前編において、英文で西洋の科学・医療雑誌に論文を投稿する場合は、西洋科学的発想を持たなければならないと伝えました。データを集めて、その結果から導き出せる法則を見つけていくのが日本式科学研究の仕方です。そしてその研究方法は仮説を立てずに行われています。すなわち、仮説を基に研究を行う西洋では、科学的ではない、つまり非科学的研究とみなされてしまうのです。結果を基にしてプロセスを改善していく日本式科学は西洋では受け入れられる可能性は低く、実際に近年西洋雑誌に掲載される日本の論文の数は減少の一途をたどっています。西洋の科学雑誌への掲載を目的とする場合は、仮説を立てそれを検証する西洋科学的発想を持ち、論文校正をします。また、意味のある臨床研修を行う際に抑えておきたいポイントも2つ前編で紹介しました。一つ目のポイントは、「意味のある研究」のためのテーマを見つけ出すということで、疑問を持つ大切さを伝えました。素朴な疑問でも素晴らしい、意味のある臨床研修になることができます。疑問をきっかけにテーマを見つけ、検証を行い、どんな結果が導き出されるのかがとても重要です。一方、原理が無い研究はいい研究とは認められないので、テーマと検証内容は慎重に決定しなければいけません。それでは、「意味のある研究」を行うための二つ目のポイントを見ていきましょう。
2. 研究テーマが解決されていないことを確かめる。
「意味のある研究」を行うために大切な二つ目のポイントは、選んだ研究のテーマが解決されていないことを確かめるということです。その理由は、すでに研究がされており、その研究結果に疑問を持つ余地がまったくなければ、同じ研究を新たにする意味はないからです。すでに結果が出ている研究を新たに行うことは価値がなく、医療雑誌に掲載されることもありません。意味のある研究とは、誰もそのテーマについてまだ研究していないか、それとも、以前に誰かが同テーマについて研究していたとしても、その結果に疑問がある場合や、複数の研究間の結論が相反している場合に新たに行う研究を指します。新しい研究結果や新たな結論を見出すことには大きな意義があります。
医療は日進月歩で発展しているため、進んだ医療と遅れた医療が混在する場合があります。しかしながら、その状況は医療界の質を損ねるだけでなく、医療業界全体の信用を損ねる可能性もあります。医療従事者として、常に新しい研修内容を公表し情報をアップデートしていくことは、様々な治療の可能性を世界に共有することにも繋がります。未だ誰も行っていない研究、遅れた研究、研究間での結果が異なる研究内容を追及し、新たな結論や治療の可能性を見つけ出すことが未来の医療業界にとって大きな貢献になります。
英文で論文校正をする場合、「意味のある研究」になりえるいい研究テーマを見つけたら、西洋科学の方法に従って仮説を立て、検証していく必要性があります。それでは次に、西洋式の研究方法の組み立て方を見ていきましょう。
西洋式研究法の組み立て
西洋式研究法の組み立てにはいくつかの手順と抑えるべきポイントがあります。第一に重要なことは科学的によい研究のテーマを見つけ出すことです。前編にも上記にも詳しく記述したとおり、誰も研究していない、もしくは、研究間によって結果が異なるテーマは意味のある研究になります。そして科学的に根拠のある、すなわち、原理のある研究内容かどうか見極めます。テーマを決めた後は、研究目的の決定です。何故その研究をする必要性があるのか、そのことについて論文で言及しないと、結局その臨床研修が何に貢献するのか明確になりません。医療の発展と臨床の向上に貢献する内容であるとともに、適格で詳細な研究目的を決定することが、意味のある研究に繋がります。研究目的を明瞭にすることは、仮説の設定にも大きく関わってきます。
次に、仮説の設定です。明確な仮説を立てることが大切なポイントです。繰りかえすようですが、西洋科学は仮説の科学です。つまり、仮説を立てそれを立証する方法が西洋式です。西洋式の研究は仮説検定法を用いるため、それに基づけば、まず仮説を設定し、その仮説を検証できる研究法を構築しなければいけません。目的に合った研究法を構築するために評価項目を設定します。評価項目とはその名が示す通り、臨床試験で評価したい項目のことです。主要評価項目と副次評価項目のふたつにわけることができ、主要評価項目はその臨床試験においてもっとも明らかにしたい重要な項目のことで、一つの試験に一個だけ設定されます。副次評価項目はその試験で明らかにしたいもの、されど主要ほど重要でない項目であり、複数盛り込むことができます。研究目的にあった評価項目かどうか、論文校正において注意深く確認しなければいけません。
統計法は、実際に立てた仮説を検証するために使われ、仮説検定法と呼ばれます。主要評価項目に関する統計結果を基に、仮説が立証されるか否かを導きます。臨床研修においては、適切な統計法が選択されているかどうかが重要になってきており、統計法の選択が適切でないと判断された場合、論文が受け付けてもらえない傾向があります。現在、従来からの統計法と、新しく開発された統計法とがあり、その数が少なくありません。統計ソフトも開発されているため、複雑な統計法も増えていますが、実際、従来の単純な統計法で間に合うケースがほとんどです。
データ収集と解析も、慎重にならなければいけないポイントです。データには数多くの種類が存在し、種類によって適用できる統計法が異なるからです。データは、数値データと分類データのふたつにわけることができ、主要評価項目のデータの種類がどちらなのか判定し、その情報によって統計法を選択しましょう。データの種類と対象者の数の設定を基に解析を進めていきます。
最後に、データの種類と対象者を定め、統計法を決定したら、仮説が成立するか否かを判定します。主要評価項目についての統計結果を重点的に示さなければいけません。そして副次評価項目の統計結果は参考扱いとし、主要評価項目より重点的に指摘することは避けます。そして最後に、仮説の成立の可否を含め結論を書きます。結論は、明確に著者の考えを誤解なく読み手に伝えなければいけません。科学論文は文字によって情報を正確に伝えなければいけません。研究の集大成を、簡潔、明確、かつ詳細に記述することを意識しましょう。
以上が成功する研究の仕方についての説明でした。日本式と西洋式科学の違いを理解し、英文で論文を書く際は西洋の研究科学に則って研究を進めましょう。西洋では仮説が何よりも重要で、仮説なしに科学的論文はありえません。原理に基づく研究テーマを掲げ、西洋式研究を構築しましょう。