研究の準備を整えたら、次は論文の投稿先を決定する必要があります。ターゲット層となる読者を視野に入れて、雑誌を選ぶことが重要です。また、研究者にとって論文はキャリアアップに欠かせないもので、論文が掲載された雑誌の種類によって評価がされます。実施した研究を誰にどのように発信し、キャリアをいかに形成していくかを考慮しながら雑誌を選択することが求められます。
今回の記事では、投稿先の雑誌を選ぶ上で大切な要点を紹介していきます。
雑誌の種類
ジャーナルの種類には、学術雑誌と商業雑誌があります。学会が出版している学術雑誌は、特定の研究者をターゲットにしたものが多く、利益を追求していないのが特徴です。研究者が論文を投稿する際も、論文の主旨に見合った基本方針を持つジャーナルに投稿することが重要です。一方商業誌は出版社が発行する利益を追求した雑誌であり、不特定多数の読者をターゲットとしています。一般受けする興味深い記事が投稿され、専門家でなくても理解できるよう執筆されているのが特徴です。つまり、商業雑誌に記事が掲載されるということは不特定多数の読者に読まれる可能性が高まります。しかし一般的には著名な研究者に執筆の依頼がされることが多いようです。また、自分の研究が特定の研究者をターゲットにしている場合には、やはり学会が発行する学術雑誌への投稿が基本でしょう。 雑誌には月刊誌や週刊誌などの発行周期や、紙雑誌とオンライン雑誌などと細かくカテゴリー分けすることができます。インターネットの普及で、紙雑誌もすぐにオンラインでアクセス可能になったり、すでに紙雑誌としての出版を行わないものもあります。現在の学術雑誌、特にオンライン雑誌は論文の投稿もオンラインで受け付けている機関が多く、論文を直接データ化するために、図表などの数値や画質に規定を設けている場合があります。
外国語雑誌に掲載する優位性について
研究者には常に日本国内の雑誌だけでなく外国語雑誌への投稿の選択もあります。国内の特定の地域を限定とした論文などでない限り、世界中の研究者がアクセスする海外の英語雑誌に投稿することを推奨します。前回の記事でも書いた通り、論文執筆の目的は世界の医療機関への貢献です。臨床研究における発見を日本国内の研究者にだけターゲットとした雑誌に掲載するのは良い選択とは言えません。インターネットの普及で世界中の医学雑誌にアクセスできる時代です。英文で論文を執筆し掲載され、世界に研究を発信することは、世界中に論文が認知されるということですので、医学研究者としてのキャリアアップにも欠かせません。英文での論文執筆は敷居が高いと感じる人も多いでしょうが、常に英文で論文を読み、執筆後英文校正を行うことで、必ず外国語雑誌に投稿できる英文論文が執筆できるはずです。
自身の論文に適切な雑誌を選ぶ
論文を投稿するジャーナルを決定する際に考慮すべき点がいくつかあります。それは雑誌の種類と分野、著名度、インパクトファクター、雑誌掲載の媒体などです。まず、ジャーナルを選ぶ際に一番重要な点は、投稿先にと考えているジャーナルが自分の研究のテーマと合っているか否かです。医学雑誌と言っても外科、内科、脳、小児科など分野が分かれており、一つ一つの学術雑誌は取り扱っているテーマや領域などの詳細を基本方針に記載してあります。実施した研究の論文が投稿先の雑誌の基本方針に一致しない場合、査読者にリジェクトされてしまいます。投稿前にその学術雑誌が特にどのような領域の論文を掲載しているのかを読むと、その雑誌が焦点を当てているものがわかるはずですのでおすすめです。また、自身がターゲットとしたい読者層も雑誌の選択において重要な要素です。専門家でない読者層もターゲットにしたい幅広い研究論文なのか、特定の分野における研究者がターゲットなのかによって雑誌の選択は変わります。 また、雑誌の著名度も論文投稿時に気になる点であります。著名度の高い雑誌はそれだけ多くの研究者に読まれている証拠ですので、特定の研究者をターゲット層の読者にしたい場合、その研究者間でよく読まれている雑誌を選ぶことが認知度を上げることにつながるでしょう。著名度と雑誌の影響力を考慮する際に欠かせない指標の一つがインパクトファクターです。インパクトファクターとは文献引用率のことで、学術雑誌に掲載された論文が、特定の期間内に引用された頻度を平均値であらわした尺度のことです。つまりインパクトファクターはその学術雑誌の影響力の指標を指しています。インパクトファクターの有効性と重要性に関しては賛否両論あり議論されていますが、現時点ではやはりインパクトファクターの高い雑誌に論文を投稿するというのは成功の一環と認められるでしょう。しかし同じ分野の雑誌のインパクトファクターの比較は投稿先の雑誌を選ぶ上で参考にはなりますが、あくまで、自身の研究のテーマに合った雑誌を選ぶことが最も重要です。 論文が雑誌に掲載されるだけでなく、研究内容を多くの研究者に読まれ、他者の論文に引用される必要があります。引用数が多ければそれだけ論文の価値もあがり、将来の評価にもつながります。今日多くの研究者に論文を読まれるためにはオンライン(もしくはオンラインでの出版も採用している)雑誌が必須です。多くの研究者に論文をインターネットで見つけてもらうためには、是非データベースに入っている雑誌を投稿先に選びましょう。データベースに入るとキーワード検索で論文がヒットし、論文の引用数も上がる可能性が高まりので、論文の認知度も上がります。