今回は、総説論文、つまりreview articleについて解説します。レビューと言えばオンラインショッピングや旅行サイトでの評価のことを想像しますが、論文におけるレビューとは趣が異なります。一体どんな論文なのか、そしてそれは誰でも書けるのか?そういったことを中心に解説したいと思います。
1.総説とは何か?
総説とは、ある特定の分野に関して、先行する研究を徹底的に調査し、結果を比較検討したものを述べる研究論文の一種です。過去の研究に基づくこと、新たな研究データは含まないこと、そして未発表の文献を対象としないことが特徴です。総説論文はそれ単独で著作物となります。
総説には大きく分けて2種類があります。ナラティブレビュー(記述的レビュー)とシステマティックレビュー(系統的レビュー)です。
ナラティブレビューとは、特定のテーマに関して、先行する文献をもとに論考するもので、単なる要約ではなく、リサーチクエスチョンに基づいた批判的論考が主体となります。
これに対し、システマティックレビューは、方法セクションを詳細に記述・比較します。選択基準・除外基準、研究デザインやバイアスへの対処などについて詳細な記載が必要です。そして複数の研究における結果が一致するかどうかを客観的な指標を用いて比較検討します。
2.総説の目的について
原著論文の目的は、研究を詳細に報告して特定の研究課題に対する独自の結果や考察を示すことにありますが、総説論文は特定のテーマに関する先行論文を徹底的に分析することを目的としています。
特定の課題を分析することに加えて、既存の研究ではまだわかっていないことを指摘することもその目的です。
忙しい研究者、新規に参入した研究者にとってはレビュー論文を読むことで、あるテーマに関する現状を大づかみすることができ、短時間でオーバービューするには非常に有用な文献となります。
3.総説の構成を知ろう
総説であっても通常の原著論文と同じように構成があります。
- 序論(Introduction): 特定のテーマを含む研究分野全体に関する情報や、選んだテーマの研究分野における位置づけ、レビューを行うことの意義について述べます。他の形式の論文と同様、ここでは問題提起を適切に行うことが重要です。
- 方法(Methods):文献を選んだ基準や、情報の提示の仕方について述べます。系統的に文献を検索した場合には特にこのセクションが重要であり、詳細に記載することが求められます。
- 本論 (Body):本論の段落構成は、文献レビューの書き方によって決まります。時系列に沿って書くなら、期間ごとに段落を改めますし、テーマ別に書くなら、テーマごとにサブセクションを設ける形式になります。
- 考察と結論(Discussion and conclusion): 本論で述べた結果の意義や解釈を行い、序論で問題提起した、テーマや分野に関する解決されるべき疑問点について考察します。また、総説によって明らかになった研究のフロンティアを明確にし、将来の研究に託します。
- 引用文献リスト(Reference list): 総説はすべて一次資料に基づいているので、引用文献リストは重要です。
このように定められた構成に従って論文を記載しましょう。
4.総説は投稿できるのか?
総説論文は、ナラティブレビューとして投稿した場合、その分野のエキスパートとしての確固たる地位を築いた研究者でない限り受け付けてくれるジャーナルは限られるでしょう。
一方で、システマティックレビューでは、定められた方法を用いてunbiasに文献を検索し、その結果を統合することになりますので、若手研究者にとってはチャンスがあります。
通常の原著論文を作成するプロセスにおいてもシステマティックレビューで培う検索能力は役立ちますので、経験としても取り組む価値があるという研究者もいます。
5.まとめ
このように総説論文も原著論文同様、特定のテーマにおいて、適切な問題提起のもとに論文を作成することがポイントとなります。
さらに、他の論文を引用するにあたり剽窃や盗用とならないよう文章構成には十分な配慮が必要となります。総説論文の性格上、先行文献を徹底的に調べることとなるので、原文を多く引用することになります。しかし、「引用」することは剽窃や盗用と異なります。
そして英語論文の場合には最終的に英文校正に依頼して全体が自然に流れているかどうかをしっかり確認するようにしましょう。