引用文献とは
研究論文を執筆する際、先行研究を記した過去の論文を読む必要があります。過去の記事で執筆したように現在どのようなことが研究で明らかにされていて、どの問題が残っているのかを判断するためです。研究は未だ解決されていないもの、もしくは過去の研究に問題があると判断されるものを解明するために行うものです。過去の論文をしっかり読み自身の研究をどう組み立てるのかに役立てます。
そして研究テーマが決まったあと、自身の研究の根拠を論文内で裏付けてくれる先行文献を引用文献と呼びます。過去に数多くの論文を読んでいても、研究の根拠を支える研究論文のみ引用し、その他は引用する必要はありません。むしろ多くの先行文献を入れすぎてしまうと筆者の研究テーマが見えにくく、ただ過去の情報を羅列した論文にしかなりません。
引用できる文献と選び方の注意点
引用する文献は可能な限り原著論文を使用しましょう。原著論文で記載されている内容を自身の研究内で引用すれば、オリジナルの内容を正確に(ただし筆者の観点で)反映していると判断できますが、第三者の研究者が引用した部分を引用してしまうと、オリジナルの内容を反映しているとは言い難くなります。 ただし論文に限らず引用できる文献の種類は様々です。まず学術雑誌で掲載された論文は、症例報告を含めオンラインであっても紙面であっても引用可能ですし、出版されている本も基本的に引用できます。その他に学術ジャーナルに投稿された論文で掲載待ちのものは「in press」と記載すれば文献として使用でき、アクセプトされていない論文は出版社から許可を取れば「unpublished observations」として引用可能です。 引用文献を選ぶ上での注意点は、引用文献が最新の物(一般的に過去10年)であるかどうか、執筆したい研究内容に強く関連しているものであり自身の仮説を裏付けるものかどうかです。そして前述したように原著論文であるかどうかも留意したい点です。また引用文献は多すぎても文章が重くなってしまうので、重要なものを効果的に引用し自身の仮説を強く裏付けましょう。数が少なすぎるのも問題ですが、参考文献の数の多さは論文の評価とは関係ありません。
引用文献にならない資料について
一方引用文献として認められないものは、学会などで発表するために提出された研究内容のアブストラクトなどです。論文として発表されていなければ例えアブストラクトが存在しても文献としては使えません。また原著論文が基本とされているので、教科書や総説論文(Review Article)なども原則は使用できません。ただし教科書や総説論文の参考文献から原著論文を探し出し、原著論文から引用することは可能です。あくまで総説論文などは原著論文を探し出す手段として活用し、総説論文で記載されている内容を研究論文で使用することを避けましょう。
引用文献の示し方
次に引用方法には主に2つの主流があります。ひとつはバンクーバー方式で、もうひとつがハーバード方式です。バンクーバー方式とは引用順に番号をふる方式のことです。番号の付け方はジャーナルの規定により異なりますが、引用する順番に1、2、3・・・と番号をつけ、引用文献を記入するReferenceではその番号順に列挙します。一方ハーバード方式とは本文での引用の順番は関係ありません。Referenceで著者の苗字(First Name)のアルファベット順に引用文献を列挙します。また本文内での引用方法はそれぞれ異なるので、次に紹介します。
本文、図表での引用の仕方について
引用文献を使用する箇所は、研究テーマや筆者の仮説を唱えるイントロダクションや、研究結果から研究の考察を行うDiscussionです。筆者が行う研究の過程を示すMethodsや結果を記述するResultでは引用文献を用いることはまずありえません。 本文で先行文献の内容を記載する際、文章をそのまま直接引用するのであればクオーテーションマークで囲いその文章がそのまま引用文献先から引っ張ったものだと明確に示します。またクオーテーションマークを使用して直接引用する以外にも、文章を言い換えて(パラフレーズして)引用する方法も可能です。直接引用は多すぎると論文で強調したい部分などが曖昧になるので、「直接」引用するものを吟味し、それ以外は間接的にパラフレーズして書くといいでしょう。しかし、パラフレーズする場合には類語を使用したり英文を言い換えたりする作業があるので英語の表現力を養っておく必要があります。英文校正時には、パラフレーズしたものが直接引用と判断されないほど言い換えがされているかどうか、またオリジナルの筆者の意図を変えてしまっていないかどうか注意して確認してください。 引用文献から文章や図表、アイデアなどを引用する際はその出どころ(筆者名など)を必ず明記します。筆者の示し方や出版された年などの記載の方法は、採用する引用方式により異なります。バンクーバー方式を採用した場合は、引用文献の箇所には引用順に番号を付け、論文本文内では筆者や出版年を記載しません。一方ハーバード方式を採用した場合には引用箇所の後に(筆者名、出版年)を記載、もしくは「筆者(出版年)discusses…」のように文章の主語を筆者にし、名前の後すぐに( )で年を示します。
参考文献について
参考文献と引用文献という2つの用語がありますが、両者同様の意味に扱われる場合もあれば、論文内で引用したものを引用文献、引用はしなかったが参考した文献を参考文献というようにカテゴリー分けする場合もあります。引用した文献はもちろん、本文内で引用しなかったものもReferenceで列挙する必要があります。その際はバンクーバー方式とハーバード方式の採用した方法に則りReferenceのページを作成しましょう。