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研究目的を決定する

824517_s研究を実施するためには人・モノ・金が必要なのですが、きちんとした目的がなければどれも集まってきません。研究目的に沿って必要な人的リソース、研究環境、そして研究資金の分配を考えることになるからです。よく練られた研究計画の裏にはしっかりとした研究目的があります。そこで今回は、研究目的をどのように決めるのかについて説明してみたいと思います。

 

目的のない研究について

研究は、闇雲に手を動かしてデータを集めたり実験をしたりすれば結果がでる、などというものではありませんので、「目的のない研究」というのはそもそも存在しないはずです。

「有意差」がでたらOK?

しかし現実には、「データがあるからとにかくこれで解析してみて!」などと言われてよくわからないままデータとにらめっこしたりして、「有意差」がでたところで結果をまとめるといったプラクティスが横行しているのも事実です。

筆者はアメリカの大学に留学経験がありますが、研究を実施するためには最初に研究の背景、仮説、研究目的、研究方法、予想される結果などを記入するシートを記入してからでなければデータが出てこない仕組みでした。

ひるがえって日本の研究環境に目を向けてみると、もちろんきちんと手順を踏んで実施している研究室も多いですが、そうでない「出たとこ勝負」という研究が、残念ながら散見されます。そしてあまつさえ、論文中に目的が明確に記載されていないようなケースにさえ出くわします。

 

論文中に目的を書くべきところ

たいていの研究論文では、研究の目的は論文中のイントロダクション(緒言)部分の最終部分に明記されます。このことを意識するだけでも論文がピリっとしまりのあるものになりますので、こうしたことを意識してみるとよいかと思います。

そもそも緒言部分には、以下の様な論理構造が必要であることが多くの研究者・教育者によって提案されています。

  • 既知の事実
  • 未知の事実(これまでの研究で明らかにされてこなかったこと=フロンティア)
  • 目的(どうやってフロンティアを開拓するのか)

こうした構造にすべきである、と認識することも論文執筆の一助になることでしょう。これから論文を書き始める方にはぜひ意識して頂ければと思います。

 

研究目的を明確に決める

さて、目的が重要であることはわかって頂けたと思います。ではどうしたら研究目的をしっかりと書くことができるでしょうか?

最も重要なポイントは、疑問が何なのかをはっきりさせることです。そしてその疑問はできるだけ構造化するようにすることが肝心です。

 

疑問の構造化とは?

どんな人達を対象とするのか(Participants)、どんな介入(Intervention)あるいは曝露因子(Exposure)があるとそうでない人達(Comparison/Control)と比較してどんなアウトカム(Outcome)の発生に違いがでるのか、の頭文字を取ってPECOの要素が必要である、ということがよく言われます。

これが基本骨格であり、イントロダクションで目的を明示的に記載するように述べましたが、このPECOの形でまとめるようにするとよい、というのがとても重要なポイントの1つなのです。

PECOの形を認識すると、それぞれの定義を論文中で配置していく必要がありますので、自然とmaterials and methodsの部分が埋まることになります。また、イントロダクションでわかっていることを最初にまとめるように書いたわけですが、具体的にどんなことを書けばよいかというと、

  • Pという集団においてOの重要性
  • EやIの重要性

について述べていけばよい、という整理をするとぐっと論文が書きやすくなります。このようにきちんとした構造が根底にあると英文校正にだしたときにも校正者に意図が伝わりやすくなるため、意図した文章になることが期待できるでしょう。

 

PECOの裏にある仮説

「きっとこうなるはずだ」、という結論的なものが仮説です。研究の目的、特に研究計画書や競争的研究費獲得に際しては重要な要素です。新しい事実を見つけ、それを社会に役立てることが研究の目的です。

研究をビルに例えるならば、倫理的な問題や、研究環境や人的資源が土台になります。そしてビルの高さを決めるのは仮説です。それだけ重要な仮説の部分がすっかりと抜け落ちた計画書、研究費獲得の申請書、論文は魅力が感じられることは残念ながらほとんどありません。

その仮説を得るのは知識や経験に裏打ちされますが、日頃から問題意識をいかに持つかが重要です。他の人には何てこと無い出来事から学ぶ人・学ばないで日々過ぎていく人との違いはまさにそこです。

 

まとめ

よい研究を実施するためには、しっかりとした目的を持たせることが重要であること、理解していただけたでしょうか?「しっかりとした目的」を持つための鍵は、解決すべき疑問を認識することと、日頃から問題意識を持つことでした。そして疑問をPECOで構造化する意識を持つとその後の流れはスムーズになることでしょう。

欲しい論文の入手方法をお教えします

先行研究をしっかりと調べることは研究手法を学んだり、既知・未知の情報を整理したりする上で必要不可欠です。2252872_sそして、Pubmedで調べるにしても孫引きで調べるにしても本文を入手することが基本となります。どのように文献を入手することができるのか、整理してみましょう。

 

1.オンライン経由での入手

まず、もっとも簡単な入手方法はインターネットを介した方法です。オープンアクセスの雑誌ではもちろん本文、図表に至るまですべて無料で見ることができます。また、公的資金や製薬スポンサーにより援助を受けている研究でも通常は非オープンアクセスの雑誌でオープンアクセスオプションを利用して掲載される場合がありますので、そういったものも無料で入手可能です。

また、職場である医療機関や大学院・研究所などに所属して研究する人達は、アクセスする場所は敷地内のみとなることもありますが、契約する雑誌の論文を入手できる場合があります。所属する組織がどんな雑誌と契約しているのかを確認しておくとよいでしょう。

 

