自分自身の研究成果を世の中に向けて発信する手段として、学術論文というのは非常に価値があります。学会発表では多くの場合は紙面の形で残るのはごく一部ですし、何よりも論文は査読のプロセスを経てきちんと「審査」を受けてから世の中に出ます。さらに、Pubmedなどに半永久的に残ることも論文にする利点です。しかし、1つの論文を作り上げるまでに非常に多くの苦労を経なければならず、なかなか重い腰が上がらないという人もいるでしょう。今回は、いかにして質の高い論文を数多く世の中に発信できるようになるかについて書かせていただきます。
論文を量産するコツ
質の高い論文を数多く世の中に発信する、とはいっても書かなければ始まりません。
研究を計画し、実施し、学会発表を経て最後は論文にするという流れを作り上げることが大切です。
論文を量産するコツとして
- 「書くこと」に慣れる
- 他の人に読んでもらう(=読んでくれる人を見つける)
- 「論文作成のタイミング」を外さない
以上の3つを順に解説していきます。
「書くこと」に慣れる
一言で書くことに慣れろ、と言われても大体においてその一歩が踏み出せずにいることが多いと思います。どうしたら書き始められるでしょうか?
文章を完成させるときには、完璧主義ではじめないことがポイントです。 つまり、はじめから細部にこだわりすぎないことです。そして、大雑把でもいいのでできるだけ早く最後まで書き切ることが鍵です。
そして、1日に10分でいいので書きかけの論文に手を入れるようにします。作業は何でもよいのです。タイトルを考える、著者のリストを作る、参考文献リストを見直す、Tableのレイアウトを見直すなど、やれることはいくらでもあります。
10分のつもりではじめても、2~3回に1回くらいはもう少し踏み込んでやってみるか、と思えるものです。頭脳を使う度合いが最も大きいのはintroductionとdiscussionです。ここは少しまとまった時間を割けるようにするとよいでしょう。
materials and methods, resultsは計画段階あるいは解析をしているときに少しずつ書きためておくとよいでしょう。
このように、論文作成は、幾重にも塗り重ねるような方式で少しずつ完成度を高めていくように作っていくのがコツです。
他の人に読んでもらう
大学や研究所などではよき指導者に巡り会えれば、その人と何度も往復書簡を交わしてブラッシュアップをしていくことができます。
そういった恵まれた環境にいなくても近年ではSNSで研究のメンターを探したりすることができます。研究計画の立案から論文作成に至るステップを順番にコーチングしてもらうことができ、メンターとなった側も指導の経験を積めて研究業績を積むことができます。
そうしたメンターとの間で論文原稿を何度も往復しながら完成させていきます。
論文全体の論旨の整合性などを確認していきながら文章自体を洗練させていく、というこのプロセスからは、非常に多くの学びを得ることができます。
また、当然ながら最終的には英文校正に提出して言語を確認しますが、内容を曖昧にしたまま提出することのないように、しっかりと内容を吟味した上で提出しましょう。
論文をどのタイミングで書くのか
研究を計画し、実施し、学会で発表するところまでは行けても論文にするとなるとまた多大な労力を要します。
なかなか論文を書けない、という人の中には、学会で発表するところで満足してしまっている方も少なくはないのではないでしょうか?
ベストな論文作成時期というのは、学会の抄録を作るときです。
論文を作るのと学会発表するのは実は多くの部分で作業が重なります。つまりここで同時に片付けてしまうのが一番効率的なのです。
さらに、論文作成と学会準備を重ねることには以下のような利点があります。
- 内容を深く理解した状態で学会を迎えることになり、自信を持って発表できる
- 学会での想定問答や、実際の質疑応答がDiscussionを書く際の参考になる
- 学会発表時のアイディアを他人に実行に移されても先んじられるリスクは低い
- 学会でミスを指摘されても論文にする前であれば修正が容易である
そして最も重要な点として、学会発表を終えてから論文を書いていると、つい書き始めるのが億劫になって書かなくなってしまうことがある、というのも生産性を上げられない理由の1つになります。
まとめ
質の高い論文を量産するコツについて述べてきました。
まず全体を俯瞰するような概略的な論文原稿を作成し、徐々に完成度を高めていくように、そしてとにかく毎日少しずつ作業を進めること、またよき助言者に出合うことが鍵となります。
さらに、研究には終わりがありませんが、学会発表の準備とともに論文作成を並行して進めるようにすると生産性を上げることができます。
あなたの研究を世界に向けて発信するために、効率よく、論文を量産していってください。