論原著とは自分独自の研究を論文にまとめたもので、質の高い研究ほど学術雑誌などに記載されます。自身の研究について述べた論文が出版され世界の医療従事者に読まれることは、医学界に大きな貢献をするということとともに、研究者としてのキャリアアップにも欠かせないものです。
原著は「臨床研究」と「基礎研究」の2つに分けることができ、臨床研究は実際に患者を対象にして行われ、基礎研究は遺伝子や実験動物などを使用して実験室で行われる研究です。原著は要約、目的、対象と方法、結果、考察、結論、参考文献、そして表や図、図説明文から構成されており、研究の考察を経て、研究者独自の結論を発表するものです。
また論文執筆の方式としてIMRAD方式というものがあります。IMRADのIは「introduction(序文)」、Mは「Materials and Methods(方法)」、Rは「Results(結果)」、Dは「Discussion(考察)」を指します。IMRAD方式で示されている4項目はあくまでも論文本文の内容構成であって、この4つの構成要素のほかに要約、参考文献、謝辞などを必ず記載する必要があります。では、各々の項目で具体的に何を書いていけばいいのか見ていきましょう。
IMRADのI(Introduction)
Introduction(導入・緒言)では研究背景や仮説を説明の上、問題提起し、研究の目的を述べる項目です。これは過去他の研究者によって行われた関連した研究内容の背景も記述し、「現地点で何がわかっていて」、「何がまだわかっていないのか」、そして新たな研究を行おうと思った動機を明確に記述する必要があります。つまり、自身の新たな研究内容だけでなく、先行研究に関する知見も問われており、自身の研究の意義を明示しなければいけません。
IMRADのM(Method)
Method(方法)は実際に研究において用いられた方法やストラテジーについて記述します。実験を行う臨床試験では、実験方法、装置構成、その実験の手順、解析方法など実験に関わる重要項目を全て挙げます。統計手法はMethodの最後に書き、統計解析ソフトの名前も忘れずに記載します。Methodを書く時の注意点は明確かつ正確に記述するという点です。その論文を読む研究者がその方法通りに行えば再現できるよう記述しなければならず、それができなければ再現性がないと判断されてしまいます。また、英文で実験の手順を記載する際に気をつけたいのが命令形で書かないということです。例えば「~を測る」と言いたい場合、”Measure something” ではなく、”Something is measured by~”のように主語を入れ、受身文などで書きましょう。英文校正時に手順が命令形で書かれていないか確認することをおすすめします。 それに加えてMethodで忘れてはいけないものが、倫理に関する事項です。研究内容によっては、「ヘルシンキ宣言」の遵守、研究に参加した被験者の同意(インフォームドコンセント)、倫理委員会からの承認などは必要です。それらの項目も必ず記載します。
IMRADのR(Results)
Results(結果)では、研究で出た結果を客観的に叙述します。ここでは研究者の個人の見解や考察などを入れてはいけません。実験で出たデータをはじめとする結果をありのまま書きます。ただ、Introductionで提起した問題への仮説を支える根拠となるものを記述するなど、結果内容を全て書く必要はなく厳選する必要があります。 ここでは図表などを効果的に取り入れて、読者にとってわかりやすいよう情報を提供しましょう。同じ言葉や数字などを文中で繰り返すことも避け、明確に論理的に述べます。Resultsではあいまいな表現を使うべきではありません。あくまで客観的に叙述することに徹します。また結果の分析はResultで記述せず次のDiscussionで述べます。
IMRADのD(Discussion)
Discussion(考察)で、Resultで出た結果の意義を伝えます。論文で最も重要な部分といっても過言ではなく、実際に実験の手順と結果が良いのにも関わらず、考察が弱いためにリジェクトされる論文は多いです。Discussionで述べるべき点は、「データがIntroductionで提起した問題と研究目的にどう重要かつ関係しているか」、「各データの意味」そして「限界の有無」で、論理的に結論が導き出されているかが重要です。Discussionで避けなければいけないことは、Introductionで提起されていない問題やテーマなどを持ち出したり、論理的に記述せず突然著者の見解に飛躍したりすることです。
引用文献の提示について
引用文献の提示は剽窃であると判断されないためにも確実に行いたい作業です。特に先行研究について言及する際は、どの部分が本などの資料から抜き取ったのか明確に示しましょう。引用方法には様々なスタイルがありますが、1つ選んだら論文内はそれで統一しなければいけません。パラフレーズする場合には、Smith (1992) discusses/mentions/points outなどと始め、引用符(quotation mark)を使用しません。一方でパラフレーズせず文章そのまま引用する際は引用符で囲まなければいけません。これを忘れると間違いなく剽窃になるので注意が必要です。英文校正時には、引用スタイルが統一されているか、引用方法に間違いがないか、そしてdiscusses/mentions/points outなどの様々な単語が意味にそって正しく使用されているか確認しなければいけません。