英語で論文を書く際、一定のルールに則り文章を書く必要があり、それを無視して書いた論文はアカデミック(学術的)とは見なされず、場合によっては剽窃(ひょうせつ)と扱われてしまう場合もあります。論文の組み立ておよび参考文献の引用の仕方だけでなく、原稿の体裁にも細かくルールが定められています。今回の記事では、原稿の体裁の整え方、そして投稿の準備に関する説明と留意点をお伝えします。
原稿の体裁を整える
英文の論文校正では、原稿の体裁も見直す必要があります。アカデミックイングリッシュで定められているルールに則って英文が書かれているかを確認します。最初にフォント、つまり文字の大きさと種類についてです。文字の大きさは12ポイントで、フォントの種類はTimes New Roman もしくは Arialを指定します。また、特殊文字の取り扱いにもルールがあります。特異な式などを記載する際、不等号、ギリシャ文字、ローマ数字などの特殊文字が必要になる場合があります。英文の論文ではインターネットなどで特殊文字のコード表を見つけることができるので、それに従い入力していく方法が安全です。よく使われるコード表をまとめたサイトやブログもあるので、それを参考にするといいでしょう。その際も、フォントとのずれがないか論文校正で確かめます。
次にスペースの挿入について説明します。スペースには実は細かいルールが存在します。たとえば数字に単位をつける場合、単位の入れ方によってスペースも変わります。「30センチメートル」を英文で書く際は、「30 cm」のように、数字と「cm」の間にひとつスペースを入れます。一方で、「パーセント」を書く際、「60%」にように、数字と単位の間にスペースは入れません。小さなことですが無視できない大切なことですので、英文校正の際はスペースも見直します。それに加え、行間にもルールもあります。論文の場合はダブルスペースで執筆します。ダブルスペースの定義は1行に2行分のスペースを入れるということです。しかし、アメリカと日本ではダブルスペースが異なります。つまり1枚に入る行数が変わるのです。大抵論文には枚数制限はなく、字数制限が設けられているので、気にしない人も多く、特に問題にはなりません。しかし、雑誌などに論文などを提出するとなると枚数制限がされている場合もあります。自分の投稿先の必須事項を必ず確認してダブルスペースを設定しましょう。
英文の論文校正で注意したいのがReferenceスタイル、引用の仕方や参考文献の記載の方法です。Referenceスタイルの種類は多く、主に、APA、MLA、Chicago/Turabianが使われています。医学、生物学の論文ではAMAスタイルもよく使われています。インターネットでは各Referenceスタイルについて詳しく書かれているウェブサイトを見つけることができます。どのスタイルで書くのかを決めた後は、一貫しなければいけません。
論文校正では略語の記載の仕方も重要です。論文に最初に出てくるときは正式名称で書き、その直後に略称を( )で括ります。同じ分野の読み手ならその必要性は感じられないかもしれません。しかし、雑誌などに投稿するとなると、分野外の人も読むかもしれません。略語などは同じ分野に精通している人以外には難解です。読み手の立場に立ち、略語の定義づけを心がけます。
続いてKey wordsの書き方です。論文に適したKey wordsは名詞、つまり体言止めにすることです。形容詞ももちろん使えますが、動詞がKey wordになることはまずありません。先ほどの略語とも重なりますが、一般的に知られている略語以外は、基本的には正式名称で記載します。
論文にはつきもののTable(表)も体裁を整えます。まずは、論文の投稿先に規定があるかどうか確認をします。規定がある場合は必ずそれに従います。参考文献や他社の研究内容のものを使用する場合は許可を取って出典します。出典先の記載がなければ剽窃とみなされます。Tableは1ページにつき1つとし、論文の本文に引用されている順番で番号をつけます。本文では(表3を見る)など入れることも忘れないようにしましょう。読み手がすぐ必要な表にたどり着けることが大切です。そして各表には短いタイトルも忘れずに入力します。表には外枠は付けず、最低限の横の罫線のみ入れ、縦には入れません。一般的ではない略語を使う場合は、特殊記号で印をつけ脚注で説明します。なお、使用できる特殊文字は投稿先に確認します。
最後にAuthor contribution(著者貢献)の記載についてです。これは記載しなくても問題はありませんが、記載する場合は規定に則って書かなければいけません。まず、ICMJEによって定められている著者資格の有無を確認します。著者資格の要件は厳しくなっており、提出書類の追加や、各著者の貢献度を論文中に記載する必要があります。要件は4つあるのですが、その4つとも満たしている旨を必ず明記します。もし著者資格に当てはまらない場合は、謝辞で記載します。論文に貢献した人はここに含まれます。具体的な貢献内容を記載しましょう。
投稿の準備
医学雑誌に論文を投稿する際には、査読(peer review)を受ける必要があり、それに伴いCorresponding author (連絡著者)を決める必要があります。これは編集部との連絡を取り合う代表者のことで、多くの場合は投稿する論文を最も理解している著者が担います。
続いてResearch reporting guidelineのチェックリストについての説明です。Research reporting guidelineとは、論文の著者がリサーチの種類や研究方法を順序だてて必要な情報をもらすことなく論文に書かれていること報告するための手引きのことです。チェックリストは投稿先の指定があったり、既存のものがあるのでそれを活用するのがおすすめです。
就職活動で履歴書を送る際と同様に、論文の投稿に当たっては、Cover letterを提出しなければいけません。Cover letterに記載する内容は投稿先の雑誌が規定内容を出している場合があるので、事前に確認します。Cover letterは定型に沿って作成するものなので、スタイルはあまり気にする必要はありません。ただ編集者が最初に目を通すものであるので、論文の主旨を簡潔かつ明確に記載し、必要項目の記載漏れがないよう注意します。
投稿先を選ぶ
投稿先の選択は簡単なものではありません。その雑誌が、実際に書いた論文の主旨に合うのか、論文の体裁を受け入れているのか、雑誌のAims and Scopeの確認は重要です。また、雑誌の知名度も大きく影響し、たとえばImpact factor(文献引用影響率)が自分の水準にあっているのかも考慮しなければいけません。またその雑誌が電子データベースに含まれているか、そしてオンラインでも発行しているのかも併せて確認します。そして投稿には出版費用も関わってきます。著者が負担するOpen access journalであるのかどうかは重要確認項目であり、自分の資金提供機関は代わりに費用を負担してくれるのかどうかも確かめましょう。