臨床研究の実施は医療従事者にとっての責務であるとともに、後世に有益な医療結果を残すという医療業界への貢献でもあります。臨床研究においてはテーマを決定し、そのテーマの検証を立てていく過程が重要であります。しかし、研究テーマを見つけ出すことは容易なことではありません。気になるテーマがあってもそれが一つの研究に繋がるのか、また過去にもう検証されてしまっていて研究する余地がないなどの問題点が常に研究者につきまといます。今回の記事では、研究テーマの見つけ方、またテーマ決定後の過程について詳細を見ていきましょう。
臨床的に意味のある研究テーマを見つけ出す
研究のテーマは臨床的に意味のあるものでなければいけません。しかし、そもそもテーマを見つけることに困難を覚える人も少なくありません。そこで、研究テーマ探しにおいてポイントがいくつかあります。一つ目のポイントは、常に疑問を持ち、問いかけ続けるということです。普段の業務や医療現場において素朴でもいいので疑問に思ったことを書きとめ、解決法を考えてみましょう。そして二つ目に、それらを実際に紙の上に疑問形で書き連ねることをおすすめします。人の思考はすぐに消え去ってしまうので、文字に起こし客観的に見られるようにします。そして解決方法を思いつく限り書き込んでいくと考えがまとまりやすいです。例として挙げられるのは、
・この治療薬は本当に効果があるのか。
などです。三つ目のポイントは、書きこんだ疑問に解決法をどんどん書き込んで行くことです。例の疑問文は一見短絡すぎるようにも思えますが、そこから、どんな患者に対して有効か、年齢や併発している病気によってどんな副作用が出るのか、その場合はどんな問題が起こりえるのかなどと考えを膨らませていくと探求できるでしょう。一つの疑問を深く掘り下げた先の新発見こそ「意味のある研究テーマ」です。複雑なテーマにのみ学術的価値があるわけではありません。その「問題点」から検証し、「どのような結果が得られるのか」が重要なのです。
研究テーマが解決されていないことを確かめる
研究テーマを見つけたあとは、それが未解決のものであること、もしくは研究されていないことを確認しましょう。たとえ素晴らしいテーマであっても、他者がすでに研究していて、提示された解決方法に疑問の余地がなければ研究対象になりえません。同じ研究をしてもその論文に価値はなく、学術雑誌にも掲載されることはないので、十二分に注意しましょう。しかし、医療は日進月歩。同テーマで研究が行われていても今日の医療をもってすれば疑問が浮上する、もしくは複数間の研究で結論が相反している場合は研究テーマとして大きな意味を持ちます。新たな研究と古い研究が混在している場合があり、その状況は医療業界に不信を招きます。常に新たな臨床結果をアップデートするためにも、未だ誰も行っていない研究、遅れた研究、研究間での結果が異なる研究内容を追及し、新たな結論や治療の可能性を見つけ出すことが未来の医療業界にとって大きな貢献になります。
仮説をたてる
特に英文で論文を執筆する際には、西洋式に仮説を立て、研究内容を構成する必要があります。前回の記事にも執筆した通り、日本式の科学と西洋式の科学は根本的に異なり、仮説の検証を重要視する西洋では、日本式の科学は受け入れられません。英文で執筆し、国際学術雑誌に投稿する際はそのことを頭におき、英文校正では、明確な仮説が立てられているか確認しましょう。
西洋式の研究は、仮説検定法を用います。そのため、明確な仮説を設定し、それを立証できるように研究方法を構築し進めていくのが基本です。まず研究したいテーマが科学的に根拠のある、すなわち、原理のある研究内容かどうかを見極めます。そして科学的に根拠があると判断した後は、研究目的を定めます。研究目的とは文字通り「何故その研究をする必要性があるのか」ということで、その必要性を論文内で言及しないと、結局その臨床研修が何に貢献するのかが明確にならず、また著者の目的も読者にはわからずじまいです。その後は研究テーマを立証できるように仮説を立てていきます。この仮説を設定する作業は大変難しいものです。特に日本では仮説を立ててから実験をする手法を教えている大学・大学院などの機関は多くありません。アメリカの学生などは常に仮説を立て、それが立証できなければ原因を探るための仮説を立てて、立証できるまで追求していく手法を常に用いています。仮説の設定は日々のトレーニングも必要ですから、常日頃から仮説を立てる習慣をつけることをおすすめします。
最後に
今回の記事では、「研究テーマについて考える」ことを中心に書きました。医療従事者、特に英文で国際的学術雑誌への論文投稿を目指している人にとって、西洋式に研究テーマを見つけ、検証していく作業が重要になります。英文校正において、研究の目的が明確に記述されているか、また、設定した仮説が科学的かどうかをしっかりと吟味しましょう。