2.図書館で入手

所属する機関の図書館が保有する蔵書にあれば複写などを自由にとることができます。(コピー代は別途かかります)なので、まずは自身の所属する機関の図書館サービスを確認することをお勧めします。

その場合はオンライン版も契約していることがありますので、PDFで入手したい場合にはそちらも併せて確認が必要です。

 

3.図書館に論文がない場合の入手方法

仮に所属の図書館に論文がない場合でも、ほかの組織に融通してもらったりすることはできます。

1)相互貸し出しシステム

CiNii(NII学術情報ナビゲータ[サイニィ])という、論文、図書・雑誌や博士論文などの学術情報で検索できるデータベース・サービスがあります。このサイトでは他の機関で保有する雑誌の情報を確認できます。

あるいは国立国会図書館に利用登録をすると、1週間程度で申請許可がおりますので、そこから複写の申し込みや貸し出しサービスを受けることができます。

なお、こうしたシステムに関する情報は機関の図書館がアナウンスしている場合がありますのでご確認しておくことをお勧めします。場合によっては図書館を通じて他機関に複写を送ってもらったりすることができる場合がありますので、それも併せて確認するとよいでしょう。

 2)オンライン購入

こちらが王道なのかもしれませんが、記事を一つ読むために1部につき数千円を支払うことになります。今後その雑誌からいくつもの論文を購入するなどの予定がある場合には、定期購読をするのも一つの方法でしょう。

いくつかメジャーなところで言えば、医学中央雑誌刊行会、国立研究開発法人科学技術振興機構などでは申し込めば有料で複写サービスを受けることができます。他にも有料で文献の複写を入手してくれる業者がいくつかありますので、インターネットなどでご確認ください。

3)別刷り請求(著者に持っている論文を送ってもらう)

恐らくこれは一昔前には頻繁に行われていたと思いますが、最近では別刷り印刷をやり取りする機会はめっきり減ってきていると思われます。

 

まとめ

論文の入手には冒頭で述べたように、研究手法を学んだり、既知・未知の情報を整理したりする上で必要不可欠です。自分の論文で使える表現をストックしたりするのにも役立ちます。もちろん、実際の論文に書くときには「盗用」とならないように細心の注意を払いつつ、英文校正を実施して洗練された文章に仕上げていくことが重要であることは言うまでもありません。

過去の関連論文を読み終えている必要性について

2252872_s研究を行い、論文を執筆、投稿して出版という一連の流れの中で、一番初めに行うことである「研究課題の発案」に際して、過去の関連する論文をしっかりと読み込んでおくことは非常に重要です。今回は、研究実施前に論文を網羅的に調べて読むことについて説明したいと思います。

 

1.論文チェックは研究前にしよう

 研究の目的は、一言で言えば、フロンティアの開拓です。つまり、これまでにわかっていることとまだわかっていないことの境界線を少しずつ広げていく活動なのです。

この、「わかっていることとわかっていないことの境界線」を見定めるのに絶対的に必要な行為があります。

それは、文献の網羅的検索です。

このように文献検索は研究を開始する前に必ず実施することが肝心です。すでに別の研究者や研究グループが発見した事実をなぞるような研究をしてしまうと、せっかく苦労して行った研究結果のインパクトを毀損してしまいます。

二番煎じというのはいつの時代も、どんな領域でも、憂き目を見るものなのです。

ただし、これにも一つだけ例外があります。それは、過去の論文の方法が完全ではなく、よりよい方法で行うことができる、より大きな規模で行える、という見込みが立つときです。

こうした”付け入る隙”を見つけることも文献検索の大きな意義だったりします。

 

2.膨大な論文から何を選択するのか?

 さて、網羅的文献検索が必要であることは既に述べました。

言うのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいものです。文献の検索に当たっては、世界中の論文を検索するのにはPubmedを、日本語の文献を検索するのには医中誌などを活用することが多いと思います。

Pubmedでは、3000万以上の文献・書籍を検索できるため、何を選択するか、そしてどのように検索をするのか、ということが非常に重要な課題になります。

何を選択するか、という部分については前述のように、これから自分が実行しようとしている研究内容についてのフロンティアを知ることがまずは大事です。しかし、実際に研究を実施する上では、これまでにわかっていることの積み上げである、という意識を持つことが大事です。研究の構成要素を文献から引用するのです。

例えば、血圧と予後のことを研究しようとすると、血圧の測定方法、測定のタイミング、これまでによく使われている血圧の基準値、カテゴリー、そして予後であればどのような予後を定義するべきなのか、ということについて詳しく知る必要があります。「予後」と一言で言っても、それは「すべての原因による死亡」なのか、「心血管疾患の発症」なのか、「心血管疾患による死亡」なのか、そもそも「心血管疾患」とはどのように定義すべきなのか、などといったことを決める必要があります。

現実的なリソースからどんな情報を入手できるのか、ということも研究実施可能性(feasibility)を考える上で非常に重要ですので、現実的な研究計画立案段階において可能な曝露因子やアウトカムの定義をリストアップしておくこと、それの根拠となるような論文を調べておくこと、というのが重要です。

 

3.文献検索

 どのように文献を検索するかについてですが、上記のように調べる目的を明確化したら、それにまつわるキーワードを整理しましょう。このとき、①対象となる母集団、②曝露因子、③アウトカムをキーワードとして羅列していくようにしましょう。

血圧と予後をみる、といっても成人と小児なのか、妊産婦なのかで全く異なります。また、住民コホートなのか、疾患コホートなのかも異なる集団を見ることになります。

また、曝露因子も先ほどの例でいえば、収縮期血圧なのか拡張期血圧なのか、平均血圧なのか、脈圧なのか、24時間血圧の変動パターンをみるのかによって異なります。

そして、網羅的に検索するためにはPubmedの中ではMeSH term(注)のみでなく、できるだけ考えられる用語を羅列して入れると拾い上げられる可能性が高まります。(その分不要な論文も一緒に引っかかってきてしまうのでバランスを取るのが難しいのですが…)

