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2022 7月 20

すべての論文が出版されない理由

5194615_s投稿されたすべての論文が必ずしも出版には至らない、ということは多くの人が理解していることでしょう。しかしジャーナルの数も増えてきているにもかかわらず、すべてが出版されるとは限らない、というのはどういうことなのでしょうか?そのことについて説明してみたいと思います。

 

1.出版されるべきでないものは出版されない

残念ながらすべての論文が、出版されなければならないかと言われれば、そうとも限らないのです。

例えば、患者に危害を与える可能性のある論文があります。行ってもいない研究から結果を無理やり作り出す「捏造」、特定の薬剤の効果を強調して害悪は伏せてしまう、「改ざん」などは代表的なものです。

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しかし実際にはこのような捏造や改ざんといった研究不正をはじめから疑うことは難しいでしょう。

研究者一人ひとりの倫理観が試されます。

しかし、やがてはこのような研究不正は、時間が経過すると白日の下にさらされることになります。

研究費の獲得や学位付与、ノルマの達成などの目の前の小さな目標に目を奪われて大局観をなくしてしまった研究者が犯しやすい研究不正です。

このようなことが起こりにくい研究環境を整えることが研究代表や研究施設代表の務めでしょう。

 

2.論文の雑誌掲載の実情

さて、出版されてしかるべき、という論文であっても掲載されないことがあります。

有名雑誌ともなれば毎日のように論文が投稿されてきます。

投稿された論文が編集者によってその後の査読に回るかどうかを判断されるわけですが、即座にリジェクトされることはそれほど珍しくはありません。

科学的な面白さ(Interest)新規性(Novelty)に加えて結果が信頼できるかどうか、判断されるのです。

もちろんそのジャーナルが全体として「こういう論文を載せたい」というスコープを持っていますので、そのようなスコープにあっているかを確認することというのは非常に重要です。

そのスコープにあったinterestとnoveltyを備えているか、ということが採択のカギを握っています。

ところで、信頼性についてはどうでしょうか?

研究のデータ品質がきちんと管理されている(データセンターの存在)こと、イベントの評価が論文化に都合よく行われているのではなく、第三者によって評価を受けている、Webサイトで研究の概要を公開している、などは重要です。

論文の中で信頼性を高めることも可能です。方法の部分をきっちりと記載することです。

 

3.雑誌容量の限界

近年ではオープンアクセスのジャーナルが増えてきていますが、やはり冊子媒体のあるジャーナルは根強い人気を持ちます。

また、長年築いてきた信頼があるのでimpact factorが安定しやすいのも人気の理由の1つでしょう。

しかし、冊子媒体のジャーナルは、掲載できる容量に限度があります。

そのために採択される論文に限度がある、という側面もあります。

ただし、具体的に容量を明記していることはほとんどありません。あくまで舞台裏の話、と捉えていただくのが良いと思います。

 

4.雑誌に掲載される方法

雑誌に投稿して最終的に採択してもらい、掲載してもらうためにはどうしたらよいでしょうか?

そこには3つの視点が必要です。

  1. ジャーナルのスコープと合致する内容か
  2. 科学的に正しい方法で行われたか
  3. 体裁・必要書類などがすべて整えられているか

前述のように、ジャーナルのスコープに合うような論文を投稿したほうが採択される確率は高まります。

研究の内容だけでなく、研究デザインなどのスタイルもスコープの一部となる場合があります。過去に採択された論文のタイトルや内容に目を通すことをお勧めします。

科学的に正しく実施された研究かどうかは、その記載の厳密さでしか測ることは難しいと思いますが、その道の研究者であれば記載内容をみればその研究のレベルをある程度正しく推測することはできます。

読み手としては結果に目を奪われがちですが、査読においては方法論の確認を念入りに行っていますので、ここも手を抜かずにきちんと記載することが大事です。

最後に、必要な書類や論文としての体裁です。初心者にありがちなのは、論文の内容に集中してしまい、体裁を整えるのをいい加減にしてしまうことです。

これは避けるべきです。さらに、英語を母国語としない場合には英語での記述に慣れておらず、文法上の「軽いミス」も犯している可能性があります。

投稿規定を厳密に読み、それに沿って記載すること、必要とされる書類を早めに準備すること、そして出来上がった論文ドラフトは必ず英文校正に回しておくことなどが肝要です。

このような基本が押さえられない場合には論文をきちんと読んでもらえませんので十分に注意することが重要です。

研究、論文不正への対処を考える

4458656_s研究成果を論文にまとめる際に、気が付かないうちに「研究不正」を犯している可能性があります。

今回は論文出版時における不正についてまとめたいと思います。

 

 

 

