学術雑誌(journal)への掲載は、査読者による評価を基にして編集者が最終的に掲載するかどうかを決めることになります。今回は、論文の査読が終了したあと、採択の可否がどのように決定されるかについて見ていきましょう。
論文採択基準と査読結果
まず、ジャーナルの論文採択ポリシーについて説明します。それは、
「多少の欠点があっても、学術の発展、あるいは医療の進歩に何らかの意味でよい効果を及ぼす内容であるなら採択する」
というものです。もちろん、話題が読者の関心を引きそうなものを中心に査読に回していることが多いですので、この段階では、
- 科学的に興味があって読者の興味・関心をそそる内容
- 学術や産業の発展に寄与する内容
という二つの条件を持っていることになります。
このとき、「多少の欠点があっても」の部分と「新規性や学術的な重要性」の間でバランスを見ながら採択していくことになります。そして不完全な部分が目立つときや、どうしても許容できないような不備があれば、査読の中でそれらを指摘し、著者に適切に対応してもらうことになります。
査読者が著者に対して「査読報告書」というのを提示して著者がそれに返答する形でrebuttal letterを出します。そして最終的にそのやり取りを基にして雑誌編集部が最終的な採択を決めることになります。
査読報告書に記入される内容
査読報告は雑誌ごとに提出期限が決まっていますので、その期限内に査読を行います。査読の結果を記入する査読報告書は以下のような構成になっています。
- 論文の概要と優れている点・改善が望まれる点をサマライズして記述
- 修正条件を明確に記述(原則的には新たな条件を次回以降の査読に追加できない)
- 不採択と判定する際に、新規性なしとする場合、その根拠となる研究論文などの例示をする
このような点について査読者がコメントを返してくるのです。それに対して著者がどのように対応したか、指摘された点について丁寧に返答していき、最終的なジャッジに到達することになります。
さらに、論文の総合評価に関してのチェックリストがあり、その結果も合わせて編集者に伝えることになります。採択するに足る十分に妥当な方法で行われた研究であるか、読者をひきつける新規性があるか、などについていくつかの項目について何段階かの評価を下していきます。
逆にこれらを踏まえて不採択となる理由をきちんと理解しておくと、採択率が上がる可能性がある、ということになります。
不採択になる理由
論文の不採択理由として、メジャーなものは以下のものがあります。
- オリジナリティ、重要性の欠如
- ジャーナルのスコープに合わない(この場合は査読にさえ回らないことも多い)
- 研究デザインに欠陥がある
- 文章、構成が不十分
- 論文の準備が不十分(書式が守られない、必要書類がそろっていないなど)
- ジャーナルの編集部がある特集などに向けて特定の領域の論文を集めていた
これらは必ずしも査読者の判断を待たずに編集部によって下されるものも含んでいます。たまたまジャーナルの編集部の都合で採択されないこともあり、そういう場合には仕方がないですが、書式、必要書類、適切な方法、など研究者の努力で改善できることはたくさんあります。
明言されていないことで不採択になる可能性の高いジャーナルの特徴
これまで説明した内容は、表向き多くの人が納得するような内容であったと思いますが、査読も編集も最終的に人の手を通じて行われるため、評価者の「心象」というのも実は地味に効いてくる場合があります。
上記の理由のうちの「論文の準備が不十分(書式が守られない、必要書類がそろっていないなど)」の中には、誤字脱字、レイアウト、言い回しなどが暗に含まれています。しかし、英語が第二言語である日本人にとっては適切な英語が使われているか、というのも重要な因子になります。これらは査読者からは必ずしも明示的に指摘されないことも多いため、不採択になった理由がよくわからない、というケースではそういった観点で論文を見直すことも重要です。
まとめ
論文がジャーナルに採択されるかどうかがどのように決まるかについて説明しました。
その分野において新しい知見を含み、科学的に妥当な方法で実施され、ジャーナルの指定する方法できちんと整えられた論文が採択される可能性が高い、と結論付けることができます。
しかし、これは研究デザインを決めるときに検討すべきことがほとんどであることに気が付いたはずです。研究を始める段階でいかに論文化することまで含めて考えられるか、ということが非常に重要です。
しかしそれだけではなく、文章の体裁をきちんと整えることにも細心の注意を払うべきです。
上記の点を参考にして論文を細部まで仕上げていきましょう。