研究テーマ決定後、実際に研究に移る前に先行文献を読む作業が必要となります。前回の記事で、研究テーマの決定とともに、西洋式科学における「仮説の設定の大切さ」を述べました。常に疑問を投げかけることで深く掘り下げた研究テーマを見つけることができ、また仮説の設定も容易になります。その「疑問を投げかける」作業にあたっては、先行文献をチェックすることで、新たな疑問を見つけることもできますし、また解決済みの問題であるかどうかも確認できます。つまり、論文の質を確保し研究する意味を見出すためにも、研究に関連した文献を読む作業は重要です。今回の記事では、研究前の論文を読むことに焦点をあてて詳細を見ていきましょう。
研究前に論文をチェック
冒頭でも述べたとおり、研究前に論文をチェックすることは、重複した研究を避けるためにも、また研究テーマへの理解を深めるためにも欠かせない作業であります。また参考文献を元に自分の主張を記述することも論文執筆には必要で、研究に使用した先行文献の記載も義務付けられています。つまり学術的な根拠が論文を書く際には必要となります。文献探しには多くの本や資料に目を通さなければいけませんが、時間が有限の中、莫大な量の資料を全て読むのは不可能に近いため、効率的に自分の主張を裏付ける学術的論証を見つけるスキルが必要になります。 書籍化された論文ではIndexのページを利用しましょう。Indexにはキーワードとそれに該当するページが記載されています。例えば研究テーマが「eating disorder among teenagers」なら、「eating disorder, anorexia, bulimia, teenager」などのワードを探すと、該当ページだけ読むことができます。一方、インターネット上で学術雑誌などを読む場合は、「Ctrl + F」で検索モードを出し、キーワードを書き込むと該当箇所を提示してくれます。
読むべき論文の見つけ出し方
先行文献を見つけ出すためには、図書館などで文献検索する方法があります。所属している図書館のデータベースに必要なキーワードや、執筆者の名前などを入れ検索すると、図書館に該当する文献があるかどうかを知らせてくれます。また図書館によっては他の機関や大学からの取り寄せを行っているところもあるので、積極的に利用するようにしましょう。 また、近年ではオンラインの学術雑誌が増加しているため、オンライン検索も利用できます。紙媒体で出版された論文は購入するとお金もかかりますが、インターネットが普及した今、無料で莫大な文献を見つけることができるポータブルサイトが増えています。収録数も何百万件と豊富で、PDFとしてダウンロードできるなど機能も十二分に備わっています。代表的なオンライン検索のウェブサイトはPubMed、 医中誌、グーグル・スカラーなどです。それぞれの特徴につきましては、【医学論文の無料閲覧方法】https://genius.jp.net/proofreading_20)を参考にしてください。
論文の引用
論文の英文校正で注意したいのが、引用の仕方や参考文献の記載の方法、つまりReferenceのスタイルです。英文での論文におけるReferenceスタイルは種類が多く、APA、MLA、Chicago/Turabianなどが主に使われており、医学、生物学の論文においてはAMAスタイルもよく見られます。インターネットで各Referenceスタイルについて詳しく書かれているウェブサイトを見つけることができます。Referenceのスタイルを決めたら必ずルールをきちんと読み、論文全体を通してReferenceスタイルを一貫させなければいけません。 また、論文の引用以外に論文を読む過程においてもポイントがあります。それは、論文を読む際には常に「書く」ということを意識して読まなければいけないということです。文献にどうような情報が誰によって記載されていたかを意識し、メモをしながら先行文献に目を通しましょう。研究論文の執筆において参考文献欄を論文の最後に設けなければならず、筆者、出版年、本のタイトルなどの情報を正確に記載しなければ剽窃とされてしまいます。書き始める前であっても、書くことを意識しながら文献を読まないと、後々収集した情報も労力も水の泡となってしまいます。
孫引きとは
文献を引用する際には、その引用内容がどこから出たものなのかを明示する必要があり、それは著作権法で定められています。論文の本文で引用する際と、論文最後の参考文献一覧作成では必ず出どころを明示し、英文校正では剽窃行為にあたらないかを確認しましょう。また引用スタイルに合わせてもう一点気をつけてもらいたいのが、「孫引き」です。「孫引き」とは、ある論文にオリジナルの論文から引用された内容を、オリジナルにさかのぼって調べることなくそのまま使用する行為です。つまり、仮に田中(1993)が山本(1967)の文献から引用したとします。その引用された内容を、山本(1967)の原典に戻って調べる作業をせず、田中(1993)から引用する行為を孫引きと呼びます。学術論文では一次文献の使用が原則なので、オリジナルの文献が入手できないなどの困難な理由がない限り、「孫引き」行為は禁じられているので注意しましょう。文献の中で引用文を見つけ、それを使用したいと思ったら、必ずオリジナルの文献を探すことが重要です。
今回は研究前の論文の読み方と注意点について詳述しました。研究テーマの理解を深めるためにも先行文献探しから研究論文の執筆の作業は始まっています。オンラインの検索ツールなどを駆使し、効率的に先行文献収集をしましょう。また、引用の際は、Referenceスタイルおよび「孫引き」に注意し、英文校正では幾度となく間違いがないかを確認することが大切です。