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2020 5月 20

論文を書く際のご法度

ご法度表現

学術論文を書く際に、「やってはいけないこと」がいくつかあります。これらは明らかに処罰の対象となるものから処罰の対象ではないが査読の際に致命傷となるものまで様々なレベルで存在しています。今回は、いかにして「やってはいけない」を回避するかついて書かせていただきます。

4つの「ご法度」

特に正式な指針としてまとまっている訳ではありませんが、時々出くわす致命的な過ちをご紹介します。

  1. 剽窃・盗用 → 絶対禁忌!
  2. 不適切な表現方法
  3. 不確かな根拠に基づく主張
  4. 一貫性のない論旨

以上の4つを順に解説していきます。

 

剽窃・盗用

剽窃・盗用とは、他の論文などを許可なく使用し、自分のものとして発表することをいいます。意図的であるかは関係なく、自分自身の過去の論文等の利用でさえ含まれます。学術的かつ倫理的に重大なルール違反であり、発覚した際に論文の撤回や執筆者の信用失墜を招きかねません。

意図せぬ剽窃として起こるのは、英語論文を書く際に適切な参照をしているにもかかわらず、文章を書き起こす際にほとんどコピー&ペーストしてしまう、などの行為に起因するものです。

まずは意図しない剽窃・盗用を予防することが大事です。そのため、引用した文献と同じ文章になっていないかを確認しましょう。また、今は剽窃チェックツールを論文作成後に投稿するときに同時に提出を求める場合もあります。

 

不適切な表現

表現の適切さは、①科学的な妥当性とともに、②弱者やマイノリティに対する倫理的な配慮の観点から決まります。

科学的な妥当性は、研究者が意図した通りに読者に理解してもらうために重要です。つまり、きちんとした定義に基づいた用語を用いることが大事です。多義的な言葉の使い方はご法度です。

文学作品などにおいては繰り返しの同一表現を避ける傾向にありますが、そのようなことは学術論文で行うことは適切ではありません。読み手に正しく理解してもらうこと、それが最も重要なのです。

次に、倫理的な配慮ですが、ポイントを一言で言えば差別的な表現は避けるです。学会などでも避けるべき表現などとして情報を公開している場合もあるため、自身の研究分野における用語の使い方については確認しておくとよいでしょう。

例えば日本語では自然に使用されることが多いと思われる、「X病患者」という表現ですが、英語では「X病を持った患者/人々」ということで、“Patients with X disease”などと表現することが推奨されています。

例:

  • Diabetic patients -> Patients with diabetes mellitus
  • Dialysis patients -> Patients on dialysis

などです。

 

不確かな根拠に基づく主張

論文のDiscussionの部分では結果に基づく解釈を元に、主張することが求められます。ところが、そこまでの論拠はないにもかかわらず堂々と主張する研究者がいますが、これはご法度です。

あるいは、事実に基づかない、不確かな情報源から得た情報を元に論を展開するのもご法度です。必ず論文を書く際には自身の研究結果または確かな情報源に基づいた既存の事実をベースに主張をしているかについて、しっかりと見直すことが大事です。

 

一貫性のない論旨

「論文の論旨が書いている途中で徐々に変わっていってしまう」

そんな経験はないでしょうか?夢中で書いていると頭の中で思考がある程度まとまってくるのですが、最初に考えていたことから徐々にずれてしまうことがあります。常に論文全体の流れを意識することが重要です。

Introductionの最終部分に研究の目的を記載しますが、これは伏線であり、結論部分ではその伏線を回収する、という意識です。

そのためには、IntroductionとDiscussionは常にセットという意識を持つとよいでしょう。つまり、論文を書く際にもこれらのセクションはセットで執筆をする、ということです。

 

まとめ

今回は論文作成におけるご法度について述べてきました。剽窃・盗用、差別的表現は時に研究者のキャリアそのものを脅かすことになりかねないため、十分に注意をすべきです。そして当たり前のこととして、論文は妥当な研究結果、既存の事実に基づいた、首尾一貫した論旨を保って記載するように心がけるようにしましょう。

特に英語表現として、不適切な表現になるのかどうかについては英文校正を活用するのがよいでしょう。文法やコロケーション以外にも、用語の使い方などについても確認してもらういい機会となるはずです。

あなたの研究を適切に世界に向けて発信するために、上記の点に十分注意しながら執筆を継続していきましょう。

どのような論文が雑誌掲載不可となるのか?

