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論文掲載の仕組み

論文掲載の仕組み

研究者が学術雑誌に論文を投稿した場合、論文掲載の可否判決までにはいくつかの段階が踏まれます。基本的に査読(英語ではPeer-review)とよばれるプロセスが設けられており、投稿された論文を他の専門家が読み、掲載の採否が決定されます。査読結果は採否の2択だけではなく様々な種類があり、研究者は査読制度を知り、結果に合わせて対処していく必要があります。今回の記事は論文投稿後に行われる査読の制度について、問題点なども併せて説明します。

査読雑誌と非査読雑誌

学術雑誌(英語ではジャーナル)は、投稿された論文を査読するものとしないものとにわかれ、査読制度を設けているものは査読雑誌、設けていないものは非査読雑誌と一般的によばれています。また、雑誌によっては、査読をする論文を種類分けしているものもあります。ある学術雑誌の論文募集要項によると、査読と非査読投稿募集ジャンルをそれぞれ設けており、原稿の分量も違い、論文や事例研究などは査読が行われ、研究ノートなどは査読がなされていませんでした。どちらの場合でも要旨は和文と英文の両方の提出が求められる場合があるので、雑誌の要項を読み、英文提出がある場合は、例え短い要旨であっても英文校正を行うようにしましょう。

査読制度とは

査読は査読者と呼ばれる専門家が論文を読み、検証、評価のうえ雑誌に掲載するかどうかを決定するものです。査読の役割は論文の質を評価し、投稿先の学術雑誌に見合うものかどうかを判断するものです。従って査読を行うことは学術雑誌の質を保つ役割も果たします。
まず論文が雑誌に投稿されると、主に雑誌の編集者が論文に目を通し、内容を把握します。その後、その論文を読むのに最適な人材に査読を依頼します。査読者は担当の論文を読み、検証し、学術雑誌に掲載しても良い論文か否かを判断します。最後にMajor CommentsとMinor Commentsを論文著者に送ります。Commentsには研究や結果など論文の内容に関するものから、英語で書かれた論文における英文の間違いや表現の訂正など幅広いです。雑誌に掲載される論文は査読者に「採録(Accept)」と判定されたものです。

雑誌掲載可否の流れ

学術雑誌に掲載できる論文は「採録」と判定されたものだけですが、査読結果は採否以外にも種類があります。まず、「採録」は文字通り、学術雑誌に投稿すると決定されたもので、「不採録(Reject)」は掲載の不可を知らせるものです。査読者は不採録の論文にもコメントを詳細に書いて著者に送ります。その二つ以外に、「Revision Request」が来る場合もあります。日本語の論文であれば、「条件付き採録」や「再判定」などが当てはまります。
Revision Requestが来た場合はまだ不採用と決まったわけではないので、論文著者は査読者のコメントを読み、指摘された箇所を訂正、もしくはより詳細に記述することにより、学術雑誌に掲載される可能性があります。Revision Requestと判定された際は、もう一度論文内容、研究結果、引用した先行研究などの文献がすべてまとまり、Discussionで全て明確に結論が書かれているか確認します。英文で論文を書いた際、英語の表現の仕方から、不明確な記述になってしまっている場合もあります。英文校正を同分野の専門家に頼み、論文に矛盾点などないか重点的に確認することも大切です。そしてRevisionの他に大切なことが、査読者の要求には丁寧に答え、迅速に対応することです。査読者も多忙な中論文を読んでいるので、誠実に査読者に向き合う態度も重要です。

査読制度の問題点

査読付きの論文掲載は、研究者が学位審査を受ける際にも有効で、その論文の数が直接昇進などにも関わるほど箔のあるものです。査読付きの論文の数がそのまま研究者の評価につながると言っても過言ではありません。しかし、査読制度は良いことばかりではなく、問題点も存在しています。その一つが査読のプロセスにかかる時間です。論文を投稿した際、結果は1、2ヶ月、遅くても3ヶ月ほどで出されるのが理想とされていますが、実際に3ヶ月経った後でも査読結果が届かないと答える研究者は少なくありません。一方で3ヶ月以内に査読結果を出していると答える査読者が多いことから、編集者が査読者を見つけるのに時間がかかっているということが明らかになりました。査読者は通常の業務に加えて査読をしますが、無償で行われる場合が多いので、査読を断る研究者も後を絶ちません。結果査読者が見つからず結果が先延ばしになっているのが現状です。
第二に、査読の質自体も今日問われています。査読者は世に出る前の研究結果などを読むことができます。中には、査読結果を遅らせたり、わざと不採録にしたりするなどして、その論文の研究内容やアイデアを盗むなどの不正もあります。その不正を防ぐために、査読者を2人用意し、1人でも採録した場合は雑誌に掲載するなどの規定を設けている雑誌も多いです。
第三に、査読におけるバイアスの問題です。論文著者の情報はすべて明記されているため、国籍、人種、性別、所属機関など査読者はすべて把握しています。実際行われた調査によると、若い研究者よりもベテランの研究者、英語を母語としない研究者よりもネイティブ、女性より男性の研究者の方が論文の採録の件が多いことがわかっています。また、内容に関するバイアスでも、定説に合わないものや、革新的な研究内容などは不採録の対象になりやすいこともわかっています。査読者が保守的であればあるほど、定説に基づかないものや、マイノリティによる研究内容は採録されにくいのも問題です。