ジャーナルは、研究論文、症例報告(Case Report)、原著論文をまとめた総説論文(Review Article)、投稿された論文への読者からのレター、そして巻頭辞もしくは
エディトリアル(Editorial)などの様々な種類の論文によって構成されています。今回の記事では、エディトリアルと呼ばれる種類の論文について説明していきます。
エディトリアルについて
エディトリアルとは、現在重要視されている問題や、今後大きく議論されると予測されるトピックや研究に言及した論文を指します。現場からの研究内容をまとめ発表している研究論文や症例報告と違って、過去の研究内容や将来議論されるであろう問題に対して専門家が分析を行い、個人の見解を述べているのが特徴です。つまり一般的な問題やトピックに言及するものであって、特定の研究を発表するものではありません。ただし、雑誌に掲載された特定の論文内容や研究方法に言及する場合はあります。 エディトリアルは一般的な論文に比べて短く、明瞭に記述されています。短いものでは2ページほどの長さで、参考文献なども必要最低限に抑えられます。分野外の専門家や一般の読者が読んでも理解できるよう専門用語(jargon)の使用は避けられ、用いる場合はその用語の定義も併せて記述する必要があります。
エディトリアルは誰が書いているのかについて
エディトリアルは誰でも書けるわけではなく、基本的には特定の専門分野に精通する人が執筆します。学術雑誌の編集者が執筆する場合、編集者が直接専門家に依頼する場合、そして専門家が学術雑誌に投稿する場合とがあります。一般的には著名な研究者が執筆したエディトリアルが掲載される傾向にあります。その理由は、定評かつ権威ある研究者がエディトリアルで研究やトピックについて言及すると、読者はそれらに関連する論文を読むために他のページやエディションを探すからです。つまり読者の注意を引き、更にページを読ませたり過去の雑誌に手を延ばさせる効果を発揮します。もちろん無名の研究者より著名な研究者がエディトリアルを書いたほうがその効果は絶大で、ジャーナル編集者としてもその分野での著名なエキスパートからの執筆を望んでいるでしょう。しかしながら、エキスパートでなければ書いてはいけないという規定もありません。ベテランのエディトリアルが掲載される傾向はありますが、時には著名でない研究者によるエディトリアルも見受けられます。ただし研究論文が掲載された経験がない研究者や、新人研究者が書く種類の論文ではないと言えるでしょう。
エディトリアルの書き方について
前述したように、エディトリアルは短い論文で、専門外の人間が読んでも理解できるよう執筆する必要があります。またエディトリアルによって読者が他の研究論文にも目を通す効果があるのでその役割は重要です。基本的なエディトリアルの構成は、イントロダクション、Body(主旨)そしてConclusionです。エディトリアルにはアブストラクトは必要なく、最初の段落をイントロダクションとし、筆者が述べたいトピックについて言及します。この段落の最後にThesis statementと呼ばれる筆者の主張を明確に記述し、エディトリアルでの筆者の主旨を読者に示す必要があります。その後の段落で、言及した問題に関する背景知識、筆者の主張を支える論拠などを説明します。Conclusionの段落で再度Thesis statementを述べ、考えを展開し、残された課題や問題点などを述べます。以上が基本のエディトリアルの構成です。では続いてエディトリアルを書く上での留意点を紹介します。 まず第一に、読者を惹きつけるタイトルと内容であることです。エディトリアルは頻繁に読まれる論文のひとつで、これにより読者が関連する研究論文などを読むかどうかを決定するといっても過言ではありません。興味深い内容であれば読者はさらに多くの論文を読み進めると期待されるため、読者を惹きつける内容を執筆することが重要です。次に明瞭かつ簡潔な英語で執筆するということです。エディトリアルは専門外の読者や一般人も読むので誰でも理解できるような英文で書きましょう。読者や編集者が辞書を横に置きながら読まなければならない論文は、いっけん知識人が書いたもので質の良い論文のように思えますが、実は逆です。良い論文ほどシンプルな文章で明確に執筆者の主旨が書かれています。特にエディトリアルは短いので、無駄な表現を省き、主張を一点にしぼり明確に見解を書きましょう。英文校正時には、省ける表現や単語はないか、専門外の読者が読んでも理解しやすい英文か、冗長な表現はないかを徹底的に確認しましょう。英文校正には第三者に頼んで読んでもらい、客観的な意見をもらうとともに、可能であればネイティブチェックもしてもらうと安心です。