一口に医学雑誌といっても商用雑誌から学術雑誌に至るまで様々です。一般的にアカデミックな成果いう意味では、査読付きの学術雑誌に掲載されることが評価対象とされることが多いのですが、商業雑誌の価値が全くないという訳でもありません。今回は、査読という観点で医学雑誌を改めて分類し、その違いを説明しながら論文掲載に至る仕組みについて解説します。
そもそも査読とはなんでしょうか?
Peer reviewとも言われるこのプロセスは、論文を雑誌に掲載するかを決定する上で非常に大きな役割を果たします。なぜなら、その学問分野の専門家による評価が行われるからです。ある論文がジャーナルに掲載される価値があるかどうか、編集者が決定するのに役立っています。研究内容が世の中に与えうるインパクト、研究の質、結果の信頼性などを総合的に評価してジャーナルに採択されるわけです。
ではまず、この査読プロセスを経ない雑誌について、その違いを見てみましょう。
非査読雑誌の代表、商業雑誌について
査読プロセスを経ることのない雑誌、多くは商業雑誌と呼ばれるものですが、これはその道の専門家による総説(narrative reviewと言われるもの)や特集などに合わせて代表となる専門家が、関係者にアナウンスして記事を寄せてもらったりすることが多いです。
この商業雑誌のよいところは、
- 専門家の監修のもとに読者が興味を持ちそうなテーマに沿ってまとめられている
- 必ずしもエビデンスベースではないにしても、その道の専門家による叡智が学べる
- 特に国内の実情に合わせたトレンドを確認できる
こうした点で商業雑誌も十分読み応えがあると言えます。しかし、その反面、次のような欠点もあります。
- 異なる立場の専門家による監修が行われないために偏った内容になる可能性がある
- 研究方法の妥当性、信頼性が担保されにくい
- 世界標準からかけ離れた内容になっている可能性がある
お気づきのように、これらは利点として挙げたポイントを別の見方でみた評価になります。つまりは査読の有無にかかわらず、その雑誌をどのように活用するかは読み手にかかっている、という見方もできるかと思います。
そして査読を要する医学雑誌の大半は今や英語によって書かれています。当然ながら母国語でない我々日本人にとっては英文校正を駆使して正しい文章を書くように心がけねばなりません。論文投稿規定にもそのように書かれていることがスタンダードです。
なぜ査読制度があるのか
査読の有無にかかわらず、読み手がその利用方法を考えるべきである、という一方で、やはり査読という手間のかかる工程を経るにはそれなりの理由があるからです。
一体どうして、査読制度というものがあるのでしょうか?
もともとは、投稿された論文は雑誌編集者によって掲載の可否が判断されていました。しかし、学問分野の専門分化が進み、論文数が増加するなかで、論文の選別の段階において各分野の専門家に関わってもらう必要が出てきたのです。しかしあくまで査読者は、研究の質については批評的に評価するだけであって、論文を最終的にアクセプトするか否かは、雑誌の編集者が判断するということです。
査読の方法
どのような査読が行われているかは、ジャーナルによって様々です。
- シングルブラインド:著者は誰が査読者かわからないが、査読者は誰が著者かわかっている
- ダブルブラインド:著者は誰が査読者かわからず、査読者も誰が著者かわからない
- オープン・ピアレビュー:著者、査読者とも相手が誰かわかる
などがよく知られていますが、時に出版後に査読することがあります。いずれにしても、査読の主たる目的は、研究の妥当性を確認し、その論文が科学的なインパクトを持つことを確認することです。
査読の問題点
査読のプロセスも完璧なものではありません。出版までに時間がかかる、査読者の個人的な意見により影響される、盗用(アイディア、内容、文章、グラフィックデザインなどを含む)の可能性がある、利益相反の恐れがあるといった問題点が指摘されています。また、査読自体は通常、研究者による善意かつ無償で行われるにもかかわらず、その手間や労力は無視できません。査読が無料で行われるべきものかという点で、研究者の見解は様々です。
まとめ
今回の記事では、医学雑誌の中の査読・非査読雑誌の利点欠点や使い分けとともに査読プロセスの現状と問題点についてまとめました。
査読は様々な問題点が指摘されてはいるものの、科学的な妥当性や信頼性を担保する最も強力な方法です。
その一方で、査読のない商業雑誌も一定の利用価値を持つため、その利点と欠点を理解して利用するようにすることが大切です。