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2020 10月 20

過去の関連論文を読み終えている必要性について

2252872_s研究を行い、論文を執筆、投稿して出版という一連の流れの中で、一番初めに行うことである「研究課題の発案」に際して、過去の関連する論文をしっかりと読み込んでおくことは非常に重要です。今回は、研究実施前に論文を網羅的に調べて読むことについて説明したいと思います。

 

1.論文チェックは研究前にしよう

 研究の目的は、一言で言えば、フロンティアの開拓です。つまり、これまでにわかっていることとまだわかっていないことの境界線を少しずつ広げていく活動なのです。

この、「わかっていることとわかっていないことの境界線」を見定めるのに絶対的に必要な行為があります。

それは、文献の網羅的検索です。

このように文献検索は研究を開始する前に必ず実施することが肝心です。すでに別の研究者や研究グループが発見した事実をなぞるような研究をしてしまうと、せっかく苦労して行った研究結果のインパクトを毀損してしまいます。

二番煎じというのはいつの時代も、どんな領域でも、憂き目を見るものなのです。

ただし、これにも一つだけ例外があります。それは、過去の論文の方法が完全ではなく、よりよい方法で行うことができる、より大きな規模で行える、という見込みが立つときです。

こうした”付け入る隙”を見つけることも文献検索の大きな意義だったりします。

 

2.膨大な論文から何を選択するのか?

 さて、網羅的文献検索が必要であることは既に述べました。

言うのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいものです。文献の検索に当たっては、世界中の論文を検索するのにはPubmedを、日本語の文献を検索するのには医中誌などを活用することが多いと思います。

Pubmedでは、3000万以上の文献・書籍を検索できるため、何を選択するか、そしてどのように検索をするのか、ということが非常に重要な課題になります。

何を選択するか、という部分については前述のように、これから自分が実行しようとしている研究内容についてのフロンティアを知ることがまずは大事です。しかし、実際に研究を実施する上では、これまでにわかっていることの積み上げである、という意識を持つことが大事です。研究の構成要素を文献から引用するのです。

例えば、血圧と予後のことを研究しようとすると、血圧の測定方法、測定のタイミング、これまでによく使われている血圧の基準値、カテゴリー、そして予後であればどのような予後を定義するべきなのか、ということについて詳しく知る必要があります。「予後」と一言で言っても、それは「すべての原因による死亡」なのか、「心血管疾患の発症」なのか、「心血管疾患による死亡」なのか、そもそも「心血管疾患」とはどのように定義すべきなのか、などといったことを決める必要があります。

現実的なリソースからどんな情報を入手できるのか、ということも研究実施可能性(feasibility)を考える上で非常に重要ですので、現実的な研究計画立案段階において可能な曝露因子やアウトカムの定義をリストアップしておくこと、それの根拠となるような論文を調べておくこと、というのが重要です。

 

3.文献検索

 どのように文献を検索するかについてですが、上記のように調べる目的を明確化したら、それにまつわるキーワードを整理しましょう。このとき、①対象となる母集団、②曝露因子、③アウトカムをキーワードとして羅列していくようにしましょう。

血圧と予後をみる、といっても成人と小児なのか、妊産婦なのかで全く異なります。また、住民コホートなのか、疾患コホートなのかも異なる集団を見ることになります。

また、曝露因子も先ほどの例でいえば、収縮期血圧なのか拡張期血圧なのか、平均血圧なのか、脈圧なのか、24時間血圧の変動パターンをみるのかによって異なります。

そして、網羅的に検索するためにはPubmedの中ではMeSH term(注)のみでなく、できるだけ考えられる用語を羅列して入れると拾い上げられる可能性が高まります。(その分不要な論文も一緒に引っかかってきてしまうのでバランスを取るのが難しいのですが…)

注) MeSH(メッシュ)はMedical Subject Headingsの略で、アメリカの国立医学図書館が、索引誌(Index Medicus)の見出し語として60年前に作成し、その後MEDLINEデータベースのシソーラスとして利用されるようになったものです。毎年改訂されています。シソーラスとは、さまざまな医学用語をできるだけ統一して使えるようにまとめられた用語集のことを指します。

 

4.孫引き

 丁寧にPubmedだけを調べていくのを正攻法とするなら、少し裏技的な方法をご紹介します。

関連する重要な論文をじっくり読んで、そこに引用されている文献を孫引きすることもよく行われる論文収集の方法です。

特に読むべきなのはその道の第一人者の書いた総説(review article)や、high impactなジャーナルに掲載された論文のイントロダクションに載っている論文です。

 

5.まとめの作成

 こうして集めた文献をテーマ毎に整理し、それをまとめておくとよいでしょう。このまとめは研究内容のプレゼンテーションややがて作成する論文のイントロダクションにも使うことができます。

また、現在の問題をしっかり把握し、研究のフロンティアを認識しやすくなります。

できればそのときに気になる英語表現を拾い集めてくることをオススメします。そのままコピーしてすべて使う訳にはいきませんが、自然な言い回しがどんなものなのかを学ぶことができますし、英文校正に回す際にも余分な労力をかける必要がなくなります。