注) MeSH(メッシュ)はMedical Subject Headingsの略で、アメリカの国立医学図書館が、索引誌(Index Medicus)の見出し語として60年前に作成し、その後MEDLINEデータベースのシソーラスとして利用されるようになったものです。毎年改訂されています。シソーラスとは、さまざまな医学用語をできるだけ統一して使えるようにまとめられた用語集のことを指します。

 

4.孫引き

 丁寧にPubmedだけを調べていくのを正攻法とするなら、少し裏技的な方法をご紹介します。

関連する重要な論文をじっくり読んで、そこに引用されている文献を孫引きすることもよく行われる論文収集の方法です。

特に読むべきなのはその道の第一人者の書いた総説(review article)や、high impactなジャーナルに掲載された論文のイントロダクションに載っている論文です。

 

5.まとめの作成

 こうして集めた文献をテーマ毎に整理し、それをまとめておくとよいでしょう。このまとめは研究内容のプレゼンテーションややがて作成する論文のイントロダクションにも使うことができます。

また、現在の問題をしっかり把握し、研究のフロンティアを認識しやすくなります。

できればそのときに気になる英語表現を拾い集めてくることをオススメします。そのままコピーしてすべて使う訳にはいきませんが、自然な言い回しがどんなものなのかを学ぶことができますし、英文校正に回す際にも余分な労力をかける必要がなくなります。

現時点でのわかっていることとわかっていないことの境界線を認識し、あなた自身の素晴らしい研究成果につながるようにしていきましょう。

「よい科学」をしましょう

言うまでもないことですが、医学領域における科学的によい科学とは、2152436_s臨床的に意味のある研究のことです。

それは研究計画の立案をするところから始まりますが、多くの場合は臨床をやっていく中でふと頭の中に浮かんでくるような疑問を解消するようなテーマであったり、自身の経験から導かれたある種の法則のようなものを証明するためのテーマであったりします。

近年「ビッグデータ解析」がもてはやされていますが、これはデータ駆動型研究といい、主に特定の仮説を設定せずに、大量のデータをある一定の方向性で分析することによって新しい仮説のタネを見つけることが目的です。

これに対して仮説駆動型研究というのは、仮説を検証することが目的です。一定の真理にたどり着くための道筋が異なるだけで、単純に善し悪しを比較することはできません。むしろこの仮説駆動型研究のほうが多くの臨床家にとっては興味深く、共感しやすく、そしてわかりやすい研究であったりします。

そこで、今回はこの仮説駆動型研究を中心に、どのように研究テーマを決めていくかを説明してみましょう。

 

第一段階:臨床的に意味のある研究を見つけ出す

1)研究のタネの見つけ方は、経験にあり

臨床を実際にやっている方であれば、自身の経験を元に探し出すのが最も近道であると言えます。

「この病気の患者さんたちって、いつもこうだよね」

という発見が研究につながるかもしれない、ということです。

経験から導かれた仮説というのは単なる思い込みということも多々あります。しかし、それを自分の経験だけにとどめてしまっては本当に正しいかどうかを知ることができません。そういった観点からも研究につなげることは意味があるのです。

また、仮説がはっきりしていないこともあります。特定の疾患の患者さんを集めてくると共通点がありそうだけど、それが何なのか言葉にできないような状況です。このような状況においても様々な情報を集めてくると共通点が見つかる可能性があります。こういったアプローチの仕方であっても立派な研究の動機となり得ます。

 

2)臨床上の必要度の高い、切迫した疑問

あなたが切実に疑問に思うことは、きっと世界中の他の誰かも同じように疑問に感じている可能性が高いでしょう。そしてそういった疑問は広く現場に還元される可能性が高いと思われます。

わかっていないなら自分で調べればいい!のです。

 

第二段階:研究テーマが解決されていないことを確かめる

折角思いついた仮説ですが、すでに誰かの手によって解決済みであることがあります。それならその解決した人の研究成果を参考にすればよいでしょう。しかし、果たしてその研究が完璧にその疑問の解決や仮設の検証に正しく結論を導けているのか、ということはしっかりと確認する必要があります。

1)文献検索は網羅的に

タイトルや結果の一部だけを見ただけではわからないかもしれません。また、その研究よりももっと素晴らしい研究デザインや解析手法を思いつくかもしれません。そこで、関連する文献集めをします。

一つの論文を書き上げて、参考文献リストを作ると、少なくとも20編、多ければ50編近くの論文を引用していると思います。しかしその文献リストに載らなかったその他の研究もまた、あなたの研究テーマを確認するために読んでおく必要のあったものが含まれていると思われます。

かなり大量の文献を読み込まねば研究を実施することはおぼつきませんので、研究をしようと思い立ったその日から文献集めを始めるとよいでしょう。もっと言えばその疑問を解消しようと思ったところから文献集めは始まっているのかもしれませんね。

文献検索はPubmedを用いることが多いと思われますが、できるだけ広めに用語(MeSH term以外も含めて)を検索することがよいですが、適切に絞り込みができていればそれほど労力をかけずに文献検索を実施できるようになります。

 

2)集めた文献は文献管理ソフトへ

今は文献管理ソフトがかなり充実しており、MendeleyやEndnoteなどが有名ですが、そういったツールを使って文献管理をするとそのまま論文に載せるための参考文献リストを自動的に生成してくれます。

また、ジャーナルのスタイルを選ぶこともできるため、投稿するための労力を最小限に抑えることができます。

 

