

特定臨床研究の場合には、jRCT (Japan Registry of Clinical Trials) というところに登録することが必要となります。

 

登録の具体的な方法としては、いずれのサイトもまずはアカウントを開く必要があります。そしてそれぞれのサイトのガイダンスに従って登録していきます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。臨床試験登録は何らかの介入が被験者に対して実施されるときに適用されます。このとき最初の症例が登録される前に試験を登録しておかなければなりませんので注意が必要です。