優れた研究論文には印象深い図表があるものです。論文を読むときに、本文に目を通さず図表だけ読む、という人もいるくらいですから、非常に重要なセクションになります。今回は、その図表の示し方について説明したいと思います。
1.図表の役割
図表次第で、論文の説得力は全く違ったものになります。査読者や編集者の判断にも影響するでしょう。
特に、異なる分野の研究者が多く読むようなトップジャーナルに投稿するときは、一目で内容がわかり、印象に残るような図表を準備することが重要です。
本文を書くのと同じくらい、いやむしろ図表に全集中するべき、という研究者も大勢います。
「図表」は図(=Figure)と表(=Table)を指しますが、それぞれに重要なポイントは異なります。
図の利点としては、優れた図であれば論文全体の内容を瞬時に把握できるという点でしょう。そして査読者や編集者へのアピールになります。
また、定量的な結果だけでなく、定性的な結果を表現するのにも役立ちます。つまり、色味の違いがそのまま読み手に伝わるために数値化する必要がない、ということです。しかしその反面、盛り込むことのできる定量的な情報(数値など)には限りがあります。
一方で表は、定量的な情報を多く盛りこんで整理するのに優れています。しかしその反面、情報過多に陥りやすく、何を主張したかったのか、ぼやけてしまうという危険性もはらんでいます。
一般的には最も強く主張したい内容は図の方が好ましいでしょう。
2.表作成の注意点
表のレイアウトは、図に比べるとシンプルなため、工夫の余地がないように思われがちですが、実際には以下のようなポイントに注意しながら作成します。
- 縦列と横列に何を置くか
- どのグループで括るか
表も工夫次第で印象ががらりと変わります。
また、表の作成においては以下の点に注意しましょう。
- 表の各列・行の先頭には項目名を入れる。内容を説明する必要がある場合や略語のフルスペルアウトは脚注に記載。
縦の罫線は引かない。(引くことができる罫線は、表の上下と、項目名の行と数値を区切る横の罫線の計3本だけ) - 脚注のシンボルは投稿規定を確認すること。(例えばに引用文献*よると、 *(アスタリスク), †(ダガー), ‡(ダブルダガー), §(セレクションマーク), ||(パイプ), ¶(パラグラフマーク)の順に使用)
表の数も投稿規定を確認すること。
*Robert Bringhurst (2005). The Elements of Typographic Style (version 3.1). Point Roberts, WA: Hartley and Marks. pp 68–69.
3.図の作成方法
図の作成はエクセルやパワーポイントでも可能ですが、作図専用ソフト(Adobe社のIllustratorなど)の使用をおすすめします。
線の太さやフォント、表のサイズ、縦軸や横軸の目盛りの位置など、非常に細かくこだわる人が多いです。自身の研究の魅力を伝えるためにも細部まで手を抜かずに仕上げていきましょう。
図の作成ポイントを挙げます。
- ジャーナル指定の画像フォーマットや画質を確認 (画質の向上はご法度)
- 高画質のデジタルプリントで提出
- 診断画像や病理診断標本、顕微鏡写真の画像は高解像度の写真画像ファイルを準備
- 図はそのまま掲載されるため、図中の文字、数字、記号は論文内で統一し、出版時に縮小しても判読可能な大きさのものにする
- カラー版の図を作成する場合、カラーコードも確認する
- 顕微鏡写真には、内部スケールマーカーを入れる
- 使用する記号、矢印、文字は写真の背景から目立つようにする
また、図表のタイトルも重要です。タイトルを見るだけで全体のメッセージの概要をつかむことができるようにするのが望ましいです。
4.図注
図の説明文 (figure legends) は、本文とは別のページに記載します。通常は参考文献リストの前後に入れることが多いです。
図の番号と一致するアラビア数字を用い、図中の記号、矢印、番号、文字等を説明します。
ここに長々と説明を書くのは避けた、図中に書き込める内容は図中に書き込むなどの工夫が必要です。これはレイアウトとの兼ね合いになりますが。
また、図中に書く内容は、Resultと同じ文章の繰り返しにならないように気をつけましょう。
まとめ
図表の書き方について説明しました。図表は本文にも劣らず非常に重要なパートですので、図、図注、表においても本文と同様の英文のクオリティを保つ必要があります。図表作りこんだあとには必ず英文校正でチェックしてもらうようにしてください。