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『方法(Methods)』の書き方

『方法(Methods)』の書き方

1830781_s論文の中で最も正確で詳細な記載が求められるのが方法、methodsセクションです。論文を書き始めるときに最初に取り組む部分と定めている研究者も少なくないと思いますが、今回はこの部分で記載すべきことをまとめてみました。

 

1.研究デザイン

研究デザインは、大きく分けて介入研究なのか観察研究なのか、そして観察研究であれば前向きに情報を収集したものなのか、既存の情報を用いた後向きの研究なのかに分かれます。

介入研究であればランダム化や盲検化の有無について記載が必要ですが、それについては後述します。

観察研究の場合には情報の収集スタイルに分けて前向き研究と後向き研究に分かれますが、さらに研究デザインとして、コホート研究なのか、症例対照研究なのか、といった詳しい記載も必要です。

コホート研究とは、目的とするアウトカムをまだ起こしたことがない人で、将来そのアウトカムを起こす可能性がある人達を集めて観察する研究を言います。

アウトカムをこれから生じうる集団(at-risk集団)に対して、アウトカムが生じたときにもれなくとらえることが重要ですので、途中で脱落したり、アウトカムが生じたのに報告されないなどの事態が発生しないことが重要です。こうしたフォローアップの仕方についてもしっかりと記述することが大事です。

症例対照研究とは、アウトカムを生じた人と、アウトカムを生じなかった人とで背景にどのような違いがあるのかを調べる研究です。このとき、アウトカムを生じなかった集団(対照群)をどのように集めるかによってバイアスのリスクが異なりますので、その説明をきちんと行うことが重要です。

他にも、疾患や予後を予測するルールや数理モデルを作成する研究などもあります。

研究デザインによって報告の仕方が異なりますので、介入研究であればCONSORT (http://www.consort-statement.org/)、観察研究であればSTROBE (https://www.strobe-statement.org/)、予測モデル研究であればTRIPOD (https://www.tripod-statement.org/)などの声明をよく読んで、方法を記載するようにしましょう。

 

2.倫理事項

研究倫理については、国際的な医学研究に関する倫理指針である、ヘルシンキ宣言に則ることが重要です。

そこでは、被験者保護の原則として自己決定権の尊重、インフォームドコンセントの重要性、被験者の福祉と利益は常に最優先事項とし、科学・社会的興味は後回しにしなければならないとしています。

これを論文中にはっきりと明示しなければジャーナルとしては受け付けてくれないでしょう。

次に、各国での指針あるいは法令に基づいて研究を実施ていることも述べます。具体的には施設倫理委員会において倫理審査を受けた研究計画書に基づいて研究を実施していることを述べましょう。

 

3.対象者の選定方法

適格基準と除外基準について記載します。

介入研究においては、適格基準を満たすかどうかのスクリーニングを終えた後に研究についての説明をし、同意を得られた人を組み入れます。

このスクリーニングを行う段階では具体的に適格基準と除外基準が決まっていなければ研究対象者を正しく選択することができません。

この取り決めが緩いと研究を実施してから組み入れるべきではなかった人が入ってしまうことがあるため、特に慎重になる必要があります。

研究計画書の中で厳密に定義してあれば論文に記載するのは全く問題ないですね。

 

4.ランダム化と盲検化

ランダム化の方法はいくつかあります。単純ランダム化、ブロックランダム化、クラスターランダム化・・・などなどです。

詳しい解説は正書をご覧になっていただければと思いますが、どのようなランダム化を行ったのかを記載することが必要です。

また、盲検化についても、被検者だけなのか、被検者だけでなく評価者もなのか、事前に取り決めた通りに記載しましょう。

ただし、盲検化が難しい研究もあります。特に目に見える介入は難しいです。何かの指導方法の違いや処置の仕方などです。

薬剤の投与についてはプラセボ(偽薬)を使えば盲検化することができます。

手術についてはシャム手術が行われる場合も想定できますが、倫理的に認められるかどうかが課題です。

 

5.評価項目

評価項目は通常は主要評価項目と副次評価項目などに分かれることが多いですが、どのようにアウトカムを設定したかについて記載しましょう。

そして、アウトカムに達しなかった人たちはいつまで追跡したのか、追跡が不能となったのは何人いて、どのような理由で脱落したのかについて記載することが必要です。

 

6.統計法

図表にまとめた結果をどのように導き出したのか、統計学的な観点から解説します。

解析集団を曝露あるいは介入因子の有無に分けて背景を記述する場合にどのような要約統計値を用いたのか、どのような統計手法を用いたのかを詳しく記載しましょう。

 

まとめ

方法の記載は、具体的かつ正確に行うことが肝心です。

この部分は研究を計画した段階でほとんどの記載ができてしまいますので、論文を書き始めるときに最初に取り掛かることができます。

上記の項目をもれなく記載した上で英文校正に提出しましょう。