研究論文や症例報告などの学術論文とは別に、「レター」というカテゴリーをご存じでしょうか?雑誌に掲載された最新の論文に対する意見や、自らの症例を短くまとめたものを執筆するのにちょうどいい練習になります。
常に採択されるとは限りませんが、常に新しいエビデンスに対して建設的な批判を行うという意味では科学の進歩に貢献しているといえるでしょう。今回はそんな「レター」について説明してみたいと思います。
レターの役割
レターとは論文の内容に対する意見を述べた手紙です。Letter、Letter to the editor、Correspondenceなどとも言われます。
通常は論文が雑誌に掲載されてからごく短い期間受け付けられていますが、内容についての疑問、意見、自分の手元のデータとの対比などを使って論じられます。
読者からのレターでその論文が話題に上ったりするのでジャーナルはレターの投稿を推奨しています。
レターの種類としては、
- 論文に対してコメントや意見を述べるレター
- 自らの研究を短く述べるレター
- 論文に対し、自分の研究の記述をもって批判するレター
などがあります。
論文に対するレターについて
雑誌に掲載されたばかりの論文に対するレターは、レターを書く人のスタンスによって以下のようなタイプがあります。
- 新たなアイデアを提供する
- 反対意見を述べる
- 疑問を投げかける
- 間違いや著者のバイアスを指摘する
その分野のエキスパートとして知られているような著名な研究者であれば執筆された論文をほめる内容を出すこともできますが、若手や無名の研究者が書いても相手にされませんので避けたほうが良いでしょう。
論文の著者にレターを書く際は、ジャーナルの規定に従い、論文が発表されてからの時間制限(~週間以内など)を守り、ジャーナルが指定する書式に則って字数制限などの制約を守って投稿します。
論点1つに絞り、文字数を節約するために簡潔な書き方を心がけます。このときに英文校正を活用することをすすめます。
また、レターとして投稿する場合でも、ヘルシンキ宣言の遵守や利益相反の表明など、論文投稿同様の規定に従って書く必要があります。
批判レターに対する返答レターについて
論文に対する批判的内容を含むレターを書くと、著者から返答レターが返ってくる場合があります。これは返答レターとして次の雑誌に出版されます。
著者はすべての批判レターに返答をする必要はなく、無視することもできますが、的外れな批判などに際してはやはり反論をしたくもなります。
そして建設的なやり取りの中に科学的に健全な議論が生まれます。臆することなくやり取りをするべきでしょうし、レターに対する返答が返ってくるとやはりうれしいものです。
ミニマム研究、症例報告としてのレターについて
原著論文や症例報告として投稿した論文が、レターに格下げされて雑誌に掲載することを提案されることがあります。
査読者がリジェクトと判断しても、編集長がリジェクトするには内容的に面白い、というような場合にあり得ます。
通常の論文と異なり、詳細に記載した方法や結果などの詳細についての大部分が除かれてしまいますが、十分な検討ができないけれど重大な知見である場合に最初に報告することに大きな意義があります。
雑誌によっては「Research letter」という項目を設定し、語数の少ない研究を長文の研究論文同様に査読者がピアレビューし、掲載可否を決めています。
症例報告の場合はどうでしょうか?
症例報告は雑誌のインパクトファクターをあげるのにはあまり貢献しません。そこで多くのジャーナルでは症例報告を掲載する紙面や機会を大きく減らしています。しかし症例報告であっても重大な知見を提供しうるため、レター形式で症例報告を受け付けることがあります。
150-300ワード程度に制限されてしまいますが、レター形式で症例報告を投稿することは取り組みやすいかもしれません。
まとめ
今回はレターの作成に関して説明しました。すでに掲載された論文に対する批判的は吟味を通じた科学への貢献という側面と、full-lengthの論文の代わりに短くまとめた「ミニマム研究」として扱われる側面があります。字数制限と時間制限がある中で完成させるため、英文校正を利用して洗練された文章を作成するように心がけましょう。