臨床研究の論文において最も重要な要素の一つと言っても過言ではないのが方法、Methodです。論文にはアブストラクト、イントロダクション、結果、考察など様々なセクションで構成されていますが、Methodはその中でも一番詳細に記載しなければなりません。詳述されていなかったり、説明が明確でなければ論的証拠がないと判断されてしまい、研究そのものが画期的であってもジャーナルに掲載されずリジェクトになる可能性もあります。
今回の記事では、記載項目を多く含むMethodの書き方について説明しましょう。
方法を書く際の黄金ルール
経時的にかつ最も詳細に書く。そして再現性のある内容かどうかを判断する。これを徹底して行わなければいけないのがMethodです。Methodには研究が行われた過程、実験で用いた方法とその用いた理由を明記し、研究で使用できた情報だけを記載します。 一般的な記載項目や研究項目は、まず研究対象、そして方法と技術的な情報、そして統計とデータ分析です。研究対象や方法などと一口で言っても、そこに含まれる要素は数多く、理路整然と明記していく必要があります。また第三者がMethodで書かれた方法を用いて実験を行った場合、同様の結果が得られなければなりません。つまり研究に携わっていない人間が読んだだけで実験を再現できるようにMethodで実験の説明を行う必要があります。多くの情報をMethodの欄で簡潔にかつ正確に記載するには、高い英語力と文章校正力を要します。第三者が読んでも研究の再現ができるものかどうか、英文校正では何度も確認をし、第三者の人間にも英文チェックをおこなってもらうほうがいいでしょう。
研究対象の描写
対象者の選択基準は必ずMethodで記載します。質の高い研究のためには、選ばれた研究対象者は母集団を代表とする妥当性が求められます。妥当性があると認められるよう選定することはもちろん、その選定方法も説得力を持つように記述しましょう。また比較研究の場合にはランダム化と盲検化についての言及も必須です。対象者の選択基準には、研究対象者の選択方法、人数、疾患名、病期、年齢や性別、体重をはじめとする研究に必要な項目に関して明記しなければならない規則があります。その際、患者の身元が判明されることのないよう配慮します。研究対象者が設定された基準にいくつ当てはまるのかもMethodで書きます。 また研究が行われた背景知識として研究機関と場所を必ず示し、倫理事項について記述する必要があります。臨床研究で患者(研究対象)の記載が必要となる場合、その患者のプライバシーを守ることは医療従事者としての最大の責務です。世界医師会によるヘルシンキ宣言および日本国内の倫理指針に従って研究を行わなければいけません。動物および人間を対象とする研究は、研究プロトコルに対する倫理委員会の承認や臨床試験対象の事前同意が必要となり、その旨の記載も必須です。そして研究対象となった患者からのインフォームド・コンセントの取得です。インフォームド・コンセントとは、日本語では「十分な説明をしたうえでの同意」と呼ばれ、自由意志による参加の同意を証明するものです。ヘルシンキ宣言には、研究に参加する患者の自由意志によるインフォームド・コンセントの取得を要し、文章での取得が望ましいと書かれています。研究者は、患者が理解できるように研究について説明をし、患者から署名をもらう必要があります。インフォームド・コンセントの取得は大変重要なもので、取得に至る経緯や取得方法(文章なのか口頭なのか)の明記を要します。そして倫理問題とも関連しているのですが、研究の登録に関する記述も必要です。現在研究の登録を必須とする学術雑誌が増えてきており、国際的な雑誌ほどその傾向は強いです。ポジティブな結果ばかりが発表される傾向が強い論文掲載の問題ですが、ネガティブな事例が紹介されないことにより出版バイアスの問題が生まれます。またネガティブな結果を発表することにより同様の実験が次に行われることを防ぎ、他の患者の生命を守るという結果にもつながります。投稿先の雑誌が研究の登録を課している場合は、研究登録についても忘れずに記載しましょう。
技術的情報の記載
研究における主要評価項目と、副次的評価項目を記載します。そして第三者の研究者が制限できるよう、研究の手順、使用した器具、処置法について詳述します。新しい方法や、新たに手を加えた方法の場合は特に実験の説明、それを利用した理由、その実験での限度についても正確に記載します。薬剤の場合には投与量なども正確に書かなくてはいけません。研究方法に変更が出た場合は、変更された部分のみをかくのではなく、変更した内容をすべて書きましょう。変更された旨を記載しない場合、その研究への信頼がなくなってしまうので注意が必要です。
統計法
第三者が統計法が正しく妥当性があるかどうか判断できるように、統計方法も詳細に書かなければいけません。測定エラーや信頼区間も漏れることなく記述し、適切な指標を用いて示します。また、統計で使用した略語や記号も読者に性格に提示し、統計ソフトウェアの名前とヴァージョンも記述しましょう。これらの項目で不備があると信頼性および再現性がないとされてしまいます。