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2019 10月

学会抄録の書き方について

学会報告や論文投稿の際に必ず必要になるのが抄録、つまりアブストラクトです。学術雑誌に論文を投稿する際は、査読者は抄録だけでなく論文本文も読むので採択する際の判断材料が多いですが、学会発表の際は学会抄録のみで採択を決めるため大変重要な存在です。今回の記事では、学会発表時に欠かせない、発表の顔とも言える学会抄録の書き方について詳述します。

 

学会抄録とは

学会抄録とは、一言でいうと研究内容を抜粋したものです。抄録は研究内容を決められた少ない文字数で論理的かつ明瞭に記述します。学会で研究の発表を行いたい場合、研究者はこの学会抄録を提出しなければなりません。学術雑誌では抄録と論文の両方を投稿するので掲載の判断材料は論文そのもののであるのに対し、学会発表では論文を提出することはまずないので、この学会抄録のみが評価材料になります。つまり、質の良い学会抄録が書けるかどうかによって、学会で発表させてもらえるかどうかが決まります。

学会抄録の構造

学会抄録の構成は基本的に決まっており、背景と目的、方法、結果、考察/結語から成り立っています。まず最初の「背景と目的」では、先行研究や自身の過去の研究などを言及し、研究の目的を新規性を明確に示しながら記述します。そして「方法」でソフトウェアなどを含む実際に研究で用いた方法の説明を書きます。それから「結果」で研究によって得られた結果を客観的に数字とデータを見せて表し、「考察/結語」で研究のまとめを一貫性を持たせて書きます。学術論文の場合はジャーナルによってフォーマットの規定が決まっていますが、一般的に学会発表には指定されたフォーマットは存在しません。しかし文字数の制限や含まなければならない項目などは必ず守りましょう。

 

学会抄録の書き方における留意点

良い抄録の条件のひとつは、各項目が明確に分かれて書かれていることです。たとえば、方法と結果が同じ箇所で書かれてしまうと、査読者には非常にわかりにくい抄録となってしまいます。査読者は基本多忙な中で多数の抄録を読まなければならないので、情報がわかりやすくスムーズに入ってくるような抄録が望ましいです。次に目的が簡潔かつ明確に記載されており、新規性を示していることです。新しいテーマで研究の意義があるという点を示す必要があります。またひとつの発表につき研究目的はひとつが原則です。ひとつの発表にいくつもの目的を入れることのないよう、一番答えを出したいテーマだけを選びましょう。最後は抄録に一貫性があることです。時折抄録内で一貫性のないことが結語で書かれていたり、実際の研究とは関係のない項目が入っていたりするケースがあるようですが、それらの研究は信ぴょう性がないと判断されます。趣旨が一貫しているかどうかは常に意識しましょう。

そのほかにも、冗長な表現がないこと、客観的な数値やデータが示されていることも重要です。特に抄録は文字数に制限があるので、目的や研究背景では冗長にならないよう気をつけ、簡潔に研究目的を示し、方法では必須項目だけを挙げスムーズに結果につながるような構成を目指しましょう。結語も長々と書くのではなく、できるだけ一文でまとめると、明瞭かつ簡潔、そして趣旨の一貫性がある抄録に仕上がるでしょう。

英文校正時に再確認しておくポイント

学会抄録は文字数の制限があるため、できるだけ短い文章で明確に研究内容を記述する必要があり、それを英語で行うとなるとより大変な作業となります。抄録を書く際にはある程度決まった英語の言い回しがあるので、冗長な表現を避けるためにもいくつか覚えておくといいでしょう。まず、「目的」でよく使用される英文は、「The objective of this study was」や、「We aimed to analyze…」などの書き出しです。これほど明確に研究目的を表す表現はないでしょう。研究内容に合わせ、analyze, examine, measure, identify などの英単語を選びます。これらの英単語の選択を間違えてしまうと研究の趣旨が間違って伝わりますので、単語の選択も重要です。「方法」では研究で使用した方法、器具の名前、手順などを明確に提示します。「we conducted a qualitative…」などのようにどのような方法を用いたのかを最初に書きましょう。必要に応じて被験者の数や簡単な情報も併せて書きます。「結果」で研究により得たデータを3~6文程度でまとめます。ここで気を付けるのは時制です。研究はすでに終了しているので、かならず過去形を用いて書きます。Qualitative ResultsとQuantitative Results ではデータの提示表現が異なるので、英文での執筆に不慣れな人は注意が必要です。

抄録を書き終えたら、必ず英文校正を行います。まず自身で冗長な表現がないかの確認、正しい英単語が使用されているか、第三者が読んでも研究内容が明確かを徹底的に確認します。そして可能であれば専門家の英文校正者に校正を依頼しましょう。専門家が読むことで、客観的に研究内容が記述されているかの判断がつきやすくなります。明瞭な抄録執筆を目指し、是非とも学会での研究発表につなげていきましょう。

