今回は論文の「考察」(=discussion)の書き方についてです。いうまでもなく方法と結果が論文の中心的な存在ですが、考察は結果をまとめ、意味づけをする上で非常に重要な役割を果たします。段落ごとに役割を持たせることを意識するようにするとよいでしょう。
1.考察の段落構成
「考察」の段落構成は一般的には以下のように分けることが推奨されていることが多いです。
- 第1段落:最も重要な情報のサマリー
- 第2段落:関連する過去の研究結果との比較を通じて論文の位置づけを述べる
- 第3段落:メカニズムに関する考察
- 第4段落:研究の限界点
- 第5段落:結論(conclusion)
重要な点としては、イントロダクションで問題提起した疑問を解消しているか、あるいは仮説を証明することができているか、ということを意識することです。
いうなれば、物語でいうところの伏線が回収できているかどうか、ということになります。
これがちぐはぐにならないようにするだけで一貫性のある論文にすることができます。文章全体の流れについては英文校正に出す前にしっかり確認することが重要です。
2.各段落のポイント
次に、各段落の記載ポイントについて説明します。ここでは各段落、としていますが、メカニズムに関する考察などは複数の段落にまたがることもあります。
1.最も重要な情報のサマリー
ここでは重要ポイント2~3個に絞って述べるようにします。イントロの最終段落で提示した目的と整合性があうかを必ず確認しましょう。イントロの最後の部分で提示した問題提起が最も重要ポイントですので、この部分を変えるならイントロを全部変更しなければならないことになります。
重要なポイントを最初にズバッと述べ、その結果のインパクトを強調する文章を続けていきます。(~という点においてはじめての研究である、など)
2.関連する過去の研究結果との比較を通じて論文の位置づけを述べる
続いて次の段落では過去の関連する研究との対比を通じて意味づけをしていきましょう。
過去の研究において見出されたことをさらに一歩進める研究になった、過去の研究では含まれなかった集団を含んでいる、新しい実験手法や解析手法を用いた、などの利点を、文献を引用しながらうまく対比しながら論じるようにしましょう。
3.メカニズムに関する考察
今回の研究結果を受けて、なぜこのような結果が導かれたのか、そのメカニズムや意義などの「結果の解釈」を述べる部分であり、中心的なパートの1つであると考えてよいでしょう。「結果」と「解釈」を分けて記載することの重要性はどれだけ強調してもし過ぎることはありませんが、この考察部分でしっかりと解釈を述べるようにしましょう。
あらかじめ立てた仮説をどのように説明するのか、ということに注意を向けながら書き進めることがポイントです。
そして研究を行ったことによって明らかになったことがあるとすれば、新しい仮説を提唱することのもよいでしょう。基礎研究の結果や動物実験の結果、あるいはまったく異なる分野の結果を引用しながら、一見無関係に見える事象同士の共通点や相違点を明らかにしながら新しい概念をまとめます。
4.研究の限界点
どんな研究にも限界が存在します。基本的には3つほど挙げるようにしてみてください。レビュアーからの指摘に従ってもっと増えることも往々にしてありますが、初稿段階では3つまでにとどめておくのもよいでしょう。
そして限界は言いっぱなしにしないことが重要です。「確かに~であるが、我々の研究は~という点でその弱みを克服、あるいは逆に利用して結論の頑健性を示している」といった形で、必ず反駁するようにしましょう。
限界は論文の価値を逆に認識させるチャンスでもあるのです。
5.結論(Conclusion)
冒頭で述べた内容と一致させるように結論を短く述べます。ここではだらだらと書き連ねることなく簡潔にまとめるようにします。最後にその結論の意義を軽く添えてもよいでしょう。
まとめ
考察の書き方についてまとめました。①最も重要な情報のサマリー、②関連する過去の研究結果との比較を通じた論文の位置づけ、③メカニズムに関する考察、④研究の限界点、⑤結論(conclusion)のそれぞれの要素に関してポイントとなる事項をおさえて研究論文を仕上げていきましょう。
書きあがったら上記のポイント通りに書くことができているかを自問自答し、必要な修正を加えたのちに英文校正に提出しましょう。