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論文を書くための”心得”について

論文を書くための”心得”について

1927_42論文のドラフトをチェックしたりする職位にある方は共通して感じておられることかもしれませんが、論旨の一貫性をそっちのけで凝った表現やレトリックにこだわっているなあ、と思わせる文章を書いてしまう人を時々見かけることがあります。

研究論文をどのように書けばよいか、もう一度原点に立ち返ってみたいと思います。

 

1.論文は情報伝達の手段

論文が存在する理由は、研究結果や文献のレビューなどの情報を正しく伝えることです。そのためには論旨、つまり「何が言いたいか」がはっきりしていて、それが一貫性を持っていることが重要です。

しかし単なる結果の報告書とは異なります。研究を実施した結果と自分の考察を区別し、客観的に自分の考察・仮説の証明を行うことが論文の大事な役割です。有意な結果の羅列ではありません。

 

2.明快な文章で書くこと

読者の立場に立って書くことが論文執筆においては重要です。そのためには,日頃から論文を読むときに書き手の立場で読むとよいでしょう。明快な文章で書くための鍵となるのは、「明瞭さ」「簡潔さ」「一貫性」「事実と解釈の区分」です。

 

明瞭さ

言いたいことが誤解なく効率よく伝わるような文章を書くことが重要です。執筆開始時に伝えたい情報の一つ一つを箇条書きにして明確な短い文章にまとめてみましょう。

このとき、文章が一義的に伝わること、つまり二通りの意味に取られないこと、主語と述語がきちんと対応していること、代名詞や関係代名詞が何を指しているかが明確であること、に注意しながら記載していきます。文章を書き終えた後に確認するときにもこの観点でチェックするようにするとよいでしょう。

そしてパラグラフの先頭に最も重要なことを述べ、そのあとに補足説明を加えるというスタイルで書くことを心がけてください。日本語の文章ではしばしば長々とした説明のあとに主張が来てしまいがちです。

 

簡潔さ

冗長な表現,あいまいな表現,不正確な言い方を避けて、なるべく定量的な表現を行うように心がけましょう。そして用語は統一しておき、逆に不要な語は理解が困難にならない範囲で削除してください。本質的でない情報があると混乱を招くばかりか、読み手のモチベーションを下げてしまいます。

 

一貫性

医学論文はPECO(Participants, Exposure, Comparison, Outcome)に分けて書くことが推奨されることが多いのですが、これは論文の骨格として非常に便利だからです。これを常に意識しながら書くだけで一貫性を保つことができるでしょう。論文中の随所にこのPECOは形を微妙に変えてたびたび現れてきます。

Introductionの最終段落は研究目的や仮説が記載されていますので、ここには必ずPECOが出現します。MethodsにはPECOの要素一つ一つの詳しい定義を記載しますし、結論もこのPECOに沿って記載されているはずです。

 

事実と解釈の明確な区分

これは多くの初学者が陥りやすいのですが、事実を述べるべきところで解釈が述べられてしまう、ということがあります。最終的に解釈を述べるのはDiscussionであって、Resultsのセクションにおいては事実のみを客観的に述べるようにしなければなりません。

しかし、最終的にDiscussionで議論する内容でない結果を載せてはいけません。すべての結果に解釈を与えることが重要です。どんなストーリーで論文を展開するかを考えた上で結果を並べていくことが重要なのです。

 

3.文学的な才能を評価されるわけではない

ここは肝に銘じておいていただきたいのですが、論文は小説やエッセイとは異なります。事実に基づいた考察を読み手に正確に伝えることこそが論文の目的です。

論旨がぶれなければ多少英語の表現が拙くても英文校正で何とか整えてくれます。逆に論旨が定まっていないと上手な英訳を充てることも難しいことがあります。正確に意図が伝わりにくいということはそれだけでも大きな問題なのです。

論文を書く際に必要な注意点である、「明瞭さ」「簡潔さ」「一貫性」「事実と解釈の区分」に十分注意しながら論文を執筆していくだけで最低限の論文の骨格はできあがります。英文校正に提出する前にその点が十分に満たされているか、もう一度よく確認しておくことが重要です。

そしてこれらのことは論文執筆のときだけではなく、普段の研究を実施する際にもきっと役に立つ考え方になるでしょう。