苦労して書き上げた論文を投稿したあと、最初に待ち受けるのは「即リジェクト」です。
雑誌の編集部が掲載可否の判断のためのPeer reviewの過程に回す必要すら無いと判断された、門前払いをくらった、ということで悲観的になってしまうものです。
しかし、大前提として、その論文が投稿するための条件を満たしていたでしょうか?今回は、どのような論文が掲載不可と即断されるのかについて書かせていただきます。
査読に回らずに掲載不可となる主な理由
論文が門前払いを食らってしまう理由はいくつかあります。
- 必要書類が提出されていない
- 雑誌の掲載分野外である
- 研究の「事前登録」の記載がない
以上の3つを順に解説していきます。
必要書類が提出されていない
以前にも別の記事でご紹介しましたが、論文提出時にジャーナル側に提出すべき書類がいくつかあります。
- 論文原稿(Manuscript)
- 図表(特に画素数の大きな画像については論文本文とは別に投稿することが求められる)
- カバーレター
- 利益相反申告
- 著者の掲載許可(直筆サインや印鑑が求められることが多い)
- 著作権譲渡(受理後に記入することも多い)
これらの書類が揃っていなければ当然即リジェクトを受けても文句は言えません。必要な手続きがいい加減なままであれば、論文の中身までいい加減だ、と判断されかねないのです。そしてこれは簡単に予防可能です。
雑誌の掲載分野外である
雑誌のタイトルからだけでは掲載分野が正しく理解できないことがあります。
学術雑誌の場合はそういうことが生じないように、投稿規定などにその雑誌のスコープを掲載いている場合がありますので、必ず確認しておきましょう。また、投稿を考えている雑誌のアーカイブを参照してタイトルだけでも確認しておくとよいでしょう。
あるいは、大手の出版会社では、タイトルやアブストラクトの情報を入れるだけで機械的な判定で投稿に適したジャーナルを提案してくれるようなシステムを整えているところもあります。
それでも既存のスコープに当てはまらない、全く新規性のある研究であると、適切なジャーナルを選択するのが困難な場合があります。そうした場合にはまず投稿してみること、そしてカバーレターにしっかりとそのジャーナルへの投稿した理由を記載しておくとよいでしょう。
研究の「事前登録」の記載がない
特に臨床研究で実際の患者さんを対象とするような研究を計画する場合、倫理審査などを通じて研究実施を承認してもらう必要があります。また、前向きに診療情報を収集するようなケースにおいては、前もってClinical trial registryに登録することが求められますので、研究を実施する際、あるいは計画段階でそうしたレジストリへの登録するかどうかについても研究グループ内でコンセンサスを得ておく必要があります。
我が国には、日本の大学病院と医学生物学研究者向けの情報ネットワークである、大学病院医療情報ネットワーク(だいがくびょういんいりょうネットワーク、University hospital Medical Information Network (UMIN))や財団法人日本医薬情報センターが運営するウェブサイト「臨床試験情報データベース(JapicCTI)」がありますし、アメリカでしたら米国国立医学図書館が管理するウェブサイト“ClinicalTrials.gov”、欧州では欧州医薬品庁が管理するウェブサイト“EU Clinical Trials Register”がそれぞれ利用可能です。
こうした条件が投稿規定の中に明記されていることが多く、また、電子投稿の段階で前向きデータの利用を選択した段階でレジストリへの登録状況を自動的に問うてくる場合も多いため、投稿すらできない、ということもあります。
まとめ
今回はどのような論文が掲載不可となるかについてまとめました。
これらのことは研究の計画段階で留意すべきことも含みますので、研究グループ内でしっかりと合意を形成しておくことが望まれます。
言うまでもないことかもしれませんが、投稿に際して必要な書類を整えない、投稿規定を守らない、という行為は研究自体の信頼性も失墜させかねませんので、用意周到で投稿作業を行うことを心がけましょう。
また、上記には含めませんでしたが、英文の質にも気を配るべきです。これらはよほど目立った文法、コロケーション、語彙のミスがなければよいと思われがちですが(あれば即リジェクトにもなりかねません)、細かなミスの積み重ねで査読者の心象を悪くする可能性がありますので、英文校正を行っておくことをお勧めします。