カバーレターは、研究論文を学術雑誌(ジャーナル)に投稿する際に、投稿者・著者と編集者(エディターまたはエディトリアル)が最初にコンタクトをする文書です。あなたの書いた論文が世に出るかどうかは、ジャーナルのエディターが採用してくれるかどうかにかかっています。
論文本体を書ききってやっと一息。「さて、では次は投稿だ!」となったとき、すでに論文本体に注力しきってしまったあなたには、このカバーレターを書くだけの心の余裕も労力も残っていないかもしれません。 しかし、以下に述べる理由から、カバーレターの重要性を理解し、もう少しだけ労力を割いてみませんか?
カバーレターとは、論文をジャーナルに投稿する際に、カバーレターとは
- このジャーナルに掲載するにふさわしい理由を持ち、
- 研究倫理や利益相反開示といったジャーナルの要求を満たしている、
- 実在する著者グループである。
ということを端的にまとめた文書のことです。
このような原則を押さえたカバーレターを書くことは、ジャーナルのエディターに研究内容が掲載するにふさわしいと納得してもらうためにもとても重要です。
また、体裁をきちんと整えることは、研究そのものの完成度や、文章の完成度、そしてその後の査読プロセスにおける対応をも判断するための最初の材料にもなります。以下、カバーレターで求められる内容を詳述します。
カバーレターで求められる内容
ほとんどのジャーナルで求められているカバーレターの基本的な内容と、ジャーナルによって記載が求められる内容とがあります。カバーレターには語数・文字数の指定がないことがほとんどですが、A4またはletterサイズ1~2枚程度に納めましょう。
必須項目
- 論文のタイトル
- 原稿の種別(review, case study, original article, brief communicationなど)
- 研究知見の要約(研究背景やどのような疑問に答えを見いだしたのか、といった科学的な妥当性や面白さ)
- 投稿の動機(なぜこのジャーナルに投稿しようとしているのか、読者がなぜ興味を引きそうか)
- 倫理委員会の承認
- 利益相反の開示
- オリジナリティと著者同意
- 著者の連絡先
オプション
- 関連する論文についての情報(二重投稿や”サラミ投稿”と疑われないため)
- 希望する査読者の名前と連絡先
- 査読から除外を希望する査読者の名前と連絡先
具体的なカバーレターの書き方
さて、項目が決まれば次は書式です。一般的な書き方としては以下のように書いていくことが多いです。
宛名はチーフエディター(editor-in-chief)とし、名前(タイトル付き)、所属などを左上に記載します。
Dear Dr./Mr./Ms. [エディターの苗字]
などと始めて、本文を書き始めましょう。段落構成は、SpringerのWeb siteでは以下のような形式を推奨しています。
第一段落:タイトル、原稿の種別(review, case study, original article, brief communicationなど)を記載。さらに研究背景やどのような疑問に答えを見いだしたのか、といった科学的な妥当性や面白さを簡単に説明します。
第二段落:どんなことを行って、どんな知見が得られたか、なぜそれが重要であるかを述べます。
第三段落:ジャーナルの読者がなぜあなたの研究に興味を持つのか、ジャーナルの目的やスコープに合致するかを示します。
最終段落:ジャーナルが要求する法令・規範(研究倫理など)を遵守しているかを述べて締めくくります。
そして、すべてのカバーレターが以下の文を含むように書くべきであるとしています。
”We confirm that this manuscript has not been published elsewhere and is not under consideration by another journal.
All authors have approved the manuscript and agree with its submission to [insert the name of the target journal].”
最後に送り主の名前や所属を記載します。
- 送り主の名前
- 職位
- 所属機関・所在地
- Eメールアドレス
- 電話番号: (国番号・市外局番含む)
- FAX: (国番号・市外局番含む)
最後に ~英文校正を出すかどうか~
論文を書き終えて一安心、となっているところにもうひとがんばりしてカバーレターを書く重要性を認識して頂けたでしょうか?カバーレターは、ジャーナルのエディターとの挨拶文程度の役割ですが、挨拶を軽んじる人は成功しません。必要な内容がすべて過不足無く網羅されているか、正しい英単語が使用されているか、第三者が読んでも研究内容が明確かを徹底的に確認します。そして必ず英文校正を依頼しましょう。カバーレターで使われている英語表現が粗末であれば内容も粗末であると思われてしまう可能性が高いのです。
洗練されたカバーレターを書くことは、あなたの研究を世の中に出すための最初のステップとなります。ぜひ英文校正を利用しましょう。