第三段階:正しく美しい結果を示す

研究成果はテーマでほとんど決まるとはいえ、それを読者にとってわかりやすくまとめるということ、そして読者を不快にさせるようなケアレスミスを根絶することも「よい研究」を形作る重要なパートです。

適切な図表と正しい研究結果をまとめることは言うまでもなく重要です。

しかし、最終的にはいかに細部までこだわりをもって仕上げることができるかにかかっています。

 

「神は細部に宿る」

 

というフレーズはスティーブジョブズが使ったことで有名ですが、まさに最後は細部に神経を行き渡らせることが重要と考えます。

英語論文であればネイティブチェック、英文校正は最低限行う必要があります。

 

まとめ

さて、今回は「よい研究」をするための一つの方向性として、臨床現場からの仮説を元に研究テーマを考る、仮説駆動型研究ついて説明しました。

人によって「よい研究」の定義は異なるでしょうが、より多くの読者の注意を惹きつけ、多くの現場に役立つようなエビデンスを提供できる研究をする、という観点からの話でした。

そして折角よいテーマをみつけたなら論文を投稿する際に細部まで気を配りましょう。

西洋科学的な発想を持つことのススメ

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日本人とアメリカ人やヨーロッパ人との間の会話で、コミュニケーション上の大きな違いとして、結論を先に述べるか、長々と背景を説明した上で結論に到達するか、という違いがあります。

こうしたコミュニケーションの違いはアカデミックな世界にも反映され、国際共同研究で欧米の研究者とのやりとりをする際に問題になることがあります。またそれはコミュニケーションだけではなくプレゼンテーションや論文作成についても結論から述べていくスタイルが要求されます。

こうした文章の構成や順番が決まる背景には日本的発想と西洋的発想というのがありそうです。今回の記事ではこれらの違いについて述べていきたいと思います。

 

 

1.西洋的発想の科学→仮説の科学

「西洋的発想」とは書いていますが、現在のアカデミアの主流となっている思考様式と言えます。彼らには最初にストーリーがあります。そのストーリーというのはこれまでにその領域の科学が歩んできた道のりから必然的に導かれるものから、突飛なものまで様々なのですが、最初に到達点である仮説を呈示します。

この呈示された仮説は現在はまだ証明されていないものであり、実験や研究を実施することによって正しさが証明され、事実となる、という哲学に基づいています。

しかしこうした仮説に到達する方法は様々です。これまで築きあげられてきた科学的な事実に基づいて演繹的に到達するものや、断片的な実験結果や研究成果を元に帰納的に導き出されるものがあります。この仮説にたどり着くために鍵となるのは「適切な疑問を持つ」ことです。

すなわちそれは、現状が既存の理論体系で説明されないものに光を当てることで始まります。

オーストリア出身のイギリスの哲学者カール・ポパーは、科学の必要条件として「反証可能性」を挙げました。つまり、既存の科学理論というのは、「反証可能性を持つ仮説の集合体」である、という考えです。これが近現代の科学の飛躍的な発展を支えたと考えられています。

このように、現状が今の科学理論で説明されないことを認識し、それを適切な形で呈示、新たな理論の提唱、という形を取った上で研究を実施した、という体裁にすることが求められているのです。

現行の理論体系に挑戦するような科学的な発見をしていくことが真に科学の世界に貢献したと評価される世界なのです。

 

2.日本的発想の科学→テクノロジーの科学

上記の西洋的発想とは異なり、日本は目先の技術や小さな発見から徐々に積み上げていく、いわばボトムアップ方式といえるかもしれません。実際、そのようにして日々小さな発見をしていくことで大発見や大きな成果につながっていくのですが、西洋的な帰納法に近いのかもしれません。しかし彼らはあくまで「仮説」を立ててそれが当てはまるかを確認する作業を行っています。

昔から日本人は手先が器用といわれ、芸術作品への評価は世界的にも高かったと言えるでしょう。また、戦時下では下士官や兵卒が秀でていたこともよく知られています。その一方でリーダー層の評価がそれほど高くないといったことも無関係ではないかもしれません。

 

3.欧米の雑誌に投稿する場合

現在アカデミアの世界は西洋的発想が主流ですので、西洋式にあわせる必要があります。つまり、欧米系の雑誌へ投稿する際には彼らの発想に合わせて仮説を立ててそれを演繹するという流れがどうしても必要です。

しかしこれは決して我々日本人にできない話ではありません。ボトムアップ方式で帰納的に仮説を生成するところまで計画を練るという発想は、実は効率的に研究を実施する上で非常に役に立ちます。

また、論文を作成する上でも仮説を中心に書いていくことで思考が整理され、結論を先に述べるスタイルで文章を書いていくために文章を理解しやすいものにすることができます。

そして忘れてはいけないのは英文校正です。どうしても日本人である我々は結論に到達するまでに冗長な説明や文章構造になりがちです。こうした「クセ」を見破って自然な文章を書く上で、英文校正は大変協力な手助けとなります。

現行の理論体系に挑戦するような仮説を提唱し、その正しさを示して、皆さんの科学界における貢献を論文出版という形にしていきましょう。

論文の種類について

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論文には様々な種類があります。一般的に論文投稿といえば原著論文がすぐに思い浮かびますが、それ以外にも様々な論文のスタイルがあります。それぞれについて簡単に説明していきたいと思います。

タイプ別の論文について

巻頭辞(Editorial)は、現在話題になっている、あるいは今後大きく議論されるであろうトピックや研究に言及した短い巻頭の論文です。主に特定の専門分野に精通する人が執筆しますが、学術雑誌の編集者や専門家の寄稿などによります。巻頭辞(editorial)は、包括的な立場で問題に言及しており、その大きな問題意識の中で掲載された論文の内容や方法などについて言及します。

