研究成果を発表するならば学会発表や商業誌ではなく、原著論文にこだわりたいものです。今回は、原著論文の構成についてご説明します。
1. 原著の構成
原著論文は、研究の背景や方法から考察まで、決められた約束に則ってもれなく記載する必要があります。
この「決められた約束」というのが、IMRAD方式と呼ばれる構成になります。
IMRADとは、
- はじめに(Introduction)
方法(Methods)
結果(Results)そして(And)
考察(Discussion)
の頭文字をとってそのように呼ばれています。
今やIntroduction, Materials and methods, Results, and Discussionに分けて、そしてこの順番で研究論文を書くことが主流です。
もちろんジャーナルによってはこの順番通りでなく、IntroductionのあとにすぐResults、そしてDiscussionを終えてから最後にMethodsという構成をとるなど指定してくる場合がありますので投稿規定を確認してください。
2.IMRAD方式について
ここでは、それぞれのセクションにおいて書くべきポイントに触れたいと思います。
【Introduction】
今回の研究が、これまでの研究の中でどのように位置づけられるかを述べる役割があります。
研究を行うに至る背景・位置づけで行われた研究であるかを分かり易く説明します。
既知→未知→目的と流れるように記載するようにしましょう。
このセクションは、最終結論に向けての重要な「伏線」になりますので、文全体の構成を意識した内容にする必要があります。
最後まで書いた後に、もう一度じっくりと振り返ることをお勧めします。
【Methods】
このセクションでは、どのような対象者に対して、どんな薬剤や介入が、対照と比較して、どのようなアウトカムに違いが生じることを検討しようとしているのか、詳しく述べます。
Participants(対象者)、Exposure(曝露因子)あるいはIntervention(介入)、Comparison(対照)、Outcome(結果)にそって定義するようにしましょう。
1)Participants:どのような患者群を対象としているのか、詳しく述べます。
2)Exposure、あるいはIntervention:曝露因子あるいは介入因子について定義します。曝露因子として何かの薬剤を使用しているかどうかについて述べるときには、いつから情報を収集して使用しているかを判断しているのかなどについても定義するようにしましょう。
3)Comparison:何らかの介入に対する対照の置き方はプラセボもしくは既存の広く行われている治療法になりますが、これも時期や量などについて詳しく定義する必要があります。
4)Outcome:評価項目のことを指しますが、原則として1つの主要評価項目を指定します。そしてその評価項目を誰がどのように評価するのか、についても定義する必要があります。例えば、主観的な痛みやQOLなどのスケールを、研究者や主治医が評価すると、悪い評価をつけづらいかもしれません。
論文に書いてある方法に従えば、他の研究者もその論文で得られた結果を再現できるよう詳しく方法を記載します。
【Results】
結果のセクションでは、上記の方法で述べた通りの順番で結果を示すようにします。
ここでは解釈や考察を交えずに結果のみを記載しましょう。論文を書き始めた人にありがちなこととして、事実と考察を混同してしまうことがあります。
また、結果を本文中に書くときは、図表で記載されていることをそのまま載せることは避けたほうが良いです。
多くの論文の投稿規定にそのように記載されていますが、重複記載とみなされてしまいます。
【Discussion】
イントロダクションで提起した問題に対する答えや解釈を与えるのがここのセクションの役割になります。
結果を受け、考察を述べます。ここではしっかり序論で述べた問題提起と関連させること、つまり伏線の回収が重要です。
そして次のような段落構成にするようにすると読みやすいです。
- 主要な発見についての簡潔なまとめ(第1段落)
- 新規性について、過去の論文との比較(第2段落)
- 特に重要なポイントについて、結果の解釈、生物学的メカニズムについて説明(第3段落)
- 研究の限界と将来の研究への橋渡し(第4段落)
- 結論(第5段落)
メカニズムの説明に複数の段落を要することもあり、この限りではありませんが、上記のようにするとまとめやすいでしょう。
3.まとめ
原著論文のIMRAD方式について解説しました。
このような原則に従って、まず最後まで書ききってみることが重要です。そしてメンターと幾度となくディスカッションをして、問題を指摘→修正の繰り返しを経て、英文校正にだすようにすると最終的な原稿がきれいに仕上がるでしょう。