ジャーナルへの投稿作業は近年電子化が進み、ほとんどのジャーナルでオンラインで行うことができるようになっています。本項では、オンライン投稿時に必要な書類を 中心に解説していきます。
論文をジャーナルに投稿する際に必要な書類とは
論文原稿(manuscript)だけではなく、利益相反申告、著者グループ全員の掲載許可、著作権譲渡などが含まれます。
論文を書き終えて、「さあいよいよ投稿だ」となったときに必要書類を準備していなくて慌てることがありますので、論文を書き始めるときから意識しておきたいものです。
多くのジャーナルにおいては以下の書類が必要とされることが多いです。
- 論文原稿(Manuscript)
- 図表(特に画素数の大きな画像については論文本文とは別に投稿することが求められる)
- カバーレター
- 利益相反申告
- 著者の掲載許可(直筆サインや印鑑が求められることが多い)
- 著作権譲渡(受理後に記入することも多い)
- 患者さんからの同意書(ケースレポートであればしばしば求められる)
利益相反申告
ジャーナル指定の書式が存在すればそれに沿って記載し、なければICMJEの書式を使用するとよいでしょう。それを著者全員に記載してもらって取りまとめます。
求められる記載内容は以下の通りです。
- 著者情報(責任著者かどうか)
- 投稿中の論文に対する金銭やサービスのを第三者から受けているか
- 投稿中の論文と直接関係のない経済活動
- 知的財産(特許と著作権)
- その他、読者に影響を及ぼしうる関係について
利益相反関係の判断はしばしば困難です。直接的な利益相反関係にあれば申告するだけですが、何事にもグレーゾーンというものはあるものです。単にその研究のスポンサーであった組織から受け取ったお金だけでなく、投稿論文に関連する組織から受け取ったすべてのお金を含みます。またここでは、投稿論文以外のあなたと研究スポンサーとの関係も忘れずにリストアップしてください。疑問に思った場合には、関係を開示しないよりも開示する方が望ましいとされています。なお公的機関、慈善団体、学術機関などの公的な資金提供元については開示の必要はなく、記載不要です。
著者の掲載許可
次に著者全員から、研究内容を論文に掲載してよいかの最終承諾を提出します。ここでは以下のような内容について、承諾を求められます。
- 同一なタイトルの論文およびその論文の内容が過去に他誌含め掲載されていないこと
- 同一なタイトルの論文およびその論文の内容を他誌含め掲載する予定がないこと
- 自己申告による利益相反報告書の内容が正しいこと
オンラインでの投稿では、こうした内容について、著者全員から承諾をもらってサインをもらったものをスキャナーで取り込んでPDF化し、提出することが求められます。紙媒体での提出、というのは近年めったに見かけなくなりましたが、紙で提出する場合にはそのまま提出すればよいことになります。
患者さんからの同意書
ケースレポートなどでは特定の患者さんの体の一部の映った写真を画像として使用したり、個人が特定される情報は直接は入っていないがかなり限定的な情報を含むことがあります。こうした場合に患者さん本人から直接同意を得たことという証拠を、ジャーナル側が提出を求めることがあります。この場合、患者さん本人の署名入りの書類はジャーナル側には提出しません。(→Lancetのinformation for authors)国や地域によって法や規制が異なるため、提出する側の責任においてフォームを作成し、提出することになります。
ジャーナルにおいて特定の書式を求められないことも多いため、所属機関指定の同意書を準備して患者さんに署名してもらうことも合わせてお勧めします。
最後に
論文投稿のためには論文原稿以外にも著者全員のサインやCOI開示書類の提出が求められることが多いです。論文の受理をもってして学位授与が決まるような場合、それが足かせになって期限に間に合わなかった、というケースも耳にします。論文を書くことが決まった段階で、必要書類の確認と、全体としてのスケジュールを組んでおくことをお勧めします。