「巨人の肩の上にのる矮人」(きょじんのかたのうえにのるわいじん、(nani gigantum umeris insidentes))という言葉にある通り、科学研究は先人たちが築き上げてきた成果の上に成り立っています。そしてあなたの研究テーマのどこまでがわかっていることでどこからがわかっていないことなのかを丁寧に紐解いていくことが科学研究の第一歩です。引用文献というのはまさに過去から現在に至る道しるべであり、どのような文献を引用するかによってあなたの研究の立ち位置を明確になります。今回は、文献を引用することの意義や具体的な方法についての具体的な作法について説明してみたいと思います。
1.引用文献とは?
引用文献とは、論文やレポートなどを作成する際、自説の論拠となった考え方や研究成果を記した文献のことです。
何故、引用文献あるいは参考文献が必要なのでしょうか。
冒頭でも説明したように、自身の研究成果は過去から連綿と続く成果の上になりたっており、先人への敬意を表すことになります。
引用文献・参考文献を明示することなく、自身の業績であるかのように書くのは、「剽窃」とみなされてしまうかもしれません。
また、論文やレポートを読んだ人が、そこに示された引用文献や参考文献を確認することができなければなりませんので、文献についての情報(書誌情報)を十分に記載する必要があります。
2.引用できる文献・引用文献にならない資料
引用できる文献は、書籍、学術雑誌、年報、各種ガイドライン、Webサイトなどは引用が可能です。
一方で、未発表の研究結果などは引用できません。他の雑誌などに掲載が決定しているような場合に限っては、article in pressなどといった表現で引用文献に加える場合があります。
また、講義資料なども引用文献としては不適切でしょう。正式な形で出版された資料のみが引用されることができるというのが原則です。
3.本文、図表での引用の仕方
論文中に他人の著作物から得た情報を記す場合は、該当する情報が引用・参照であることを本文中に示し、かつ論文の最後に参考文献としてリスト化する必要があります。
最もメジャーな方法が、「本文中への記載」です。
論文の本文中に、引用文献に対応する番号や括弧書きの文献情報を引用箇所の直後に記載する方法です。学会や学術ジャーナルによっては、参考文献の数字や著者名、出版年数などの書き方を示したガイドラインがありますので、必ず投稿規定を確認しましょう。そして参考文献のリストは、論文末尾に、数字順またはアルファベット順に掲載します。
また、図表の引用ですが、これは著作権が関わってきますので、図表のコピーは基本的にはできないと考えるべきです。許可をとって掲載するなどの方法がありますが、その場合には出版社や著者に対して著作権料を支払う必要がありますので、注意して進めてください。論文投稿の際にはこうしたことは必ず確認されますので、誠実に答えるようにしてください。もちろん必要な引用は妨げられるものではありませんので、手続き上のミスが生じないようにだけ気を付けましょう。
4.「引用文献」の示し方
本文中で、引用文献・参考文献を明示する際のスタイルは、大きく分けると2つあります。
1.ハーバード方式
著者の姓と発行年に基づいて記述し、文献リストを著書順に列挙する方式です。
本文側に著者名.論文名.雑誌名.年号;巻号:ページ数を記入します。
そして文末の参考文献の章では著者名、年、タイトル、号:ページ数といった形で掲載します。
2.バンクーバー方式
こちらのほうがメジャーかもしれませんが、引用文献順に番号を振って、文献リストを引用番号順に列挙する方法です。
文末の参考文献の章で著者リスト、雑誌名、年、号、ページ数を記載しますが、学術雑誌ごとにスタイルが指定されています。
文献管理ソフトによってはジャーナルごとの書式を再現してくれる場合もありますが、予告なくスタイルが変更になったりすることがありますので、最新版の投稿規定あるいはその雑誌の最新号のいくつかの論文を実際に見ていただくと確実です。
まとめ
文献の引用についてまとめました。研究論文の引用を行うことは先人たちへの敬意の表れであり、適切に引用を行うことで論文の質が向上します。
また、特にバンクーバー方式の場合には、引用した文献番号と内容の一致を確認したうえで英文校正に出すようにしましょう。