カバーレターとは、多くの学術雑誌投稿時に、論文原稿や図表とともに添付される手紙のことです。このカバーレターの役割とは何なのでしょうか?今回はカバーレターの意義、構成、書き方について説明したいと思います。
カバーレターの役割・意義
一言で言うならば、研究のアピールがその主な役割です。編集者の目に留まるように、研究の重要性を強調するのに重要な役割を果たします。
雑誌編集者にしてみれば、数多くの論文候補の中から掲載に値する原稿を見つけ出す、というのはかなりの労力を割くことになります。すべての論文をつぶさに確認することが難しい場合には、カバーレターだけを見て判断する、というようなことも行われていても不思議ではありません。
だからこそ!カバーレターを読んだ後に、続きを読むに値するかを判断するにはそのカバーレターの内容や質を評価するのが一番効率的である、ということになると思います。
カバーレターは単に論文のアピールだけではなく、著者の研究に対する姿勢やその後のやり取りの態度を見極めるための資料としての役割も担っています。
例えば、雑誌の投稿規定等でカバーレターに記載すべき必須事項(例えば希望する査読者名、研究倫理に関する記述、資金源を明示するケースがあります)について記載漏れや不備がある場合、それだけで著しく評価が損なわれてしまうことがあります。最悪の場合、審査に回してもらえないという事態も起こり得てしまいます。たった一枚のカバーレターさえ規定に則って作成できていないのに、数十ページに及ぶ論文本体を読む価値はないと判断されても仕方がないということです。
そして、内容だけでなく、記載の丁寧さも評価対象になり得るでしょう。編集者も人間です。あまりに礼儀を欠いた記載内容がある場合にも同様に査読に回りにくくなってしまう可能性もあります。
カバーレターの構成要素
カバーレターの主な記載事項と、作成上の注意点です。
一般的な記載事項:
- エディター氏名 (分かっている場合)
- 投稿雑誌名
- 論文タイトル
- 論文の種類 (研究論文、ケーススタディなど)
- 投稿日
- 研究の背景と研究テーマ、概要
- 主要な研究結果とその重要性
- 著者の連絡先(連絡著者, corresponding authorをあらかじめ定めておくことが必要です)
- 今までいかなる雑誌においても記載されたことがなく、現在審査中でもないこと
- すべての共著者・共同研究者が論文投稿に同意していること
オプション:
- 希望する査読者の名前と連絡先情報
- 査読者からの除外を希望する査読者(特別に必要な場合のみ)
- ジャーナルが要求するステートメント (例: 研究倫理の順守、利益相反、著作権など)
カバーレターで気を付けること:
- 専門用語や略語を濫用しない
- 研究結果やその重要性を誇張しない
- 雑誌のスコープに合致していることをアピールする
- 簡潔に記載する(基本は1ページ以内)
カバーレターの投稿形式とレターヘッド
カバーレターは格式ある文体を使用して記載します。オンライン投稿する場合、カバーレターを別ファイルにして保存したものをそのままアップロードする場合と、文章をコピー&ペーストする場合があります。特殊な文字の入力等の手間を考えると、ファイルのアップロードが無難かもしれません。
ファイルで保存する場合には、宛先の連絡先情報をページの左上に配置しましょう。
オプションとして、レターヘッドをつけるのもアップロードでカバーレターを作成する場合には考えられます。レターヘッドとは、文書の上方に添えられる、会社名や住所などの定型文書やデザインのことです。
うまく使えば編集者からの印象は向上するかもしれません。
連絡著者について
直属の指導者か研究室の代表者が担うことが多いとおもいますが、自分の所属する研究室によって決まりがあるはずですので、あらかじめ確認しておくことを強くお勧めします。
カバーレター提出前チェックリスト
- フォントはArialまたは Times New Roman、文字の大きさは12
- 全てのテキストはシングルスペースで作成
- 段落ごとの行間は余裕をもって
- テキストはすべて左揃え、段落の最初はインデントしない
- スペルと文法の校閲を英文校正で依頼する
- 雑誌名とエディターの名前を再確認する
まとめ
効果的なカバーレターの書き方についてまとめました。論文の良さをアピールするだけでなく、著者としての力量も推し量られるカバーレター。
次回論文を投稿する際にはぜひ注意してみてください。