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適切なデータ収集と解析について

適切なデータ収集と解析について

臨床研究を行う場合に最大限注意を払う必要のある項目の一つがデータの取り扱いです。科学的根拠に基づく医療の重要性が提唱されて以来データ収集とそのデータの解析、そしてデータの保管などに関しても厳しくなっています。提示したデータの内容や収集方法、または解析の方法に少しでも不明点等が見つかると、投稿先のジャーナルの査読者から再提出を求められたり、リジェクトされてしまうでしょう。また最悪な事態としては、データ改ざんなどと不正行為を働いたとみなされてしまう可能性もあります。 今回の記事ではデータに関する注意事項を詳述します。

データ入力と解析

データの統計解析では何よりも信頼度が高くなければならず、信頼度の高い解析には質の高いデータが欠かせません。そのためにも臨床試験において得られた情報を取り扱う際の品質の管理を行うデータマネジメントが重要となります。データマネジメントでは、準備までの手順、使用するシステム、データの入力の流れなどを正確かつ明確に決定する必要があります。そして収集されたデータの質を向上するためにデータクレンジング(データ洗浄)を行い、データの解析と標準化を図ることも大切です。またデータ収集時には欠測値も出てきます。例えば検査における欠測値であれば、「検査が行われていない」と、「検査は行われたが入力該当のデータがない」とでは大きく意味が変わり、それらの情報はデータ解析にあたって無視することのできない項目です。より精度の高い信頼できるデータを提供するためにも、一つ一つの項目も細やかにジャンル分けすることが大切です。 データマネジメントではコンピューターシステムを使用するのが一般です。その使用するシステムを信頼できるものであるのかを見極めてからシステム採用の決定を下しましょう。質の高いコンピューターシステムを利用してデータマネジメントが研究を通して行われて、初めて質の高いデータを得られます。そしてその質の高いデータと、信頼性の高い統計解析ソフトを用い、信頼性の高い統計解析が遂行できます。緻密に計画され、高品質のシステムを使用したデータマネジメントで得られた信頼性の高いデータと信頼性の高い解析ソフトを使用することで、ジャーナルの査読者および読者にも信頼される結果を発表することができます。

統計解析

たとえ質の高いデータを確保し統計解析を行ったとしても、論文で統計解析の記述に不具合があれば、当然信頼性がなく、査読者から厳しいコメントが返ってきて、最悪論文がリジェクトされてしまうこともあります。臨床研究の論文では再現性が重要です。専門家が論文を読み、記載された結果を検証できるように統計解析の方法を記述する必要があります。詳細に記載し、出来るだけ結果は定量化します。統計解析の方法は論文内のMethodで記述します。再現性や適性基準、セッティングなどを正確に述べ、適切であることを示さなければ、確証のある論文と認められにくくなります。信頼性の高い論文を書くには、アウトカムの定義と測定法を明記し、統計解析方法を完璧、かつ冗長にならないように記述しましょう。特に英文で論文を書く場合は、シンプルかつ明確な英語を意識し、英文校正では、第三者が読んでも統計解析の手法と結果が理解しやすいものかどうか十分に確認しましょう。

データの保管

臨床研究中に収集したデータの適切な保存・保管も大切な業務のひとつです。科学的根拠に基づいた医療の重要性がより一層叫ばれている今、研究結果の証拠であるデータを適切に保存しなければならないことを研究者は自覚する必要があります。現在、不正を疑われた研究者がデータを保存していなかったために身の潔白を証明できなかったという事例もあります。データ保存で注意しなければいけないのは、プライバシーの保護です。ノートに患者の名前などの個人情報を入れてしまうと、そのデータを紛失した際大きな問題になってしまいます。どんなトラブルが起こっても患者の個人情報が漏洩することのないよう適切に管理しましょう。そして何より大切なのは、臨床研究で得たすべての情報や成果物は立派な証拠であり、また資産でもあります。研究終了後も、様々な機関から情報開示を求められる場合もあるので、長期にわたっって適切に保存することは研究者の責務でもあります。 また、収集したデータだけでなく、日々の研究経過や手段などを記録した実験ノートの作成も重要です。実験ノートには、実験や観察の経過のメモ(ログとも呼ばれます)、データを取得した時の状況や条件、解析方法や実験における考察などを、日付を入れ時系列に記録しなければいけません。またそのノートを訂正した場合は、訂正履歴が残るようにします。現在は紙のノートではなく、コンピューターで記録を付ける手段が取られることが多いです。コンピューターでは情報の訂正・修正は容易にできてしまいますが、たとえデジタルであっても実験ノート作成の基本理念は変わらず、必ず修正履歴が残るように作成しなければいけません。もちろんデータ操作を行うことは当然禁物です。データ操作を行っていないことを証明し、不正を疑われた時身の潔白を証明するためにも、必ず収集したデータおよび実験記録は適切に保管しましょう。