原著(Original article)は、一般的にはintroduction, methods, results, discussion (IMRD)の形式に則ってまとめられたもので、主に臨床研究と基礎研究に分かれます。最も一般的な論文形式であり、所謂論文といった場合にはこの形式を指すことが多いです。症例報告やケースシリーズと異なり、複数の患者データを一般化し、真理を導くことを目指した論文となります。

症例報告(Case report)は、単一あるいは複数の患者の病気の診断や治療経過を詳細に報告したものになります。原著論文が一般的な事実を導き出すことを目指した論文であるのに対し、症例報告は、それぞれの症例の特徴を詳細に記述し、一般的な事実になる前の仮説を提唱したり、特別な事例の発表を通じて一般化しきれない個別事象に光を当てることを目的としています。

レター(Letter to the editor)は、出版されたばかりの論文に対し、内容や方法に反論をしたり、あるいは似たような事例を引き合いに出して編集部に対して提出する手紙のような論文です。このレターに関しては、出版されたばかりの論文の内容を支持するような他の事例を引き合いに出したりすることも含まれています。

総説(Review)は、編集部からの依頼や著者からの持ち込みにより執筆がなされる形式の論文で、新しいデータについて扱うのではなく、一つのテーマについて過去に発表された情報をまとめた論文。執筆する人のストーリーに合わせて構成されるNarrative reviewと、一定の規則に則って文献検索をしてそれについてまとめたsystematic reviewとがあります。

パースペクティブ(Perspective)は、分野の基本的概念や周知の知見に対する学術的レビューを行う論文です。基本的には、分野に関する一般論への個人的見解を述べたエッセイのようなものです。対象とする概念は、単独のものでも関連する複数のものでも構いません。

意見(Opinion)は、特定の先行研究による解釈や分析、メソッドに対して意見を述べます。先行研究の理論や仮説の強み、また欠点などを指摘します。このタイプの論文では、エビデンスに基づいた建設的な批評を行うのが一般的です。このような論文の存在によって、科学関連の問題に対する議論が活発になります。

コメンタリー(Commentary)は、既存の論文、書籍、レポートに注目を集めたり批評を加えたりするための小論文です。対象とする論文・書籍・レポートの興味深い点や、読むことでどのようなメリットがあるかを説明します。

書評(Book Reviews)は、そのジャーナルの読者層が興味を持ちそうな文献の書評のことです。一つの本や文献について扱うこともあれば、あるいは一つのテーマについていくつかの本をまとめて、それについて評論することもできます。雑誌編集部からの求めの場合にはあらかじめ指定された論文に基づいてかく場合もあります。

学会論文・抄録(Conference paper・Abstract)は一般的には学会発表のための抄録を指しますが、中には非常に採択率の低い場合があり、その場合には論文に匹敵するほどの評価を得る場合もあります。

訂正・撤回(Erratum・Retraction)は、論文の内容に誤りがあったとき発表するものです。訂正(erratum)は、正誤表のようなもので、論文の結果に影響を及ぼさない、些細ではあるものの重要なミスや見落としを、単純に訂正する場合に用いられます。正誤表は、誤りを正直に申告するものですが、すべての誤りが対象となるわけではありません。重要性が高いとはみなされないものもあるからです。例えば、重要度の低い単語の綴りのミスや、参考文献リストの誤りなどには、正誤表は適用されません。撤回(retraction)は、不正行為あるいは悪意はなくとも重大な誤りの結果として、研究の信頼性が疑われることになった場合に行われます。その結果として論文は撤回され、論文の内容は無効とされます。他の出版物からの引用許諾を得ていない論文や、非倫理的な研究とみなされた場合についても、撤回という形で処理されます。なお、論文を撤回する場合にはその理由も述べられます。

最後に

原著論文や症例報告などは多くの方が経験済みか、あるいはこれから投稿するところである可能性が高いと思います。しかし、review, perspective, opinion, commentaryなどの論文を書くには、分野への深い理解が必要です。自分に十分な知識が備わっていると判断できたなら、ぜひ執筆に挑戦してみるのはいかがでしょうか。

その際には英文校正が重要なステップになると思います。

雑誌の種類を把握しておこう

医学は専門分化が進み、様々な分野に及んでいます。それぞれの分野について、国内外問わず多くの種類の医学雑誌が刊行されています。米国のNational Library of Medicineの文献データベースであるPubmedからは、2020年現在、約30,000ものジャーナルから論文を検索可能です。基礎研究に特化したものから臨床研究に比重の置かれた雑誌に至るまで様々な論文を目にすることができます。

一方、国内の代表的な文献データベースである医学中央雑誌刊行会(医中誌)の検索画面からは国内の雑誌を中心として約7,500もの雑誌にアクセスできます。このデータベースには、学術雑誌だけでなく多くの商業雑誌も含まれています。
今回は、基礎研究・臨床研究別の雑誌の種類とともに学術誌・商業誌の違いについて説明していきます。

 

基礎研究 と 臨床研究

まずは世界五大医学雑誌と呼ばれる以下の論文は基礎研究も臨床研究も掲載されますが、臨床研究の記事を多く掲載しています。

  1. 『New England Journal of Medicine』 – マサチューセッツ内科外科学会が発行
  2. 『The Lancet』
  3. 『JAMA (Journal of the American Medical Association) 』 – 米国医師会が発行
  4. 『BMJ (British Medical Journal)』 – 英国医師会が発行
  5. 『Annals of Internal Medicine』 – 米国内科学会が発行

