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抄録について

抄録について

論文執筆において必ず必要になるのが抄録(アブストラクト)です。アブストラクトは論文の要旨であり、論文を検索する人はとりあえず抄録を読めば論文の概要がつかめるものです。抄録は論文の顔とも呼べるもので、抄録だけで論文の主旨と研究内容が把握できなければいけないので、論文執筆の項目の中でも特に重要なものの一つです。
今回は構造化抄録と呼ばれるスタイルの説明と書き方を中心に、抄録について詳述します。

抄録とは

冒頭で書いたとおり抄録とは論文の要旨であり、抄録を読めば論文の主旨と研究内容の概要が把握できるものです。一般的に読者はタイトルを読んで論文に興味が湧き、抄録を読んで論文の本文を読み進めるかどうかを決定します。また、査読者や編集者の中には、抄録を読み、その内容によって本文まで読み進めるか、抄録だけでリジェクトするかを決める人もいます。つまり抄録の質によって読者獲得につながるか否か、そしてジャーナルに掲載されるかどうかが決まってしまいます。論文の抄録には、構造化抄録と非構造化抄録の2種類があり、それぞれスタイルが異なりますが、基本的に論文の本文を書き終えてから抄録の作成に入ります。これは論文の主旨をまとめたものを抄録に記載しなければいけないので、本文に記述したものを整理して執筆する必要があるためです。抄録を書く際は正確性と明快性を追求し、読み手が論文と研究の内容および簡潔な結果が把握できるように作成します。論文の主旨、目的、研究内容を冗長な表現を一切省いた英文で述べ、論文の構成も簡潔に記述します。最後の英文校正では研究に携わっていない人が読んでも研究の内容がイメージでき把握しやすいかとうかを再三確認しましょう。

抄録に関するCONSORT声明について

医療従事者が論文にアクセスするときに抄録を読んで研究内容や臨床試験を評価しますが、世界の医療現場ではオンライン上で抄録にしかアクセスできないという地域もあります。つまり読者にとっては抄録のみが情報源という場合もあります。そのためCONSORT声明をさらに広げ、ジャーナルに投稿される論文などの抄録でランダム化比較試験(RCT)の結果を報告する際の項目チェックリストが作成されてきました。そのため、抄録が構造化され、そこに含むべき項目などが定められました。その抄録を構造化抄録と呼びます。

構造化抄録と、抄録に記載する事項について

抄録には構造化抄録と非構造化抄録があると述べました。そのうちの構造化抄録は英語でStructured Abstracts と呼ばれるもので、IMRADのスタイルで書かれます。IMRADのIは「introduction(序文)」、Mは「Materials and Methods(方法)」、Rは「Results(結果)」、Dは「Discussion(考察)」を指します。構造化抄録では記載する項目が5つ定められています。それらの5項目は「背景」、「目的」、「方法」、「結果」、「結論」で、考察を抄録では記載しません。以下はCONSORT声明により定められた、抄録に含まなければならない項目を併記した抄録の基本的な書き方です。

背景には研究テーマに関する最新の情報や研究的疑問を記載します。ここの箇所にキーワードなども織り込み、読者に興味を持ってもらえるよう工夫することも大切です。次の目的では、何故研究を実施したかの理由と研究の対象、そしてこの研究によって成し遂げたいことを記載します。3番目の方法では、研究内容について記述します。研究デザインや患者に関する情報、介入方法(該当する場合)、そして主要評価アウトカム、ランダム化、ブラインディングなどを簡潔かつ明瞭に記述しなければいけません。4番目の結果では、ランダム割り付けされた人数、募集、解析された人数、アウトカム、害を含めた結果を記述します。ここで考察や詳述された結果内容は必要ありません。最後の結論で、この研究を通して何がわかったのか、そして仮説に対する結論、そして今後の研究の有無などを記載します。

構造化抄録では、項目ごとに記述する必要があります。つまり「まず初めに研究背景・・・」などと文章でひとまとまりにして記述しません。しかし、非構造化抄録はその逆で項目ごとに別途内容を記載することはできません。文章で、研究の背景、目的、方法、結果そして結論を記述します。スタイルは自由ですが、そのぶんどこからどこまでが背景なのか、どの箇所が結果を表しているのかを明確に記述するという高度な文章能力が求められます。

抄録の長さ

英文の抄録の長さは基本的に200から300 wordsです。長さの目安としては、研究の背景と目的に2、3文、方法に4、5文、結果に1、2文、そして結論に1文ほどあてがうとバランスが良い抄録になるでしょう。ただしジャーナルによっては文字数の制限が異なるのと、書き方に関しても指定されている場合はあるので、執筆前および英文校正時には必ず確認するようにしましょう。