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症例報告の書き方について

症例報告の書き方について

症例報告、つまりケースレポート(case report)は、臨床診療から得られた発見や新しい知識などを発表し、医療業界の医師たちに広く認知してもらうことを目的とした論文の一種です。ベテラン医師だけでなく、研修医や若手の医師、また初めて論文を執筆する研究者にとって着手しやすいと言われています。
症例報告は医学界に直接大きく貢献できるものであり、ジャーナルに掲載された後は、履歴書にも記載できるので、キャリアアップにもアドバンテージとなります。今回の記事では、症例報告の書き方について詳述していきます。

症例報告とは

臨床診療から新たな知識や症例などが発見された場合、それを多くの医師に知らせ医学界に普及させることを目的に症例報告は行われます。医師が患者の治療にあたっている際、過去に例のない合併症や有害反応などに遭遇することがあります。それを自身の病院内だけにとどめておくのではなく、症例報告を執筆することで世界に発信することにより他の医師もその知識を得、未来の患者に対処する手段を与えることは、医療従事者の義務と言っても過言ではありません。症例報告は、診療中の観察を通して発見したことをまとめたものですので、エビデンスの重要性も高いです。また仮説を立てて行う研究論文とは異なり、新人の医師や研修医でも着手しやすく、かつ履歴書にも執筆物として記載することができる論文の一種です。 よくジャーナルが取り扱う内容としては、「珍しい所見」、「治療における有害反応」、「異常な合併症」、「現在の理論に対する疑問」などが挙げられています。それに加え新薬を投与した後の経過観察や使用例、その投薬の副作用、新しく開発された診断方法や治療方法の報告なども症例報告で発表されています。

症例報告が出版されにくい理由とは

症例報告の掲載が難しくなっています。その理由の一つは、症例報告は偶然や偏りなどが入り込んでしまうことが多く、信頼性に欠けてしまうというマイナス点があります。もう一つの主な理由は、報告する症例が稀でなければ掲載されにくく事例があるものは掲載されないからです。しかし同時に、その症例が稀であれば引用される率も少ないのでインパクトファクターが下がってしまい、結果雑誌にとっては利益をもたらす論文ではありません。症例報告の掲載の難しさは問題ではありますが、近年症例報告の専門雑誌が増えてきています。e-journalつまり、オンライン雑誌が主なので紙面での出版は少ないですが、Journal of Medical Case Reportsなどがあります。症例報告を執筆する際には症例報告を専門にした雑誌に的を絞って投稿するのも雑誌掲載への道かもしれません。

受理されやすい症例報告とは

稀な症例でなければ症例報告の雑誌掲載は難しいと前述しましたが、受理されやすい症例報告は、ただ稀な事象を記述したものでもありません。過去に未解明だったものや、新発見などを通して執筆者が他の医師たちに何を伝えたいのかが明確に記述されており、その内容を一般化することが可能であれば、多くの医師たちに利益をもたらすと判断されます。また直接新たな発見の報告ではなくても、その症例報告により新たな治療法や病気の原因などの発見につながる症例報告も受理されやすいと言えるでしょう。

症例報告の書き方のコツ

一般的には症例報告の構成は、抄録(Abstract)、序文(Introduction)、症例(Case)、考察(Discussion)、結論(Conclusion)です。研究論文と違い仮説を立てて検証するわけではないので、原則方法(Methods)と結果(Result)の項目は設けません。では、各項目ごとに記述する内容を見ていきましょう。 抄録には、症例と言及する問題、症例によってわかった内容を要約します。英文で記述する場合は350 wordsが目安でそれを超えないようにしましょう。そして序論で、取り合げる症例における問題点を概説し、必要があれば先行文献も提示します。 次に症例の書き方です。症例では、患者自身の情報および患者の病歴、検診の結果、病理テストと検査結果、治療計画、治療計画後の予想される結果と、実際に治療を行った後の結果を記述します。症例を書く際に注意しなければならない点が倫理的要件です。患者のプライバシーを守るため名前をイニシャルで記述し、写真などを提示する際は身元を特定されないものを選ばなければいけません。 考察は症例報告で最重要項目と言っても過言ではありません。なぜならジャーナルがその症例報告に出版の価値があるかどうかを見極めるのが考察だからです。考察では何故この症例は報告される必要性があるのか、この症例からどのような問題や発見が発展されていくのかを提示できなければいけません。そして先行研究と比較し既存の理論を裏付けるのか、それとも覆すのかを明記します。将来の臨床研究にも影響を与えることを論理的に明記することを心がけましょう。そして最後の結果で症例報告の要点を簡潔にまとめます。

注意点

症例報告はジャーナルによって異なったフォーマットを設けているので、投稿前にどのような規定が設けられているのか、そしてその雑誌に掲載された過去の症例報告をいくつか読みフォーマットを熟知しておくことが大切です。一般的な書き方を述べましたが必ず投稿先の規定に従うようにしてください。また症例報告も立派な学術論文です。格式高く間違いおよび口語表現のない英文で明瞭に記述しましょう。研究論文同様一般的でない医学用語やジャーゴン(業界用語)などを使用してはいけません。英文校正時には、文法やスペルの間違いを含め、複文がないか、不明確な言い回しがないか、専門用語が使用されていないかを徹底的に確認しましょう。第三者に報告書を読んでもらって英文校正をお願いすると、自分の文章の不明確な箇所などが客観的に見つかるのでおすすめです。