これらは分野を問わず掲載する総合誌になりますが、各分野のトップジャーナルとされるもの(『Blood』(造血器疾患)や『Circulation』(循環器疾患)など)が後に続く形になります。各分野のトップジャーナルは該当する学問分野と共に”journal”, “ranking”などと検索するとでてきます。するとimpact factorなどのcitationの基準の順に並んだリストを見ることができるでしょう。
是非はあるものの、impact factorを基準にジャーナルの価値判断がなされる風潮は未だ強く、上位の雑誌に掲載されることを目指して多くの研究者達は日夜研究に励んでいます。

これに対して、基礎研究は他の様々な分野と競いながら受理を勝ち取ることになりますが、『Nature』、『Science』、『Cell』を初めとして色々なレベルのラインナップが続きます。特に前2者は分子生物学に留まらず、物理学などの他分野も載りますので、より一層厳しい戦いになります。

また、Nature誌は姉妹紙として『Nature Medicine』、『Nature Genetics』、『Nature Methods』、『Nature Communications』などがありますが、いずれも一流誌と呼ばれます。
かつては基礎研究を中心に掲載する雑誌がhigh impactとされていましたが、New England Journal of Medicineを初めとする臨床系雑誌のが近年ではimpact factorが高い傾向にあります。

そしてこれらの有名医学雑誌は英語によって書かれていますので、英語が第二言語である我々日本人としては英文校正を適切に利用して正しい文章を書くようにしなければなりません。こうした一流誌では英文校正を経ない文章は門前払いを食らう可能性が高いです。

 

学術誌 と 商業誌

上記の雑誌は、「査読」というプロセスを経て出版に至ります。このとき査読の役割を担うのは同じ分野で研究をする他の研究者です。現場で働く人ももちろんですが、アカデミアに所属する多くの研究者は、まず学術誌への投稿を目指して研究を行うことが多いでしょう。

実際、博士などの学位を取得する際には査読付き学術誌の受理をもって審査対象となることがほとんどです。また、これらは学会が主体となって刊行している事も多く、学術界でのプレゼンスを高めるためには非常に重要な位置づけとなっています。

これに対して、多くの商業雑誌は、この査読のプロセスを経ることなく出版されます。厳密な意味での学術的公平性は査読を経る方が高いと考えられますが、商業雑誌にも数多くの利点があります。

  1. 専門家の監修に基づき、そのときのトレンドとなるテーマに沿ってまとめられている
  2. その道の専門家による叡智が学べる (Expert opinionの宝庫)
  3. 特に国内の実情を確認できる

しかし、次のような欠点もあり、注意が必要です。

  1. 異なる立場の専門家による監修が行われないために偏った内容になる可能性がある
  2. 研究方法の妥当性、信頼性が担保されにくい
  3. 世界標準から逸脱している可能性がある

これらの欠点は、利点として挙げたポイントを裏からみた評価になります。つまり査読の有無にかかわらず、その雑誌をどのように活用するかは読み手にかかっている、ということもできるかと思います。

 

まとめ

今回の記事では、医学雑誌の中の臨床・基礎研究に分けて主要な雑誌を紹介し、学術誌・商業誌の利点や欠点、使い分けについてまとめました。

近年では臨床系の学術誌のインパクトが増しており、そして総合誌の他に分野毎にジャーナルがいくつも存在しています。また、商業誌の利点・欠点を正しく理解し、そして正しく利用することが大事です。

覚えておきたい論文掲載の仕組み

実情

一口に医学雑誌といっても商用雑誌から学術雑誌に至るまで様々です。一般的にアカデミックな成果いう意味では、査読付きの学術雑誌に掲載されることが評価対象とされることが多いのですが、商業雑誌の価値が全くないという訳でもありません。今回は、査読という観点で医学雑誌を改めて分類し、その違いを説明しながら論文掲載に至る仕組みについて解説します。

そもそも査読とはなんでしょうか?
Peer reviewとも言われるこのプロセスは、論文を雑誌に掲載するかを決定する上で非常に大きな役割を果たします。なぜなら、その学問分野の専門家による評価が行われるからです。ある論文がジャーナルに掲載される価値があるかどうか、編集者が決定するのに役立っています。研究内容が世の中に与えうるインパクト、研究の質、結果の信頼性などを総合的に評価してジャーナルに採択されるわけです。 

ではまず、この査読プロセスを経ない雑誌について、その違いを見てみましょう。

 

非査読雑誌の代表、商業雑誌について

査読プロセスを経ることのない雑誌、多くは商業雑誌と呼ばれるものですが、これはその道の専門家による総説(narrative reviewと言われるもの)や特集などに合わせて代表となる専門家が、関係者にアナウンスして記事を寄せてもらったりすることが多いです。
この商業雑誌のよいところは、

  1. 専門家の監修のもとに読者が興味を持ちそうなテーマに沿ってまとめられている
  2. 必ずしもエビデンスベースではないにしても、その道の専門家による叡智が学べる
  3. 特に国内の実情に合わせたトレンドを確認できる

こうした点で商業雑誌も十分読み応えがあると言えます。しかし、その反面、次のような欠点もあります。

  1. 異なる立場の専門家による監修が行われないために偏った内容になる可能性がある
  2. 研究方法の妥当性、信頼性が担保されにくい
  3. 世界標準からかけ離れた内容になっている可能性がある

お気づきのように、これらは利点として挙げたポイントを別の見方でみた評価になります。つまりは査読の有無にかかわらず、その雑誌をどのように活用するかは読み手にかかっている、という見方もできるかと思います。
そして査読を要する医学雑誌の大半は今や英語によって書かれています。当然ながら母国語でない我々日本人にとっては英文校正を駆使して正しい文章を書くように心がけねばなりません。論文投稿規定にもそのように書かれていることがスタンダードです。

 

なぜ査読制度があるのか

査読の有無にかかわらず、読み手がその利用方法を考えるべきである、という一方で、やはり査読という手間のかかる工程を経るにはそれなりの理由があるからです。
一体どうして、査読制度というものがあるのでしょうか?