論文を投稿する際のルールについて

学術雑誌に論文が掲載されると、その実績が研究論文のデータベースに残り履歴書にも記載できることから、研究論文の執筆は研究者のキャリアアップにとって欠かせないことです。しかしいざ論文投稿に向けて研究計画書を書き、研究を行い、論文を投稿するとなると、目の前に立ちはだかる投稿規定の多さに愕然となるでしょう。今回の記事では、論文の投稿上のルールについてお話していきます。

 

投稿上のルールとは(禁止されていること等)

投稿上のルールには大きく分けて不正投稿と二重投稿があります。どちらも禁止されている事項ではありますが、論文著者はそれぞれの違いを認識しておく必要があります。

まず不正投稿ですが、正当性がなく倫理的問題がある投稿のことで著者のモラルが問われる問題です。よく取り上げられる不正投稿の項目を挙げてみましょう。まず一つ目は偽りのデータを使用すること、もしくは偽りと知りながらそのデータを使用して論文を投稿することです。二つ目は他人のデータを自身のオリジナルのデータとして取り扱うことです。その他にも研究に関わっていない者を著者として取り扱ったり、著作権に関する情報を偽ったりする行為などがあげられます。

次に二重投稿、もしくは多重投稿と呼ばれるものです。二重投稿とは既に他の雑誌に掲載された論文や、他の雑誌にも同時に同じ論文を投稿することです。ほとんどの学術雑誌の投稿規定では、特別な場合を除き二重投稿は認めておらず、他の雑誌に投稿されていないことを条件としています。ただし他の雑誌にリジェクトされた論文や、学会で発表する際に抄録だけを投稿した研究に関しては投稿することが認められています。二重投稿が原則禁止されている理由としては、二重に投稿された論文であると気づかずに多数の雑誌が同じ論文を掲載してしまう可能性があること、また論文を掲載する際の掲載権において雑誌間で争いが起こることが考えられるからです。

余剰出版について

余剰出版または重複出版とは、すでに雑誌などで掲載され出版された論文と基本的には同じ論文を出版することです。オリジナルと2つ目の論文ではタイトルが違ったり抄録が違ったりなど多少の違いは存在しても、研究内容や結果、考察などがほとんど変わらない、本質が同じ論文の出版もこれにあたります。

余剰出版がなぜ問題なのかというと、余剰出版は出版倫理違反につながるからです。まず第一に、学術雑誌に掲載された論文の著作権は著者ではなく雑誌にうつってしまいます。論文の著者には著作権がないので、他の雑誌で掲載する権利もなくなり、もし他の場所で投稿・出版しようとした場合には著作権侵害にあたってしまいます。

第二に、もし余剰出版されてしまうと、一つの研究内容が多方面で見られることになります。他の研究者は先行研究などの結果をもとに更なる研究を行ったり、治療方針を選択したりするので、他者の決定に大きく影響します。また同じ研究データがシステムなどで二重に計算される可能性があることから事実の歪曲が起こります。特に実証研究は国の政策にまで影響を与えるもので、データに誤りがあることは重大な問題になります。

そのほかにも、余剰出版によって起こる編集と査読の無駄、資源の無駄、競争率の激しい論文掲載の場のスペースを不正にとることと、それにより他の研究者から論文掲載の機会を不用意に奪ってしまうことなどがあげられます。

容認される二次出版

余剰出版は原則認められていませんが、容認される二次出版のケースもいくつかあります。まず一つ目はオリジナルの論文を英語などの他の言語に翻訳して投稿するケースです。英訳する際は英文校正でオリジナルの論文と事実が違って書かれていないかなどを必ず確認しなければいけません。研究結果や考察などが他言語では異なっているという事態は避けましょう。二つ目は、アブストラクトやプレゼンテーション、ポスターなどの形で発表した研究内容をのちに論文の形で完成させるケースです。学会発表後に論文を完成させ発表するパターンが多いでしょう。次に、幅広い読者に読んでもらう必要があるケースです。たとえば政府や専門組織がガイドラインを制作する際に特定の論文を掲載する必要があります。この場合は多くの人々に利益を届けることから二次出版が認められます。ただし二次出版が認められている例外はありますが、著作者からの許可を得ることや、ジャーナル間での許可や承認を得る手続きは必ずふまなければいけません。

サラミ出版について

最後にサラミ出版に関しての説明です。一つの研究として一つの論文でまとめられるような研究内容をあえて複数の研究にこま切れにして論文を出版することをサラミ出版と呼びます。これは論文掲載の実績を得るために行う行為とみなされ、倫理違反にあたります。研究背景、実験の参加者などが同じであるっ倍は、たとえ結果が複数得られても一つの研究論文としてまとめて投稿する必要があります。