論文を執筆する際に、アブストラクトや本文の前に、「タイトルページ」というセクションがあります。論文の構成のなかでは目次の役割を果たします。
「なんだ目次ぐらい」
と思われがちですが、情報に不備があれば次のステップに進めませんので、まずこのTitle Pageをしっかり準備することが大切です。
投稿先の規程に沿って用意すれば、それほど手間のかかるものではありません。
1.一般的なタイトルページの要素
論文のタイトルページには以下の項目を記載することが一般的です。
- 論文のタイトル
- Running head または short title
- 著者名
- 所属名
- 連絡著者(corresponding author)の連絡先
論文のタイトルには試験デザインに関する用語を入れるようCONSORT声明やSTROBE声明等で求められています。
Running headとはジャーナルによって字数制限が異なりますが、完成した論文のタイトルを短縮したもので、完成論文の欄外(ページ上)に印刷される簡略標題です。ここで字数制限はWord count(語数)ではないことに注意が必要です。
著者名は筆頭著者からcontributionの高さに応じて名を連ねていきます。最後に研究責任者やプロジェクト責任者の名前を入れることが多いかと思います。
所属は人によっては複数ある場合がありますので、著者名の右肩に数字を入れて所属名を著者名のリストのあとにまとめてリストアップするスタイルが一般的です。所属組織を記入する際に迷うのは、研究実施時点と論文執筆時点にずれがある場合です。
一般的には現在所属している機関だけでなく、研究当時所属していた機関・組織、所在地も記載することが一般的です。部署名、機関・組織名に略語は使用しないようにしましょう。
連絡著者は論文投稿、査読者や編集者とのやり取りをする人のことです。筆頭著者が兼ねる場合もありますが、研究代表者が務めることもあり、その分野や所属組織の慣習に従うことになるかと思います。連絡著者の連絡先としては、氏名、電話・ファクス番号、メールアドレスを記載することが一般的です。
2.何より大事なタイトルの決め方
タイトルは論文の顔です。
「論文で一番主張したいこと」が凝縮されていなければなりません。タイトルの決定は、本文を書く前、書いている途中、書き終わってからといろいろなタイミングがあり得ます。一般的には本文を記載し終えるころには論旨が明確化してくるのでその時点で見直しをするとよいでしょう。
逆に、本文を執筆し終えてタイトルを考えている間に、本文の主張がぶれていることに気づいたりすることがあります。そんなときにはもう一度全体を見直し、主張に一貫性があるかどうかをよく検討しましょう。
また、文字数などジャーナルの投稿規定をよく確認することは重要です。それぞれのジャーナルには特定に決まり(投稿規定)が存在します。例えば、ジャーナルによってタイトルの書き方に対する注意事項が明記されているケースもあります。
もっとも重要なことは、報告する以上の内容に”盛る”ことなしに、事実に即した内容であること、そして読者の興味を引くようなタイトルにするべきです。実際にはとても難しい作業ですが。
3.タイトルページに記載することを求められることがある要素
上記以外にもタイトルページに求められる要素はジャーナルによって様々です。一般的には以下のような項目を記載することが求められることがあります。
- Financial support: 研究を実施するための資金の出どころについて記載する
- Conflict of interest:研究費、機器、薬剤の提供元などを含む利益相反 (COIがない場合もその旨を記載する。)
- 統計解析・英文校正など論文執筆の際に受けたサポート
- 本文の総単語数
- 図表の数
- キーワード
Financial supportでは、研究のために支給された助成金や提供された薬剤・機器の明示が求められます。
“This study was supported by a grant (No. XX) / YY company. ” など簡単に記載します。
Conflict of interestでは、その研究と関係すると考えられる場合も含めて、論文の客観性に影響する可能性を持つ利益相反について述べます。
ない場合には、“The authors declare no conflicts of interest associated with this manuscript.”, “The authors have no conflicts of interest directly relevant to the content of this article.” などと記載します。ジャーナルによって記載するセンテンスが決められている場合もあるので確認してください。
利益相反があるかどうかは投稿そのものを妨げるものではありませんのでご安心ください。
そのほか、英文校正などもここに記入する場合もあれば、最後の謝辞(acknowledgement)に記載する場合もあります。
本文の単語数や図表の数も規定通りになっているかを確認するために記載が求められる場合があります。
キーワードは本文と関係する3~5個程度のフレーズを記載します。
まとめ
タイトルページは論文の顔になりますので、本文同様気を抜くことなく記載しましょう。詳しくはジャーナルの投稿規定をしっかりと読み込むことが重要です。すべての要素がそろっていることを確認してから英文校正に提出しましょう。