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別刷り請求とオープンアクセスで気をつけなければいけないこと

別刷り請求とオープンアクセスで気をつけなければいけないこと

4809747_l論文を書き上げたら、せっかくの成果ですから世の中の人に少しでも知ってもらいたいですね。そこで、自分の論文をどこまで共有できるのか、著作権に問題がないのか、について説明したいと思います。

 

1.別刷り請求とは

論文の「別刷り請求」とはいったい何でしょうか?

投稿した論文の出版が決まった後に、出版社に注文しておくと、自分の論文のページだけが印刷されたものを冊子として何部でも購入することができます。

これを「別刷り(offprint)」と呼びます。

大学や研究機関に所属している場合には論文を入手するのは比較的容易ですが、そうではない場合に、費用を抑えて本文を入手する方法としてこの「別刷り請求」という慣習があるのです。

具体的には、論文の著者の誰かに論文のコピーをくださいとお願いすることを指します。

かつてはこのように小冊子となった別刷りをわざわざ著者が注文しておいて別刷りをリクエストされたときに嬉々として送ったりしていました。

しかし昨今では電子媒体化が進んだことや電子メールの発達により、もともとの意味での別刷り請求ということはそれほど一般的ではなくなりました。代わりに著者への問い合わせに対してはPDF形式になった論文を電子メールで送付することが一般化してきました。

そうなると、電子化された媒体は無尽蔵に複製されてしまい得ます。そこで著作権についてよくよく知っておく必要があります。

オープンアクセスを除き、出版段階で著作権は出版社に移るのですが、別刷り請求はどのような場合に容認されるのでしょうか。

結論から述べれば、たいていのジャーナルは、一定の条件下で研究論文のシェアを認めています

大手出版社では、著者は自分のプレプリントをいつでもどこでもシェアすることが可能、としているところがあります。

ただし、すでに出版されている自身の論文に関しては、営利目的でない媒体(個人のホームページやブログ)でのみシェアが可能で、エンバーゴが適用されます(一定期間経過したら共有してよいということ)。

また、個人で利用するのであれば、自分が指導する学生や研究仲間に論文のコピーを配ってもよいとされています(必ず出版社の規定を確認してください!)。

ただし、もし、事前にジャーナルからの許可を求めることなく商業目的で自分の論文を配布した場合は、著作権の侵害とみなされます。

最終的な判断はジャーナルによりますので、「著作権の譲渡」の項目の規約と条件を熟読しておくことをお勧めします。

 

2.どのように別刷り請求をするのか?

直接論文の著者(多くは責任著者ですが、連絡先が明記されていますね)に連絡をとります。

単刀直入に、「あなたの論文のコピーをください」とリクエストするだけですので簡単ですね。

論文の著者としてはうれしくなりますので、別刷りを渡してあげたくなります。この場合は前述のようにプレプリントをお渡しすることになることが一般的でしょう。この時、論文を渡す側、つまり著者側が出版社の規定をよく読むことが重要です。親切心から論文コピーを渡した場合に著作権侵害とされてしまってはたまりませんのでしっかりと確認しましょう。

自分で書いた論文なのにもはや自分のものではなくなる、というのはなんだか変な気分になるかもしれませんが、そのように決まっていますので要注意です。

一方でオープンアクセスの場合にはいつでもどこでも共有可能です。そうでなければ高い金額を支払う意味がありませんので、当然と言えば当然なのですが。

 

3.オープンアクセスを使うに当たり必要なもの

ではオープンアクセスであれば著作権が気にならないので問題ないのか、と言えばすべてのジャーナルが健全であるとは限らないという点が最大の問題点です。いわゆる「ハゲタカジャーナル」というもので、悪質な出版社のことを指します。アカデミックなキャリアに傷がつくことや、高額な出版料の請求、論文撤回ができない、などの問題がでてきますので、雑誌選びは慎重に行うべきです。

ハゲタカジャーナルかどうかを100%明確に区別する方法はありません。しかし、以下のようなポイントに注意して雑誌の特徴を調べてもらうとよいかもしれません。

  • 当該分野における実績のある研究者が主体となった編集責任者や編集委員の名前が明記されているか?
  • 査読方法が明記されているか?
  • Web of Science, SCOPUS, DOAJなどの採録に審査があるデータベースに収録されているか?
  • COPE :Committee on Publication Ethics / 出版規範委員会や OASPA :Open Access Scholarly Publishers Association / オープンアクセス学術出版協会などの出版団体に属しているか?
  • 論文投稿料、請求のタイミングが明記されているか?
  • 雑誌の目的、対象分野やテーマが明記されているか?
  • 雑誌の対象分野や収録されている論文の分野が広すぎないか?
  • 同僚や該当分野の研究者によりその雑誌は広く認知されているか?
  • その雑誌に掲載されている論文の質は?
  • ウェブサイトや電子メールに住所が記載されているか、またその住所は実在するか?
  • 雑誌の名称やロゴが既存の団体や雑誌と似ていないか?
  • 雑誌の問い合わせ、編集者などが使用している電子メールドメイン(雑誌名や所属機関名がついているか?)

もちろんこれらの項目をすべて満たしていないからといって即ハゲタカジャーナルと断じることはできません。

 

まとめ

もともとの意味での別刷り請求は廃れつつありますが、電子媒体でのやり取りは続きます。著作権に注意を払いつつ自身の研究を広める努力をしていきましょう。オープンアクセスは著作権を気にしなくてもよい利点はありますが、ハゲタカジャーナルにはくれぐれもご注意ください。