1.論文不正の種類

意図したものであれ意図しなかったものであれ、以下のようなことが論文不正として疑われないように注意を払うことが論文執筆時において重要です。

  1. 二重投稿・二重出版
  2. 剽窃
  3. データの捏造
  4. オーサーシップの諸問題
  5. 利益相反

これらを順に説明していきましょう。

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1.二重投稿・二重出版

同じ研究から複数の論文が作成されることはよくあることで、それ自体は何ら問題はありません。

しかし全く同じデータを同じような方法で解析し、表や図のレイアウトを変更したり、著者の並べ替えをしたり、明らかに同じ内容の論文が投稿されていれば、二重投稿・二重出版ということになります。

しかし、一部が酷似しているがその他の解析においては異なっており、全体としては主旨が異なるようであればそれは二重投稿とはみなされないでしょう。

例えば方法はどうしても共通してしまいますし、異なるサブセットでの解析を追加したり、フォロー期間が異なるデータに基づいた解析を行っているなどの場合が考えられます。

万一査読者や第三者から二重投稿の疑いをかけられた場合に、元の論文との差異を明確に説明できるようにしておくことが重要です。

 

2.剽窃

剽窃とは、すでに出版されている他人の著作から、部分的に文章,語句,筋,思想などを盗み,自作の中に自分のものとして用いることを指します。これは重大な論文不正の1つです。

これも程度の問題があります。明白な剽窃ととらえられるケースは、本文やデータの大部分をその出展を明かさずに、あたかも自らが制作したかのように使用しているような場合です。

短いフレーズのみの剽窃としては、当該言語を母語としない著者によって論文の考察やイントロダクションの中にある表現をそのまま使用してしまうような状況です。これも出展を明らかにせずに表現を使用してしまうような場合には剽窃ととられる可能性がありますので注意が必要になります。

剽窃を確認するようなソフトウェアを必ず通してから投稿を行うようにするとより安全かもしれません。

(学位論文などでは少なくともそのようなことが行われることが義務付けられているケースが多いです。)

 

3.データの捏造

内部告発や剽窃・盗用を契機にデータの捏造が疑われた研究が世間をにぎわせたことがありましたが、データの捏造は事実を歪めて真実から遠ざける行為ですので、厳慎むべきことです。

このようなことが生じないために、研究データを保管することが義務付けられました。研究データの原資料、解析プログラム、解析用データセットなどは論文発表を終えた後も必ず一定期間保管しておくことが求められています。

これは所属する機関などによってもかわりますので、どの程度データを保管しておく必要があるのか、必ず確認するようにしましょう。

 

4.オーサーシップ諸問題

論文の著者として満たすべき条件として、ICMJEでは次の項目が挙げられています。

  1. 研究の構想、デザイン、研究データの取得、解析、解釈のいずれかに実質的に貢献した。
  2. 論文を起草したか、または重要な知的内容について批評的な推敲を行った。
  3. 出版原稿の最終的な承認を行った。
  4. 研究に関するすべての部分に、正確性または公正性に関する疑義が適切に調査され、解決されることを保証し、研究のすべての側面に対して説明責任を負うことに同意した。

これらを満たさずに論文の権威付けなどの目的で著者リストに加えてしまうことも研究不正・論文不正の1つです。

ゴーストオーサーシップ、ギフトオーサーシップなどと呼ばれますが、このようなことが起こらないために、研究を開始する段階で著者の決め方などをきちんと話し合って決めておくことが重要です。

 

2.証拠書類の保管

こうした論文不正については、自覚がないままに犯してしまっている可能性がありますので、こういった不正を行っていないことを証明するための証拠を揃えておくことが大事です。

これは嫌疑をかけられたときの自己防衛のためだけでなく、研究不正そのものを防ぐ効果が期待できますので、ぜひ心がけておくとよいでしょう。

  • オーサーシップを決めたミーティングの議事録を残しておく
  • 剽窃チェックツールを使用したらその記録を保管しておく
  • 研究用のデータを保管し、実験ノートや解析ログなどを保管する

このような工夫が大切です。また、剽窃にならないように表現方法が同じにならないようにしてほしい旨を具体的な箇所を指定して英文校正に提出する、といったことも重要です。表現方法がどうしても似てきてしまう場合がありますので、特に英語が母語でない場合には英文校正の力を借りるのも1つの手段かもしれません。

 

3.研究不正を起こさないために

このような研究不正を生じないためにも上記のような書類を保管することは大変有効です。

加えてどのような研究不正があるのかを知っておくことも大事です。そんな時にCOPEガイドラインが対応の参考になります。

トラブル予防のためにCOPEガイドラインを活用しましょう。

 

まとめ

意図せずに研究不正が疑われないためにも研究を行う際には不正を起こさないように積極的な対策を講じることが重要です。

胸を張って研究成果を発表するためにも上記のことを参考に透明性の高い研究を心がけましょう。