研究者として評価を得るため、また医学分野に貢献するために、研究と論文投稿は重要な手段です。学術雑誌への論文投稿がかなうと、同じ分野内において自身の研究内容を多くの人に知ってもらうことができます。研究結果を発表することは医学界に新たな概念や研究をもたらし、結果医学界の進歩にもつながります。では、論文を掲載してもらうためにはどうすればよいのか。一般的には掲載してもらいたい学術雑誌に論文を投稿、編集者による審査、査読を通して掲載に至ります。流れだけ見るとシンプルな過程に思えますが、論文掲載への道のりは簡単ではなく、時間も長くかかります。今回の記事では、論文受理までの道のりについて説明していきます。
まず、論文の投稿は近年、インターネットを通して投稿できます。投稿先の学術雑誌のウェブサイト上で論文のファイルをアップロードするという形が多いようです。その他にも、編集長もしくは担当者に直接Eメールを送り論文のファイルを添付したり、印刷した論文を郵送で投稿したりする方法もあります。投稿の方法に規定があるかどうか、確認しておくといいでしょう。
インターネット上で投稿すると、たいていの場合、受付番号が自動的に与えられます。その番号で投稿した論文が現在どのステージにあるのかを確認することができます。
さて、論文が提出されると、編集長によってまず審査が行われます。この段階では編集長は、投稿された論文一つ一つを熟読するのではなく、すべての論文に目を通し、論文に適した査読者の選定を行います。雑誌への掲載は査読者によって判定されますが、編集者が目を通した時点で、論文が雑誌の主旨に合わないなどの理由で掲載を断る場合もあり、競争率の高い有名なジャーナルではよく起こります。これを英語で 「Rejection without Reviews」、直訳すると「査読なしでの拒否」と言われます。編集者が少なくとも査読に回す価値があると判断すると、論文は査読者の手に渡ります。
査読者とは、投稿された論文を読み、掲載の合否を決める役割をもつ人のことです。ただ合否を決めるだけではなく、論文に関するコメントや質問なども記載します。論文に間違いや理解しにくい部分、および不適切な箇所などがあれば、それらについても言及してくれます。この査読者は編集長によって選ばれるのが一般的ですが、ジャーナルによって査読者の希望を出すことができる場合もあるようです。ただし、指定した査読者に読んでもらえるかどうかは保証されません。
投稿した論文の状況(英語ではStatusと呼ばれる)は、たいていインターネット上で確認できます。まず無事に論文の投稿がされると、「submitted」と表記されます。その後、編集長が論文に目を通すと、Statusは「editor assigned」となります。編集長が論文を拒否せず査読者に回した場合、「under review」の表記になります。ウェブサイトで「under review」になっていたら、「Rejection without Review」は免れたことになります。表記は雑誌によって異なる場合はありますが、一般的な流れ及び表記は上記の通りです。
論文が査読者に渡ってから、早い場合で一ヶ月ほど、平均して二、三か月ほどで結果が送られてきます。論文掲載の結果は、査読者のコメントに基づいて編集長が決定します。決定には「rejection(掲載お断り)」、「minor revision」、「major revision」そして「accept(受理)」の4種類があります。Minor revisionは少し訂正が必要であるという意味で、たいていの場合は論文を手直しした後に「accept」されます。Major revisionは訂正が多く、雑誌によっては、論文訂正後に新規の論文として投稿を求められる場合もあります。「Revision」の通知が来たら、査読者のコメントに目を通し、論文校正の作業を行います。
査読者は、論文に書かれた研究内容や結果、考察についての疑問点や、辻褄の合わない箇所などについてコメントを残すだけでなく、英語の間違いなども含めて指摘してくれます。辛辣なコメントが並ぶこともありますが、論文を改善して、雑誌に掲載するための手助けをしてくれているので、謙虚にすべてのコメントを読み、論文の訂正を行う必要があります。
しかしながら査読者も同じ研究者です。大抵の場合、査読者は自身の業務に加えて査読員もしているため、その業務は大変な量で、査読の業務を忘れてしまう人も少なくないようです。そのため査読者によっては三か月経っても結果が届かない場合もあります。「under review」になったまま連絡なしに数か月経った場合は、編集部に一度問い合わせてみましょう。ただし、結果を知らせるまでに何か月ほどかかるのか宣言している雑誌もありますので、大幅に遅れている場合のみに問い合わせのメールを送るといいでしょう。
研究を実際に行い論文を書き上げるのも労力と時間を要する過程ですが、論文は投稿後の道のりも易しくなく長いです。インターネット上で投稿した場合は、論文のStatusを確認し、編集長から結果が届いたら、査読者からのコメントに真摯に向き合い、一つ一つ訂正を加え、雑誌に掲載してもらえるよう作業を繰り返しましょう。