論文が受理(accept)されたあとにいくつかの追加的なオプションがありますが、そのうちのOpen accessと別刷り印刷についてとりあげてみたいと思います。
Open accessとは
そもそもジャーナルに投稿する際に、そのジャーナルがオープンアクセスかどうかを確認してから投稿すると思います。完全なオープンアクセスジャーナルであれば他に選択肢はないのですが、オープンアクセスが選択できる、ハイブリッド型と呼ばれるジャーナルがあります。
そしてハイブリッド型のジャーナルで、アクセプトが決まった後にオープンアクセスにするかどうかの選択肢について連絡がきます。
「オープンアクセス」になるとどのようなメリットがあるのか、というと
- 出版後すぐに、研究をどこででも共有できる
- 資金提供者からの”オープンアクセスでの出版” という条件を満たすことができる
- 出版後、自らの研究の著作権を保持できる
- 論文のダウンロード数、引用ともに増える
その反面、数10万円程度の比較的高額な論文掲載料の支払いが必要となります。
なお、ピアレビューのプロセスや論文の体裁などは通常の出版と同じです。
オープンアクセスが必要な状況
論文が出版されるのであれば通常の出版でもオープンアクセス型であってもかまわない、と考えがちですが、実際には学会や所属団体、資金提供元やデータ提供元の意向によって、Open accessでの出版を指定されることがあります。
これは上記のように多くの人に見てもらえる可能性が高く、特に公的な研究費を使った研究では公益性が求められますのでOpen accessが望ましいでしょう。
外部の資金援助を受けて行った研究において、特に医薬品の効能効果を示すようなエビデンスに関する論文も、できるだけ迅速な出版を求められますので、Open accessが選択される場面は少なくないでしょう。
別刷り印刷の発注
論文出版が決まった後、出版社に注文しておくと、自分の論文の掲載されたページだけが印刷されたものを冊子として購入できます。これを「別刷り(抜き刷り:offprint)」といいます。
かつてはこの別刷りを購入する、という行為は研究者間ではとても一般的な行為でした。しかし近年はほとんど購入することがないようです。1つにはインターネットの普及が大きいでしょう。PDFでダウンロードすれば事足ります。
近年では紙媒体自体を廃しているジャーナルも増えてきつつ有り、「別刷り」自体のあり方も変化してきています。
一部の大手出版の雑誌では著者に別刷りを無料配布したり、何回かのダウンロードは無料というシステムを採用しているところもあるようです。
しかし、こうした問題もOpen accessであればいくらでも読みたい人に配ることができます。
“所有”の時代から“共有”の時代へ
かつての日本の高度成長期やバブル経済を経験した人が口々に「最近の人は車を持たない」「物欲がない」などと言うのを耳にします。
かつてよりも収入そのものが少ない、伸びない、といった背景もありますが、新しいものが次々に生み出され、
すぐに陳腐化する、ということが根底にあって、Open source、Sharing economyなどのキーワードが並ぶようになってきたのでしょう。
学術の世界でも知識が塗り替えられるスパンは一昔前に比べて随分と短くなっています。そういった時代的な背景がオープンアクセスを加速させてきました。
自分が発見したことをいち早く“share”することこそに価値が置かれている。そんな時代に私たちは生きているのかもしれません。