考察(Discussion)は、Abstractとイントロダクションで記述した研究目的およびテーマについて、臨床研究で出た結果をまとめ分析し、再度解説する目的を持っています。Abstractでは簡潔に研究テーマと内容について概説し、イントロダクションで何故この研究が重要なのかを読者に伝えますが、それらを研究結果を用いていかに効果的に研究の重要性を伝えられるかが質の良い考察の条件と言えます。
研究の方法と結果が良くても、それを上手にまとめ考察がなされていないと、査読者は有意義な研究結果だとは理解せず論文掲載もリジェクトされる可能性が高まります。今回の記事では、考察に記載する内容から考察を書く際の注意点などをまとめてお話ししましょう。
考察(Discussion)執筆上の基本的なルール
冒頭でも書きましたが、考察ではAbstractとイントロダクションで掲げた研究テーマと研究の重要性を、研究から得た結果をまとめて再度考察で述べます。論文の構成は基本的に、Abstract、イントロダクション、方法、結果、考察および結論の順です。読者が順に研究論文を読み進め、方法と結果を読んだ後、その論文の研究テーマや意義などが頭に正確に残っていない場合が多いです。もう一度読者の意識を研究のテーマに戻すためにも、考察の冒頭部分でそれを記述する必要があります。またイントロダクションで記述した内容と一致していなければならず、考察で新たなテーマや考えなどを含むことはできません。イントロダクションとの一致性を保つためにもイントロダクションと考察は期間をあけずに一気に書くことをおすすめします。そして英文校正ではイントロダクションと考察の内容が一致しているか、また方法・結果を通し論文全体に一貫性があるかどうか確認するようにしましょう。
考察(Discussion)で記載する内容
考察では、結果のまとめ、先行研究の論文との比較、診療に与える影響や臨床への解釈、そして研究の限界を必ず明記し、そして結論へとつなげます。研究の目的は「知識の差(knowledge gap)」を埋めることにあります。つまり研究結果を効果的にまとめ記述することで、その研究が行われた重要性を説得力を持って解説することができます。考察はまず最初に主要な結果のまとめから書き始めます。ここでは最も重要な情報を明瞭に書き、結果の所見を簡潔に要約します。この際に主要評価項目と副次評価項目がすり替わってしまっていないか注意を払いましょう。考察で結果をまとめる際は、結果のセクションで書いた結果内容を重複せず、研究仮説を検証しながら該当の結果を論じます。 英文では“The first result suggests…” のように “suggest” を現在形で使うといいでしょう。 主要な結果をまとめた後は先行研究の結果と自身の研究結果の比較をします。自分の研究結果が既存の研究結果および知識と合致していたのか否かを考察し論じます。英文では、”a previous study found… but this study defined…” のように書くことで比較表現ができます。他にも “in contrast” のような比較する際に使える英文が幾つかあるので文脈によって表現を変えるといいです。また、自分の研究の強みと、先行研究の弱みを強調することができれば、よりこの研究の重要性を論じることができます。考察で念頭に置いておくことは、読者(査読者)を説得できる内容と文章を意識して書くことです。一方、研究を行っていると予想外の結果や有害事象も出てくることがあります。有害事象がある場合には倫理的観点からもConsort声明で記述すべきチェックリストに挙げられています。予想外の結果や有害事象の有無を記述し、何故それらの結果が出たのかをよく考察しなければいけません。また既存の研究結果と合致しない場合もその理由を考察したうえで論理的に述べましょう。 最後には実施した研究の限界点を示します。研究を行った際に限界点がないということは一切あり得ません。自分の研究の限界点を明記し、それが研究結果にどのように関係し影響を与えているのかを考察する能力が問われます。自分の行った研究の弱点を述べることはマイナスにはなりません。その反省を踏まえ、後続つまり将来の研究にどうつなげるのかを最後に述べます。
英文で考察を書く際のポイント
考察は論文全体象を研究結果を用いて論じるところで、とても重要なパートでもあります。文章は明瞭に冗長にならないように書かなければなりません。そのためにも基本的は受動態(Passive speech)ではなく、能動態(Active speech)を使用して書くといいでしょう。そして考察を書く際にはいくつか決まった表現もあるのでそれらを活用し簡潔かつ明確に書くことをおすすめします。英文校正時には、研究テーマがイントロダクションと一致しているか、結果の分析と考察が正確になされており、それらが伝わりやすい英文で記述されているかを確認しましょう。