もともとは、投稿された論文は雑誌編集者によって掲載の可否が判断されていました。しかし、学問分野の専門分化が進み、論文数が増加するなかで、論文の選別の段階において各分野の専門家に関わってもらう必要が出てきたのです。しかしあくまで査読者は、研究の質については批評的に評価するだけであって、論文を最終的にアクセプトするか否かは、雑誌の編集者が判断するということです。

 

査読の方法

どのような査読が行われているかは、ジャーナルによって様々です。

  1. シングルブラインド:著者は誰が査読者かわからないが、査読者は誰が著者かわかっている
  2. ダブルブラインド:著者は誰が査読者かわからず、査読者も誰が著者かわからない
  3. オープン・ピアレビュー:著者、査読者とも相手が誰かわかる

などがよく知られていますが、時に出版後に査読することがあります。いずれにしても、査読の主たる目的は、研究の妥当性を確認し、その論文が科学的なインパクトを持つことを確認することです。

 

査読の問題点

査読のプロセスも完璧なものではありません。出版までに時間がかかる、査読者の個人的な意見により影響される、盗用(アイディア、内容、文章、グラフィックデザインなどを含む)の可能性がある、利益相反の恐れがあるといった問題点が指摘されています。また、査読自体は通常、研究者による善意かつ無償で行われるにもかかわらず、その手間や労力は無視できません。査読が無料で行われるべきものかという点で、研究者の見解は様々です。

 

まとめ

今回の記事では、医学雑誌の中の査読・非査読雑誌の利点欠点や使い分けとともに査読プロセスの現状と問題点についてまとめました。

査読は様々な問題点が指摘されてはいるものの、科学的な妥当性や信頼性を担保する最も強力な方法です。 
その一方で、査読のない商業雑誌も一定の利用価値を持つため、その利点と欠点を理解して利用するようにすることが大切です。

論文の雑誌掲載の実情について

実情

研究成果を残すという意味で、論文は最終的な目標地点になりますが、すべての研究論文が無事に受理されるわけではありません.

研究の世の中に対するインパクト、研究そのものの質、結果の頑健性・信頼性などを総合的に評価してジャーナルに採択されるわけですが、それ以外にも掲載に至るまでのプロセスに時間がかかる場合があります.

すべての論文が出版されるわけではない、その理由を、ジャーナル側の実情に合わせて述べていきたいと思います.

 

なぜ全ての論文が出版されないのか?

論文が出版にこぎつけるまでに、

  1. 編集部におけるチェック
  2. 査読
  3. 出版プロセス

の過程を経る必要があります. 編集部によるチェックでふるい落とされるものがかなり多いのが実情で、トップジャーナルでは3分の1程度(あるいはそれ以下)しか査読に回らないとも言われます.

また、編集部による確認を終えた後にも査読者がなかなか見つからないなどの問題があり、時間がかかります.

査読に回ったあとにも厳しいジャッジを受けます. 一流の雑誌であるNatureでは採択率は5%以下と言われています.

論文に掲載されない理由としては、論文も多すぎれば質を損ねる、ということがあると思われます. ジャーナル側としてはインパクトファクターを上げたいと考えていますので、出版後の2年間での被引用数が期待できないような、話題性の乏しい研究は採択率がどうしても下がりがちです.

つまり、論文出版に至る労力と、出版後の研究論文自体のインパクト(=購読者の増加に直結)によって数がある程度制限されてしまう、ということになります.

また、数が多すぎてしまうことで紙媒体のジャーナルは「印刷」という負荷を強いられることになります. このことも数を制限する理由の1つになりますが、eJournal、Open accessのオンライン出版に関してはこの点をクリアできることになります. Open accessの出版に関して障壁になるのは適切な査読者を無事に見つけることが困難になってきていることが原因と言われています.

実際、Open accessでは比較的歴史のある、とあるジャーナルに投稿した際、「2ヶ月で出版に至る」、といううたい文句であったにもかかわらず、2ヶ月経っても査読者を見つけることができなかった、ということがありました.

 

雑誌容量の限界

Open accessではあまり気にされることのない、雑誌容量ですが、冊子体になると話は別です.

ここには厳しい制限があります. あるジャーナルでは週に1冊発行しているのに対し、別のジャーナルでは2~3ヶ月に1冊発行している、といった具合に、ジャーナルによって発行頻度は異なりますが、冊子を手にしたときに掲載されている論文数を見れば自ずとその雑誌が処理できる論文数は限りがあることがわかるでしょう.

 

あなたの研究を掲載に至らせるために

このように、ジャーナル側の都合によっても掲載の上限がある程度決まってしまう、という現状の中で、いかにして論文を掲載してもらえるようになるか、というのは非常に重要な課題です.

日本の研究業績が世界からみて徐々にその順位を下げてきています. 対照的に中国が論文数、研究へのインパクトともに急激にそのプレゼンスを上げてきています.

研究に莫大な資金を投入し、研究者には論文出版に対するインセンティブを与えています. また、広大な国土、非常に多くの人口を抱えていることで研究対象者を容易に集めることができるなどという点からも今後もますますその存在感を増すことでしょう.

では我々に何ができるか. 日本人の緻密で丁寧な仕事には依然として高い評価を受けている印象があります. 自分達の研究の重要性を存分にアピールすることも重要です.

