長かった査読者とのやりとりが終わり、ようやく受理(accept)の通知を受けとると、やがて編集部から連絡が来ます。まさに「もう一仕事」という状況なのですが、有終の美を飾るためにもここはおろそかにすることはできません。今回は、論文の雑誌掲載が決定された後の流れについて見ていきましょう。
受理が決まったあとの大まかな流れ
論文受理の知らせは責任著者(Corresponding author)または共著者全員にメールで知らされます。
少し経ってから編集部から、著者自らが行う校正についての依頼が来ます。
基本的には内容的に修正すべき事はほとんど無い、というのがこの段階の前提です。
そのまえに編集部でどのような作業が行われているのかを説明しますと、
- 受理(accept)決定、著者へ連絡
- →編集校正作業のために制作部に論文原稿が送られる
- →制作部において校正作業、書式を整えるなどの作業
- →確認のために著者に最終版の校正原稿が送付される
このプロセスの早さは雑誌によってまちまちですが、大体1ヶ月程度のことが多いようです。
アクセプトから出版までに数週から数ヶ月を要することもあるのです。
そして最終的に皆さんの手元に編集部・制作部の手によって加工された論文原稿の最終版が校正依頼とともにやってくるというわけです。
著者による校正が許される事項
この段階で行うべき事は、内容に踏み込むことは原則的にないものと理解しておきましょう。
著者リスト、所属、利益相反、などに間違いが無いかを徹底的に確認します。この段階で論文の内容の中にマイナーなミス(綴り、参考文献リストの番号など)を見つけてしまうことがあるかもしれません。
この程度の修正であれば校正での修正で許される範囲と言えるでしょう。
ただし、内容に関すること(表の数値やグラフそのものなど)については校正の段階での修正ではなく、編集部に直接メールで訂正箇所を伝えてみた方がよいでしょう。
なぜなら著者に与えられる時間は48時間程度とかなり限られているからです。
校正原稿を提出したあとにミスに気づいたら
まずはこうしたことが絶対に起こらないようにすることが基本です。
しかし見つけてしまった場合にどうなるかは知っておく必要があります。
まず、最悪の場合は論文取り下げです。
致命的な解析ミスにより結果が全く異なるものになった場合などがこれに当たります。
研究者のキャリアに傷が付きかねないのでこれは絶対に避けたいところです。
しかしこれは校正以前の問題であり、解析の体制を二重にするなどミスが生じない工夫を研究室として取り組む事が重要です。
次に大きな作業を要求されるのは、正誤表(erratum)の発行です。
オンライン出版されている場合などは次号で正誤表を出してもらえるようジャーナルに依頼することになります。
校正が終了した直後であればすぐに編集部にメールをしましょう。
そのまま校正の一部として認めてもらえれば上記のような面倒な手間を要することはありません。
短い期間で比較的多くの修正を余儀なくされたら
校正段階でも許容範囲と考えられるような修正をしたい場合であっても、その修正が出版までの最終便になることを考えると非常に慎重に取り組む必要があります。
受理されても出版までは気を抜いてはならないのです。
緒言や方法の記載など、論文の結果や結論に大きく影響しない修正であった場合、比較的多くの英文を記述する必要があるならば英文校正を依頼するほうがよいでしょう。
しかしこの校正の段階では大幅な変更は原則的に行ってはならないと考えておいた方がよいでしょう。
まとめ
アクセプトされた論文原稿の校正依頼が来た場合は、とにかくこれが最終便であることをしっかりと念頭において対応することが重要です。
そしてその作業に許された期間はそれほど長くありません。
最悪のケースである論文取り下げにだけはならないよう、しっかり最終確認をするとともに誤字脱字、参考文献リストの整合性、著者リストの最終確認を怠らないようにすることが重要です。
これが終われば晴れてあなたの論文は世界に向けて発信されることになります。
最後の最後まで気を抜かないようにきっちりと仕上げましょう。