掲載拒否

苦労して書き上げた論文を投稿したあと、最初に待ち受けるのは「即リジェクト」です。
雑誌の編集部が掲載可否の判断のためのPeer reviewの過程に回す必要すら無いと判断された、門前払いをくらった、ということで悲観的になってしまうものです。
しかし、大前提として、その論文が投稿するための条件を満たしていたでしょうか?今回は、どのような論文が掲載不可と即断されるのかについて書かせていただきます。

査読に回らずに掲載不可となる主な理由

論文が門前払いを食らってしまう理由はいくつかあります。

  • 必要書類が提出されていない
  • 雑誌の掲載分野外である
  • 研究の「事前登録」の記載がない

以上の3つを順に解説していきます。

 

必要書類が提出されていない

以前にも別の記事でご紹介しましたが、論文提出時にジャーナル側に提出すべき書類がいくつかあります。

  1. 論文原稿(Manuscript)
  2. 図表(特に画素数の大きな画像については論文本文とは別に投稿することが求められる)
  3. カバーレター
  4. 利益相反申告
  5. 著者の掲載許可(直筆サインや印鑑が求められることが多い)
  6. 著作権譲渡(受理後に記入することも多い)

これらの書類が揃っていなければ当然即リジェクトを受けても文句は言えません。必要な手続きがいい加減なままであれば、論文の中身までいい加減だ、と判断されかねないのです。そしてこれは簡単に予防可能です。

 

雑誌の掲載分野外である

雑誌のタイトルからだけでは掲載分野が正しく理解できないことがあります。

学術雑誌の場合はそういうことが生じないように、投稿規定などにその雑誌のスコープを掲載いている場合がありますので、必ず確認しておきましょう。また、投稿を考えている雑誌のアーカイブを参照してタイトルだけでも確認しておくとよいでしょう。

あるいは、大手の出版会社では、タイトルやアブストラクトの情報を入れるだけで機械的な判定で投稿に適したジャーナルを提案してくれるようなシステムを整えているところもあります。

それでも既存のスコープに当てはまらない、全く新規性のある研究であると、適切なジャーナルを選択するのが困難な場合があります。そうした場合にはまず投稿してみること、そしてカバーレターにしっかりとそのジャーナルへの投稿した理由を記載しておくとよいでしょう。

 

研究の「事前登録」の記載がない

特に臨床研究で実際の患者さんを対象とするような研究を計画する場合、倫理審査などを通じて研究実施を承認してもらう必要があります。また、前向きに診療情報を収集するようなケースにおいては、前もってClinical trial registryに登録することが求められますので、研究を実施する際、あるいは計画段階でそうしたレジストリへの登録するかどうかについても研究グループ内でコンセンサスを得ておく必要があります。

我が国には、日本の大学病院と医学生物学研究者向けの情報ネットワークである、大学病院医療情報ネットワーク(だいがくびょういんいりょうネットワーク、University hospital Medical Information Network (UMIN))や財団法人日本医薬情報センターが運営するウェブサイト「臨床試験情報データベース(JapicCTI)」がありますし、アメリカでしたら米国国立医学図書館が管理するウェブサイト“ClinicalTrials.gov”、欧州では欧州医薬品庁が管理するウェブサイト“EU Clinical Trials Register”がそれぞれ利用可能です。

こうした条件が投稿規定の中に明記されていることが多く、また、電子投稿の段階で前向きデータの利用を選択した段階でレジストリへの登録状況を自動的に問うてくる場合も多いため、投稿すらできない、ということもあります。

 

まとめ

今回はどのような論文が掲載不可となるかについてまとめました。

これらのことは研究の計画段階で留意すべきことも含みますので、研究グループ内でしっかりと合意を形成しておくことが望まれます。

言うまでもないことかもしれませんが、投稿に際して必要な書類を整えない、投稿規定を守らない、という行為は研究自体の信頼性も失墜させかねませんので、用意周到で投稿作業を行うことを心がけましょう。

また、上記には含めませんでしたが、英文の質にも気を配るべきです。これらはよほど目立った文法、コロケーション、語彙のミスがなければよいと思われがちですが(あれば即リジェクトにもなりかねません)、細かなミスの積み重ねで査読者の心象を悪くする可能性がありますので、英文校正を行っておくことをお勧めします。