文献調査は、研究テーマを探し、医学論文を執筆する際に欠かせません。研究テーマを決める際、まだ研究がされていないものや、結果に疑問の残るものは良いテーマになりえますが、それを見極めるためには、疑問や興味のある分野に関して多くの論文を読むことが重要です。そして、実際の研究の過程や執筆においても、同研究に複数の研究間の結論が相反している場合、もしくは、何かの研究をもとに新たな研究を行う場合は、論文に過去の研究について言及する必要があります。今回の記事では、英文校正から切り離せない医学論文の検索方法について説明します。

検索Webサービスについて、どのようなものがあるのか。

文献調査には図書、雑誌論文、インターネットなどが利用できます。医学雑誌などは最新の研究などが入手できる手段としてよく活用されています。一方で過去の研究も最新の研究も含めた論文の検索が手早くできるのがインターネットでの検索です。キーワードを入れると該当する莫大な数の論文を提示してくれるインターネットを使わない手はありません。英文、日本語の論文問わず、検索Webサービスは数多くありますが、目的と分野によって使い分けることにより、論文検索も効率よく行えます。まず、検索Webサービスについてどのようなものがあるか、いくつか例を挙げていきましょう。

Google Scholar

医学の分野に限らず一番手軽に検索できるWebサービスといえば、Google Scholar です。無料で誰でも手軽に検索できるのが利点です。キーワードを入力すると、該当する論文や本などがPDFでも見つけることができ、中には無料で全論文が読めることもあります。また、キーワード検索はタイトルのみでなく、論文の本文にも適用されるので、幅広く数多くの論文を検索したい時にはGoogle Scholarは便利です。また、投稿の年度なども指定できますので、古い論文をはずすこともできます。そして嬉しい機能の一つは、ダブルクオーテーションマーク（””）でキーワードをくくるとフレーズとして検索されるので、論文を絞り込むこともできます。ただし、日本語の論文の数は英語で書かれたものよりも少ないのが欠点です。

医中誌

日本の医学論文を検索するのには、医中誌がおすすめです。日本国内の医学関係の定期刊行物約7,000タイトルに掲載された論文が収録されていて、データの更新は月に２回です。文献数は10,000件にものぼります。利用は学内の端末からのみ可能ですので、図書館のWebページからデータベースの覧を探し、そこからアクセスしなければいけません。キーワード検索ではシソーラス用語（統制語）に置き換えてくれます。シソーラスとは情報検索において、キーワードの範囲や関連語などを挙げたリストのことです。著者により用語の使い方は様々です。「アルコール依存症」を例に挙げた場合、日本語で記入する著者、カタカナを用いる著者、英語の単語を用いる著者、もしくは「アルコール中毒」など別の単語を用いるなど、使用方法は多岐にわたります。シソーラスはそれらの関連語を挙げることで、検索もれを防ぎ、また新たな用語の発見にもつながります。つまり、シソーラスにより、精度の高い検索ができ、思いつかなかった研究のキーワードを知ることもできるということです。また、検索結果からさらに条件をしぼりこむこともできるので、効率的に論文検索ができます。検索した論文の本文が電子ジャーナルで利用できなかったり、有料の場合があったりするのがデメリットと言えますが、膨大な量の論文が収録されているのと、PDFファイルで入手可能な論文も見つかるのは魅力的です。

PubMed

特に論文を英語で執筆する場合、外国の研究内容にも触れるケースがあると思います。医中誌が日本国内の論文のデータベースであるのに対し、PubMedは外国語の論文検索で使われるWebサービスです。提供元はアメリカ国立医学図書館の国立バイオテクノロジー情報センターで、アメリカの国費で運用されています。アメリカを中心に世界８０カ国から論文が集まり、収録対象の雑誌のタイトル数は5,700です。こちらは無料の検索Webサービスで、医中誌と異なり、学外からのアクセスも可能な、世界中どこにおいても誰でも検索できるサービスです。火曜日から土曜日の間は毎日更新され、２４時間アクセス可能という便利さを誇ります。医学用語、著者名、雑誌名などから論文検索が可能で、キーワードとなる英単語を入力します。各文献にはMeSH Termがついています。MeSH もシソーラスで、文献の内容を表す適切な用語を挙げています。英文校正の際に、より適切な表現や語彙がないかも同時に確認できます。MeSHは毎年改定されているので、新しい概念や語句が追加、修正され、最新の医学にも対応することができます。

最後に

文献調査において最も使われていて、膨大な量のデータを誇るWebサービスを３つ挙げました。手軽に文献探しをするのにはGoogle Scholar、日本の論文探しには医中誌、そして英語で書かれた文献の検索にはPubMedが最適です。検索する論文のタイプに応じ、検索Webサービスを使い分け、各サービスのキーワード検索の特徴を覚え、分野と目的によりキーワード検索をより効率的に行いましょう。