論文を投稿する際に添付するCover letterには自分の研究について簡潔・端的にアピールすることを許されています.

ここを疎かにしない、というのが1つのやり方です. 論文本文だけではなく、Cover letterにも力を注ぐこと、そしてできあがった文章に対して英文校正を行って読み手に不信感を抱かせないこと、ということも非常に重要です.

 

まとめ

今回の記事では、論文が掲載されないことの理由として、ジャーナル側の舞台裏から説明していきました.

ジャーナル側の門戸を通過するのに制限があるならば、自分の研究の重要性をしっかりと主張することが重要です.

入念な推敲と英文校正であなたの論文をアクセプトさせましょう.

研究、論文不正への対処

不正

あってはならないことではありますが、しかし研究を実施する人間は必ず肝に銘じておかねばならないことがあります。
それは、「研究不正」です。
故意に実行してしまう場合もあれば、全くの不注意でそのような事態に陥ることだってあり得ます。本項では、「研究不正」という落とし穴にいかにはまらないようにするためにどのような対策をとるべきかについて、考えてみたいと思います。

 

「研究不正」という名の落とし穴

「研究不正」

そう聞いて自分のこととして耳を傾けようとする人はそんなに多くないと思います。
人はみな、「自分は大丈夫」という根拠の希薄な自信を抱いているからです。自分は平均的な科学者であり、立身出世の欲も人並み、研究成果も人並みに出ればよい。
そう思っている人に対しても、この「研究不正」の落とし穴は待ち構えているのです。

例えばこんなケースを想像してみてください。

  1. 研究計画書を作成して倫理委員会に申請しないままに臨床研究を実施した
  2. 対象者からの同意書を保管していたがどこにあるかわからない
  3. 研究実施承認書が倫理委員会から発行されたことを認識していない
  4. 同じような内容の論文を別々のジャーナルに投稿した
  5. 利益相反に関する申告書類をここ数年ずっと更新していない

 

これらは直ちに重大な事が生じる訳ではないが、いつか手痛い仕打ちを受けることになる可能性のある行為をリストアップしています。
上記の状態に陥っていることを自覚しているならば、ただちに手立てを講じるべきです。

日本学術会議・科学倫理検討委員会(2009年)によれば以下の11項目が我が国で報告される研究不正の主なケースとのことです。

  1. データのねつ造
  2. データの改ざん(矛盾データの恣意的削除)
  3. 研究成果やアイデアの盗用、論文の剽窃
  4. 不適正なオーサーシップ
  5. 個人情報の不適切な扱い、プライパシーの侵害
  6. 研究資金の不正使用
  7. 論文の多重投稿
  8. 研究成果の紹介や研究費申請における過大表現
  9. 研究環境でのハラスメント
  10. 研究資金提供者の圧力による、研究方法や成果の変更
  11. 利益相反

うっかりでは済まされないのが研究不正です。研究計画書の申請書類一式、倫理委員会からの研究実施承認書、対象者からの同意書などの重要書類をしっかり管理することです。
研究テーマごとにフォルダを作成して鍵のかかるラックなどに入れて厳重に保管することが大切です。
特に個人情報を含むような書類の保管には細心の注意を払うべきです。

 

論文不正の「ネカト」

論文不正の中でも最もよく知られているものの頭文字を取っています。

それはすなわち、捏造(fabrication)・改ざん(falsification)・盗用(plagiarism)です。
英語の頭文字をとってFFPと呼ばれる事もあります。
前述の11項目のトップ3にあたりますが、ここでどういった意味なのか確認為ておきましょう。

  1. 捏造:事実でない事を事実のようにこしらえること。
  2. 改ざん:字句などを改めなおすこと。多く不当に改める場合に用いられる。
  3. 盗用:

このうち、論文作成時に不注意でやってしまう可能性があるのが「盗用」です。

 

わざとではないにしても

学術研究の公表をするに当たっては適切な参考文献の表示は必須です。しかしこのことと盗用あるいは剽窃は区別しなければいけません。
問題なのは「意図せぬ」盗用・剽窃です。
特に、英語を母国語としない研究者はなおさら注意が必要です。なぜなら、英語で書き記すのにうまく表現できないと、つい参考文献の表現をまねたくなります。
「まね」が行きすぎればコピー&ペーストに近い形になるかもしれません。
それにたとえ剽窃の意図がなくとも、出版済みの文章をそのままコピーすれば剽窃にあたります。

IT技術の進歩により情報入手が容易になりました。今や研究者はインターネット上で、他者の資料やデータを簡単に閲覧できるようになりました。
それが盗用・剽窃という行為を容易たらしめているとも言えます。

それは例え剽窃の意図がなかったとしても、部分的に同じ文章が出てきてしまう場合には盗用・剽窃と見なされ、学術界での皆さんの地位を脅かしてしまう可能性があるのです。
剽窃を簡単にチェックするツールが登場しましたので、論文投稿の前には必ず確認するようにするとよいでしょう。
また、剽窃の疑いあり、という判定が出た場合に似たような表現に変えたいとき、英文校正の業者にそのように要望として伝えると対応してくれます。

 

まとめ

このように研究不正とは、常に研究者のとなりにいるのです。故意にしても不注意にしてもこのようなことが明るみに出てしまえば研究者の輝かしい未来が台無しになってしまいます。
組織的に研究不正の対策に取り組んでいるCommittee on Publication Ethics (COPE)という団体があります。出版倫理のあらゆる局面、特に研究と出版の不正行為にどのように対処するべきかについての助言を提供し、また、会員向けに個々の事例を話し合うフォーラムも開催しています。興味がある方はWebsiteを覗いてみてはいかがでしょうか。