現時点でのわかっていることとわかっていないことの境界線を認識し、あなた自身の素晴らしい研究成果につながるようにしていきましょう。

「よい科学」をしましょう

言うまでもないことですが、医学領域における科学的によい科学とは、2152436_s臨床的に意味のある研究のことです。

それは研究計画の立案をするところから始まりますが、多くの場合は臨床をやっていく中でふと頭の中に浮かんでくるような疑問を解消するようなテーマであったり、自身の経験から導かれたある種の法則のようなものを証明するためのテーマであったりします。

近年「ビッグデータ解析」がもてはやされていますが、これはデータ駆動型研究といい、主に特定の仮説を設定せずに、大量のデータをある一定の方向性で分析することによって新しい仮説のタネを見つけることが目的です。

これに対して仮説駆動型研究というのは、仮説を検証することが目的です。一定の真理にたどり着くための道筋が異なるだけで、単純に善し悪しを比較することはできません。むしろこの仮説駆動型研究のほうが多くの臨床家にとっては興味深く、共感しやすく、そしてわかりやすい研究であったりします。

そこで、今回はこの仮説駆動型研究を中心に、どのように研究テーマを決めていくかを説明してみましょう。

 

第一段階:臨床的に意味のある研究を見つけ出す

1)研究のタネの見つけ方は、経験にあり

臨床を実際にやっている方であれば、自身の経験を元に探し出すのが最も近道であると言えます。

「この病気の患者さんたちって、いつもこうだよね」

という発見が研究につながるかもしれない、ということです。

経験から導かれた仮説というのは単なる思い込みということも多々あります。しかし、それを自分の経験だけにとどめてしまっては本当に正しいかどうかを知ることができません。そういった観点からも研究につなげることは意味があるのです。

また、仮説がはっきりしていないこともあります。特定の疾患の患者さんを集めてくると共通点がありそうだけど、それが何なのか言葉にできないような状況です。このような状況においても様々な情報を集めてくると共通点が見つかる可能性があります。こういったアプローチの仕方であっても立派な研究の動機となり得ます。

 

2)臨床上の必要度の高い、切迫した疑問

あなたが切実に疑問に思うことは、きっと世界中の他の誰かも同じように疑問に感じている可能性が高いでしょう。そしてそういった疑問は広く現場に還元される可能性が高いと思われます。

わかっていないなら自分で調べればいい!のです。

 

第二段階:研究テーマが解決されていないことを確かめる

折角思いついた仮説ですが、すでに誰かの手によって解決済みであることがあります。それならその解決した人の研究成果を参考にすればよいでしょう。しかし、果たしてその研究が完璧にその疑問の解決や仮設の検証に正しく結論を導けているのか、ということはしっかりと確認する必要があります。

1)文献検索は網羅的に

タイトルや結果の一部だけを見ただけではわからないかもしれません。また、その研究よりももっと素晴らしい研究デザインや解析手法を思いつくかもしれません。そこで、関連する文献集めをします。

一つの論文を書き上げて、参考文献リストを作ると、少なくとも20編、多ければ50編近くの論文を引用していると思います。しかしその文献リストに載らなかったその他の研究もまた、あなたの研究テーマを確認するために読んでおく必要のあったものが含まれていると思われます。

かなり大量の文献を読み込まねば研究を実施することはおぼつきませんので、研究をしようと思い立ったその日から文献集めを始めるとよいでしょう。もっと言えばその疑問を解消しようと思ったところから文献集めは始まっているのかもしれませんね。

文献検索はPubmedを用いることが多いと思われますが、できるだけ広めに用語(MeSH term以外も含めて)を検索することがよいですが、適切に絞り込みができていればそれほど労力をかけずに文献検索を実施できるようになります。

 

2)集めた文献は文献管理ソフトへ

今は文献管理ソフトがかなり充実しており、MendeleyやEndnoteなどが有名ですが、そういったツールを使って文献管理をするとそのまま論文に載せるための参考文献リストを自動的に生成してくれます。

また、ジャーナルのスタイルを選ぶこともできるため、投稿するための労力を最小限に抑えることができます。

 

第三段階:正しく美しい結果を示す

研究成果はテーマでほとんど決まるとはいえ、それを読者にとってわかりやすくまとめるということ、そして読者を不快にさせるようなケアレスミスを根絶することも「よい研究」を形作る重要なパートです。

適切な図表と正しい研究結果をまとめることは言うまでもなく重要です。

しかし、最終的にはいかに細部までこだわりをもって仕上げることができるかにかかっています。

 

「神は細部に宿る」

 

というフレーズはスティーブジョブズが使ったことで有名ですが、まさに最後は細部に神経を行き渡らせることが重要と考えます。

英語論文であればネイティブチェック、英文校正は最低限行う必要があります。

 

まとめ

さて、今回は「よい研究」をするための一つの方向性として、臨床現場からの仮説を元に研究テーマを考る、仮説駆動型研究ついて説明しました。

人によって「よい研究」の定義は異なるでしょうが、より多くの読者の注意を惹きつけ、多くの現場に役立つようなエビデンスを提供できる研究をする、という観点からの話でした。

そして折角よいテーマをみつけたなら論文を投稿する際に細部まで気を配りましょう。